国際連合食糧農業機関(FAO)によると、ヨルダンの羊の毛生産量は1961年の1,500トンを起点とし、その後数十年間にわたり大きな変動を見せてきました。そして2022年には4,623トンと過去数十年と比較して安定した生産量を記録しています。特に1990年代から2000年代にかけては大幅な増減が見られ、一方で2010年代後半以降はおおむね安定的な傾向を示しています。この安定的な推移は、農業政策の改善や気候変動対応策が影響している可能性があります。
ヨルダンの羊の毛生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 4,623 |
2021年 | 4,598 |
2020年 | 4,572 |
2019年 | 4,505 |
2018年 | 4,517 |
2017年 | 4,856 |
2016年 | 5,008 |
2015年 | 4,160 |
2014年 | 4,311 |
2013年 | 6,553 |
2012年 | 3,268 |
2011年 | 3,953 |
2010年 | 6,860 |
2009年 | 2,590 |
2008年 | 4,530 |
2007年 | 3,780 |
2006年 | 3,540 |
2005年 | 4,420 |
2004年 | 2,860 |
2003年 | 2,890 |
2002年 | 3,260 |
2001年 | 3,130 |
2000年 | 3,530 |
1999年 | 3,325 |
1998年 | 2,055 |
1997年 | 3,008 |
1996年 | 4,930 |
1995年 | 4,171 |
1994年 | 4,500 |
1993年 | 5,800 |
1992年 | 5,300 |
1991年 | 3,800 |
1990年 | 3,112 |
1989年 | 3,046 |
1988年 | 2,558 |
1987年 | 2,200 |
1986年 | 2,180 |
1985年 | 2,180 |
1984年 | 1,870 |
1983年 | 2,140 |
1982年 | 1,980 |
1981年 | 2,146 |
1980年 | 1,704 |
1979年 | 1,850 |
1978年 | 1,700 |
1977年 | 1,600 |
1976年 | 1,150 |
1975年 | 1,550 |
1974年 | 1,600 |
1973年 | 1,800 |
1972年 | 1,600 |
1971年 | 1,579 |
1970年 | 1,513 |
1969年 | 1,986 |
1968年 | 2,600 |
1967年 | 2,200 |
1966年 | 3,000 |
1965年 | 2,800 |
1964年 | 2,200 |
1963年 | 900 |
1962年 | 1,300 |
1961年 | 1,500 |
羊の毛生産はヨルダンの農業分野における一つの重要な収益源であり、衣料品や手工芸品の生産に広く活用されています。FAOが報告したデータをもとに長期的な推移を見ると、ヨルダンの羊毛生産は1960年代に1,000トンから3,000トンの範囲で変動していたことが分かります。その後1970年以降、生産量はおおむね1,500~2,000トン付近で推移していましたが、1990年代に入ると急激に増加します。例えば1992年には5,300トンに達し、1993年はさらに5,800トンと大幅な成長を記録しました。
この1990年代の増加は、ヨルダンの市場開放政策や輸出の拡大による需要の影響が考えられます。ただし、1994年以降は一時的に4,500トンへと減少し、その後の数年間で再び変動を繰り返しました。この不安定な生産量の背景には、地域の自然環境条件、降水量の減少、さらには地政学的リスクが影響していた可能性があります。特に地域の紛争や緊張は農業生産基盤に広範な影響を及ぼし、生産効率の低下を引き起こす要因となります。
2000年以降のデータを見ると、長期的な傾向としては緩やかに増加しているものの急激な変動も散見されます。注目すべき年としては、2010年(6,860トン)のピークが挙げられます。このような生産量の急増は、政府の農業支援策や国内需要の高まりが要因と考えられます。しかしその後の2011年には3,953トンへと減少し、再び安定的な軌道へ戻るまで数年を要しました。
2018年以降は比較的安定した推移を見せています。2022年には4,623トンを記録し、これはヨルダンにおける羊毛生産の基盤が相対的に強化されつつあることを示しています。この安定傾向の背景として考えられるのは、農業技術の導入や気候条件の改善、および農牧民への経済的支援政策の効果です。
一方で課題も依然として存在します。気候変動による干ばつや、農業に必要な水資源の減少は、羊の飼育環境に影響を及ぼしており、生産性低下のリスクを抱えています。また、地域内の地政学的不安定さや内戦の余波が農業労働力や供給ルートに与える影響も無視できません。これらの構造的な問題に対し、ヨルダン政府は新たな対策を講じる必要があります。
今後取り得る具体的な対策としては、以下が考えられます。第一に、持続可能な農業技術の普及を進めることで、気候変動の影響を最小化します。第二に、羊毛製品のブランド化戦略を推進し、国内外の需要をさらに高めることが重要です。また第三に、隣国との協働体制を強化し、地域全体で牧畜資源を管理する仕組みづくりを進めるべきです。
結論として、ヨルダンの羊毛生産量は2022年時点で安定化に向かっているものの、長期的な気候変動対策や地域協力の強化が必要不可欠です。これにより、羊毛産業の更なる発展と競争力向上が期待されます。国際機関や多国間支援の枠組みを活用した政策提案も、農牧民の生活向上と産業の持続性確保に寄与するでしょう。