2017年のFAO(国際連合食糧農業機関)のデータによると、世界の羊毛生産量ランキングでは、中国が41万トンを超える生産量で第1位となり、次いでオーストラリアが37万約7千トン、ニュージーランドが15万トンでそれぞれ2位と3位にランクインしました。このトップ3が全体で特に大きな割合を占めています。全体的に見て、アジアとオセアニア地域の国々が上位に多くランクインしており、羊毛生産において地理的・気候的要因が重要であることが浮き彫りとなっています。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
アジア | 410,523 |
| 2 |
|
オセアニア | 376,967 |
| 3 |
|
オセアニア | 150,680 |
| 4 |
|
ヨーロッパ | 68,904 |
| 5 |
|
アジア | 63,315 |
| 6 |
|
アジア | 60,284 |
| 7 |
|
アフリカ | 59,645 |
| 8 |
|
ヨーロッパ | 56,733 |
| 9 |
|
アジア | 45,700 |
| 10 |
|
アフリカ | 45,524 |
| 11 |
|
南アメリカ | 42,400 |
| 12 |
|
アジア | 42,238 |
| 13 |
|
アジア | 41,500 |
| 14 |
|
アジア | 38,980 |
| 15 |
|
アフリカ | 38,238 |
| 16 |
|
アジア | 36,360 |
| 17 |
|
南アメリカ | 25,497 |
| 18 |
|
アジア | 25,000 |
| 19 |
|
ヨーロッパ | 22,789 |
| 20 |
|
アジア | 18,092 |
| 21 |
|
アジア | 16,853 |
| 22 |
|
アジア | 16,040 |
| 23 |
|
アジア | 15,179 |
| 24 |
|
アジア | 14,879 |
| 25 |
|
ヨーロッパ | 14,436 |
| 26 |
|
ヨーロッパ | 14,280 |
| 27 |
|
アジア | 13,865 |
| 28 |
|
ヨーロッパ | 12,404 |
| 29 |
|
アジア | 11,926 |
| 30 |
|
アフリカ | 11,623 |
| 31 |
|
北アメリカ | 11,204 |
| 32 |
|
アフリカ | 9,955 |
| 33 |
|
アフリカ | 9,876 |
| 34 |
|
南アメリカ | 9,362 |
| 35 |
|
アジア | 8,500 |
| 36 |
|
南アメリカ | 8,138 |
| 37 |
|
アフリカ | 7,447 |
| 38 |
|
ヨーロッパ | 7,400 |
| 39 |
|
アフリカ | 7,264 |
| 40 |
|
ヨーロッパ | 7,259 |
| 41 |
|
南アメリカ | 7,238 |
| 42 |
|
アジア | 7,000 |
| 43 |
|
ヨーロッパ | 5,939 |
| 44 |
|
アジア | 4,856 |
| 45 |
|
南アメリカ | 4,647 |
| 46 |
|
南アメリカ | 4,284 |
| 47 |
|
ヨーロッパ | 4,052 |
| 48 |
|
ヨーロッパ | 3,744 |
| 49 |
|
アフリカ | 3,695 |
| 50 |
|
ヨーロッパ | 3,192 |
| 51 |
|
ヨーロッパ | 3,000 |
| 52 |
|
ヨーロッパ | 2,946 |
| 53 |
|
ヨーロッパ | 2,831 |
| 54 |
|
アフリカ | 2,627 |
| 55 |
|
アジア | 2,599 |
| 56 |
|
アジア | 2,408 |
| 57 |
|
アフリカ | 2,093 |
| 58 |
|
アジア | 2,000 |
| 59 |
|
ヨーロッパ | 1,967 |
| 60 |
|
南アメリカ | 1,944 |
| 61 |
|
ヨーロッパ | 1,850 |
| 62 |
|
アフリカ | 1,532 |
| 63 |
|
アジア | 1,385 |
| 64 |
|
ヨーロッパ | 1,359 |
| 65 |
|
ヨーロッパ | 1,336 |
| 66 |
|
アフリカ | 1,273 |
| 67 |
|
北アメリカ | 1,251 |
| 68 |
|
南アメリカ | 1,207 |
| 69 |
|
アジア | 1,147 |
| 70 |
|
ヨーロッパ | 1,062 |
| 71 |
|
ヨーロッパ | 970 |
| 72 |
|
ヨーロッパ | 894 |
| 73 |
|
アジア | 828 |
| 74 |
|
ヨーロッパ | 780 |
