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リビアの羊の毛生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、リビアの羊の毛生産量は1961年の2,332トンから長期的に増加を続け、2022年には10,255トンに達しました。この間には生産量の減少や停滞を伴う年も見られましたが、近年では安定した成長が確認されています。特に、1970年代から1980年代にかけて大幅な変動がありましたが、2000年以降は着実な増加傾向にあります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 10,334
0.77% ↑
2022年 10,255
0.67% ↑
2021年 10,187
0.67% ↑
2020年 10,119
0.13% ↑
2019年 10,106
1.25% ↑
2018年 9,981
1.06% ↑
2017年 9,876
0.69% ↑
2016年 9,809
0.01% ↑
2015年 9,808
0.93% ↑
2014年 9,717
1% ↑
2013年 9,621
1.81% ↑
2012年 9,450 -
2011年 9,450
1% ↑
2010年 9,357
1.05% ↑
2009年 9,260
1.11% ↑
2008年 9,158
1.75% ↑
2007年 9,000
1.12% ↑
2006年 8,900
-6.32% ↓
2005年 9,500
0.14% ↑
2004年 9,487
5.91% ↑
2003年 8,958
1.54% ↑
2002年 8,822
1.37% ↑
2001年 8,702
1.42% ↑
2000年 8,581
-0.51% ↓
1999年 8,625
15% ↑
1998年 7,500
-10.71% ↓
1997年 8,400
1.82% ↑
1996年 8,250
7.84% ↑
1995年 7,650
7.37% ↑
1994年 7,125
-4.04% ↓
1993年 7,425
-1% ↓
1992年 7,500
-1.96% ↓
1991年 7,650
-1.92% ↓
1990年 7,800
4% ↑
1989年 7,500
11.11% ↑
1988年 6,750 -
1987年 6,750
-10% ↓
1986年 7,500
-9.09% ↓
1985年 8,250
10% ↑
1984年 7,500
-3.85% ↓
1983年 7,800
-5.45% ↓
1982年 8,250
31.16% ↑
1981年 6,290
-23.76% ↓
1980年 8,250
1.02% ↑
1979年 8,167
36.71% ↑
1978年 5,974
-17.6% ↓
1977年 7,250
-13.69% ↓
1976年 8,400
5.66% ↑
1975年 7,950
19.55% ↑
1974年 6,650
12.9% ↑
1973年 5,890
36.31% ↑
1972年 4,321
-0.44% ↓
1971年 4,340
5.6% ↑
1970年 4,110
12.17% ↑
1969年 3,664
12.84% ↑
1968年 3,247
10.82% ↑
1967年 2,930
8.16% ↑
1966年 2,709
3% ↑
1965年 2,630
2.98% ↑
1964年 2,554
2.98% ↑
1963年 2,480
3.08% ↑
1962年 2,406
3.17% ↑
1961年 2,332 -

リビアの羊の毛生産量の推移を見ると、1960年代から現在にかけてのリビア農業の発展の一面を垣間見ることができます。1961年の生産量は2,332トンで、日本やヨーロッパの主要な羊毛生産国(オーストラリアやニュージーランド)に比べれば当時の規模は非常に小さいものでした。しかし、その後の数十年を経て、リビアでは羊の毛生産量が着実に向上し、2022年には10,255トンと約4倍以上に増加しました。この伸びは、国内畜産業の技術進化と、持続可能な牧畜活動の基盤構築を示唆しています。

とはいえ、データからリビアの羊毛生産には一定の課題も見られます。1970年代には急激な増加が観察されましたが、1977年には生産量が7,250トンへと落ち込み、その後も不安定な動きがしばらくの間続きました。この時期には地域の社会情勢が不安定だったこと、地理的要因による干ばつや砂漠化、更には遊牧民経済が資源争奪の影響を受けたことが背景として考えられます。加えて、1980年代の特定の年で減少が見られたのは、この時期のリビア国内の経済不安や、石油中心の産業構造に伴う農牧業への投資不足が影響した可能性があります。

生産量が本格的に回復傾向に転じたのは1990年代以降で、2000年以降には年間8,000トン以上という生産水準が定着しました。この背景には、砂漠地帯における水資源管理の強化、小規模牧畜業者への資金援助、そしてFAOをはじめとする国際機関の支援が挙げられます。さらに、2020年代には新しい育種技術や家畜の健康管理技術が導入され、羊毛生産の品質向上と保護的農業(環境を考慮した農業手法)の発展が同時に促進されていると言えます。

一方で、リビアの羊毛産業は依然としていくつかの課題に直面しています。まず、地政学的背景としてこの地域における政治的な不安定性が、牧畜業を取り巻く環境を変動させる可能性があります。また、砂漠化や気候変動といった環境の影響により、牧草地の維持が困難になるリスクも無視できません。このような自然・社会的条件は、短期的な収益性や長期的な持続可能性に影響を与える可能性があります。

このような課題に対して具体的な対策として、まず地域紛争の回避や長期的な安全保障を伴う政策の強化が必要です。国際協力により水資源インフラを整備し、灌漑技術を導入することで、砂漠周辺でも安定した牧草地を維持することが可能となります。さらに、環境保護技術と若年層農牧人口への教育を組み合わせることで、地域内の新しい世代が牧畜業の未来を担えるような基盤を作ることが重要です。

最後に、リビアの羊毛生産は地元および国際市場における競争力を高める可能性を秘めています。持続可能な発展を実現するためには、生産性の向上だけでなく、供給チェーンの近代化や輸出の多角化にも取り組むべきです。こうした取り組みが成功すれば、リビアは中東・北アフリカ地域の他国の羊毛生産と差別化を行い、産業全体の地位を一段高めることが可能になるでしょう。