国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、バーレーンにおける羊肉の生産量は、1961年の72トンから2023年の26,455トンまで、長期的に大幅な増加を経験しました。ただし、2020年以降は一時的な減少傾向が確認され、近年では伸びが鈍化していることがわかります。このデータはバーレーンの農業政策や地政学的背景、更には気候変動や経済状況が羊肉生産に与える影響を反映しています。
バーレーンの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 26,455 |
-1.53% ↓
|
2022年 | 26,866 |
3.83% ↑
|
2021年 | 25,874 | - |
2020年 | 25,874 |
-4.24% ↓
|
2019年 | 27,019 |
-1.58% ↓
|
2018年 | 27,452 |
-6.26% ↓
|
2017年 | 29,284 |
26.33% ↑
|
2016年 | 23,180 |
16.23% ↑
|
2015年 | 19,942 |
21.65% ↑
|
2014年 | 16,393 |
-2.91% ↓
|
2013年 | 16,884 |
-0.21% ↓
|
2012年 | 16,920 |
0.53% ↑
|
2011年 | 16,830 |
1.63% ↑
|
2010年 | 16,560 |
15% ↑
|
2009年 | 14,400 |
9.59% ↑
|
2008年 | 13,140 |
25.86% ↑
|
2007年 | 10,440 |
75.76% ↑
|
2006年 | 5,940 |
-44.07% ↓
|
2005年 | 10,620 |
68.57% ↑
|
2004年 | 6,300 |
-10.26% ↓
|
2003年 | 7,020 |
-13.33% ↓
|
2002年 | 8,100 |
4.65% ↑
|
2001年 | 7,740 |
17.67% ↑
|
2000年 | 6,578 |
-22.25% ↓
|
1999年 | 8,460 |
46.88% ↑
|
1998年 | 5,760 |
-1.54% ↓
|
1997年 | 5,850 |
9.43% ↑
|
1996年 | 5,346 |
-34% ↓
|
1995年 | 8,100 |
11.11% ↑
|
1994年 | 7,290 |
26.56% ↑
|
1993年 | 5,760 |
-5.88% ↓
|
1992年 | 6,120 |
25.93% ↑
|
1991年 | 4,860 |
-25% ↓
|
1990年 | 6,480 |
13.1% ↑
|
1989年 | 5,730 |
-0.53% ↓
|
1988年 | 5,760 |
28.51% ↑
|
1987年 | 4,482 |
-4.23% ↓
|
1986年 | 4,680 |
-13.33% ↓
|
1985年 | 5,400 | - |
1984年 | 5,400 |
3.45% ↑
|
1983年 | 5,220 |
43.56% ↑
|
1982年 | 3,636 |
51.88% ↑
|
1981年 | 2,394 |
13.68% ↑
|
1980年 | 2,106 |
40.12% ↑
|
1979年 | 1,503 |
3.09% ↑
|
1978年 | 1,458 |
12.5% ↑
|
1977年 | 1,296 |
80% ↑
|
1976年 | 720 |
73.91% ↑
|
1975年 | 414 |
-25.81% ↓
|
1974年 | 558 |
10.71% ↑
|
1973年 | 504 |
-15.15% ↓
|
1972年 | 594 |
-19.51% ↓
|
1971年 | 738 |
1071.43% ↑
|
1970年 | 63 |
-22.22% ↓
|
1969年 | 81 |
12.5% ↑
|
1968年 | 72 |
14.29% ↑
|
1967年 | 63 |
40% ↑
|
1966年 | 45 |
-44.44% ↓
|
1965年 | 81 |
-35.71% ↓
|
1964年 | 126 |
16.67% ↑
|
1963年 | 108 |
20% ↑
|
1962年 | 90 |
25% ↑
|
1961年 | 72 | - |
バーレーンの羊肉生産量の推移データは、半世紀以上にわたるこの国の農業活動の変化を示しています。1961年はわずか72トンの生産量に過ぎなかったものの、1980年代に入ると急激に生産量が増加し始め、2023年には26,455トンと大幅な拡大を遂げました。この長期的な増加は、主に農業技術の進歩や家畜飼養の効率化、需要増加への対応がもたらした成果と考えられます。
特に1971年から1983年の間に生産量が急増しているのは、当時のバーレーン政府が掲げた農業強化政策や近代化の影響が強く表れていると考えられます。また、石油収入を活用してインフラの向上や家畜産業の育成を行い、羊肉の国内自給率を上げる取り組みが進められました。しかし、1986年以降は生産量がやや減少傾向を示し、その後も増減を繰り返しています。
2010年代後半においては再び生産量が大きく増加し、2017年には例年を大きく上回る29,284トンを記録しました。これは、おそらく域内外の需要増大や輸入依存を抑えるための持続可能性向上への意識が背景にあると推測されます。しかし2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響や物流の混乱が羊肉の生産・供給チェーンに悪影響を与えたため、再び生産量が下降し、2023年には26,455トンと、わずかな減少が見られます。
人口の増加や都市化が進む中でバーレーン国内の食肉需要は今後も高水準で推移すると予測されていますが、羊肉の国内生産にはいくつかの課題が存在します。一つ目は、限られた水資源と土地利用における競争です。バーレーンは乾燥した気候を持つ小国であり、農業に適した土地や淡水資源が制約要因となっています。これにより、放牧や飼料の確保が難しく、コスト増加や輸入依存につながる懸念があります。二つ目は、気候変動の影響です。高温や異常気象が畜産物の生産効率を低下させるリスクを高めています。
これらの課題を克服するためには、いくつかの具体的な対策が重要です。まず、効率的な水資源管理と利用技術の導入が求められます。例えば、持続可能な灌漑技術や水のリサイクルシステムを活用することで、家畜の飼育環境を改良できます。次に、政府や民間企業の協力を通じて、農業部門への投資を促進することが挙げられます。家畜の健康管理や遺伝改良技術を強化することで、持続可能な羊肉生産が可能になるでしょう。また、輸入と地元生産を組み合わせた柔軟な供給政策を構築し、需要変動や輸送リスクに対処することも欠かせません。
さらに、地域間協力も鍵となります。例えば、近隣湾岸諸国との農業に関する協力体制を強化し、共有の課題に対処することで、異常気象や地政学的リスクへの耐性を高めることができます。
総じて、バーレーンの羊肉生産はこれまでの成功と課題の両面を抱えています。今後も安定的な生産を維持するためには、持続可能な政策と技術投資、さらには国際協力が重要なテーマとなることでしょう。こうした取り組みは食品安全保障の改善にも寄与し、バーレーンだけでなく周辺地域の安定にも貢献すると期待されます。