| 75 |
|
ヨーロッパ | 731 |
| 76 |
|
アジア | 721 |
| 77 |
|
南アメリカ | 620 |
| 78 |
|
アジア | 594 |
| 79 |
|
ヨーロッパ | 513 |
| 80 |
|
アジア | 324 |
| 81 |
|
ヨーロッパ | 323 |
| 82 |
|
アフリカ | 291 |
| 83 |
|
ヨーロッパ | 250 |
| 84 |
|
ヨーロッパ | 244 |
| 85 |
|
ヨーロッパ | 219 |
| 86 |
|
ヨーロッパ | 165 |
| 87 |
|
アジア | 162 |
| 88 |
|
ヨーロッパ | 147 |
| 89 |
|
ヨーロッパ | 146 |
| 90 |
|
ヨーロッパ | 138 |
| 91 |
|
ヨーロッパ | 122 |
| 92 |
|
ヨーロッパ | 77 |
| 93 |
|
ヨーロッパ | 26 |
| 94 |
|
ヨーロッパ | 16 |
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2017年の羊毛生産データに基づいて、世界の生産動向を分析すると、中国が圧倒的な生産量で世界のトップに立っています。その生産量は41万523トンに達し、これは全体の羊毛生産の中でも非常に大きなシェアを占めます。中国は広大な牧草地だけでなく、さらに羊毛加工産業のインフラにも恵まれており、多くの分野での競争力を発揮しています。一方で、オーストラリアとニュージーランドもその地域の適した気候や豊富な牧草地によりそれぞれ第2位と第3位に位置しており、これらの国の羊毛生産は世界的にも高い評価を受けています。
特にオーストラリアは、メリノウールという高品質の羊毛で有名であり、グローバル市場での需要が非常に強いブランド力を持っています。これに対し、中国では大量生産が可能な体制が強みとなっており、工業規模での羊毛の利用がさらに進められています。ニュージーランドは品質とともに、持続可能な農業を重視した生産体制が注目されています。上位3カ国だけでも、羊毛生産全体のかなりの割合を占め、その影響力の大きさが明確です。
ヨーロッパ諸国ではイギリスがトップで、68,904トンの生産量を記録しました。同地域の他国、例えばフランスやドイツは、農業の多様性や土地利用の制約も影響してか、比較的少ない生産量にとどまっています。イギリスは歴史的に羊毛産業が国内経済を支えてきた背景があり、現在もその伝統が続いているといえます。
また、中東や北アフリカの諸国では、トルコ(63,315トン)やイラン(60,284トン)が上位にランクインしています。これらの国々では、国土が乾燥気候であるものの、羊に適した牧草地が存在することがこの結果に寄与しています。特にトルコでは地場産業としての羊毛生産が農村経済の活性化に寄与しています。
一方で、アメリカ合衆国はおよそ11,204トンで31位と、意外にもそれほど上位ではありません。本来、広大な草原がある国土や技術力を背景に高いポテンシャルを持っていますが、羊毛よりも他の畜産業(牛や豚など)が国内で経済的に主流となっていることが影響していると考えられます。
大局的に見ると、羊毛の生産は農業が主力産業となる国々や、牧畜文化が伝統的に根付いている地域で特に強い傾向があります。同時に、地理的条件や気候条件が羊毛生産における重要な要素であることも明らかです。しかし、これはまた地政学的リスクや気候変動とも深く結びついています。例えば、乾燥地域の国々で異常気象が続くと、牧草地の維持が難しくなり、生産量が大きく減少する可能性があります。
未来を見据えた際、安定した生産を確保するにはいくつかの課題があります。例えば、サステナビリティへの取り組み強化が重要です。持続可能な農業技術を導入し、環境負荷を軽減することで、長期的な生産維持につながるでしょう。さらに、地政学的には、輸出入のルートが安定していることによって、羊毛商品の国際貿易が円滑に進むことが不可欠です。例えば、主要輸出国であるオーストラリアやニュージーランドは、輸出先の多様化を図ることで輸出先の需要変化リスクに備える必要があります。また、気候変動によるリスクに対し、灌漑技術の強化や牧草地の管理技術の向上を進めることも推奨されます。
結論として、羊毛産業は主要な経済活動の一つであり、トップ3を占める中国、オーストラリア、ニュージーランドの動向が特に重要です。これらの国々は品質や量で他国をリードしていますが、他国も独自の強みを活用しさらなる生産力の向上と差別化を図ることが可能です。一方で、気候変動や市場の変動に対応するためには、持続可能性を意識した農業と政策が不可欠といえます。国際協力を通じて、新技術の共有や貿易政策の安定化に取り組むことが、今後の発展に向けた鍵となるでしょう。