国際連合食糧農業機関(FAO)の2024年最新データによると、バーレーンにおける羊の飼養数は、1961年から2022年にかけて大きな変動を見せています。1961年の3,000匹から徐々に増加し、1980年代以降急激な伸びを記録しました。その後、いくつかの減少傾向を経て、2017年に最大値の64,704匹を記録しましたが、近年では60,000匹前後で推移しています。過去数十年にわたるデータの変化には、バーレーンの地理的、経済的、社会的要因が深く関係していると考えられます。
バーレーンの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 62,300 |
2021年 | 60,000 |
2020年 | 60,000 |
2019年 | 62,657 |
2018年 | 63,660 |
2017年 | 64,704 |
2016年 | 54,893 |
2015年 | 47,615 |
2014年 | 40,000 |
2013年 | 40,000 |
2012年 | 41,000 |
2011年 | 40,000 |
2010年 | 40,000 |
2009年 | 41,000 |
2008年 | 40,000 |
2007年 | 41,000 |
2006年 | 42,000 |
2005年 | 40,000 |
2004年 | 39,170 |
2003年 | 35,000 |
2002年 | 30,000 |
2001年 | 27,000 |
2000年 | 23,000 |
1999年 | 20,000 |
1998年 | 17,066 |
1997年 | 18,000 |
1996年 | 17,911 |
1995年 | 17,066 |
1994年 | 18,500 |
1993年 | 19,500 |
1992年 | 20,000 |
1991年 | 20,500 |
1990年 | 21,060 |
1989年 | 19,200 |
1988年 | 17,500 |
1987年 | 15,000 |
1986年 | 12,000 |
1985年 | 9,000 |
1984年 | 7,000 |
1983年 | 7,000 |
1982年 | 7,000 |
1981年 | 6,550 |
1980年 | 6,550 |
1979年 | 6,549 |
1978年 | 3,500 |
1977年 | 3,378 |
1976年 | 3,100 |
1975年 | 3,000 |
1974年 | 2,826 |
1973年 | 2,500 |
1972年 | 2,500 |
1971年 | 2,000 |
1970年 | 2,000 |
1969年 | 1,900 |
1968年 | 1,900 |
1967年 | 1,900 |
1966年 | 1,800 |
1965年 | 3,150 |
1964年 | 3,100 |
1963年 | 3,000 |
1962年 | 3,000 |
1961年 | 3,000 |
バーレーンの羊飼養数の推移を見ると、この小国の農牧業における重要な変化を読み取ることができます。1961年から1970年代半ばまでの飼養数は3,000匹を中心とした安定した推移が見られました。しかし、1966年に1,800匹に減少して以降、一時的に低下が続きました。この期間の減少は、バーレーンの急速な都市化や産業構造の転換が農牧業に直接的な影響を及ぼした可能性があります。
1979年には急激な増加が見られ、翌1980年には6,550匹を記録しました。これはオイルブームによる経済成長とそれに伴う所得増加が影響していると考えられます。さらに1980年代後半から1990年代にかけては農牧業への政府の支援策や輸入羊の導入が拡大を後押しし、最大で21,060匹(1990年)まで到達しました。しかし1990年代後半には再び飼養数が低下し、2000年以降に再び増加基調に戻っています。
2003年以降、持続的な増加が続き、2017年には記録的な64,704匹に達しました。この急成長は、国内需要の増加だけでなく、意図的な国内生産促進政策や隣国諸国との家畜貿易の活発化によるものと考えられます。しかしその後の数年、急激な気候変化や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響、輸入コストの増加などにより、飼養数は次第に減少し、2020年から2022年には約60,000匹前後で横ばいの状態となっています。
特にバーレーンの地政学的状況を考慮すると、周辺地域での紛争や輸送ルートの不安定性が輸入食畜や牧草の供給に影響を与えた可能性があり、また、半乾燥気候の影響で持続可能な草地管理が難しいという地域特有の課題も見られます。
バーレーンにおいて羊の飼養は、食肉や乳製品の供給といった直接的な所得のみならず、文化的・伝統的な側面からも重要な意味を持っています。中東地域では宗教的行事や祭礼時に羊肉の需要が高まるため、飼養数の安定は経済的安定性にもつながります。このため、持続的な牧草地管理技術の導入や、地下水・淡水化技術の活用による水資源確保、さらには隣国との家畜貿易協力の強化が重要となります。また、気候変動の影響を最小限に抑えるため、持続可能な畜産テクノロジーへの官民一体での投資も必要です。
さらに、疫病のリスクを軽減するための施策も重要です。現代のグローバルな貿易体制において、家畜感染症が一国の飼養数のみならず周辺地域全体に影響を及ぼす可能性が高まっています。この点では、予防接種の普及や国際的な獣医ネットワークとの連携が求められます。
結論として、バーレーンにおける羊の飼養数推移は、地理的条件、経済的背景、そして国際的な影響が複雑に絡み合う結果が表れています。今後は、国内資源の効率的な活用と気候変動に対応する政策の導入、さらには地域協力によるリスク管理と市場拡大を目指すことが、持続可能な発展の鍵となるでしょう。