Skip to main content

ボスニア・ヘルツェゴビナの羊の毛生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した2024年7月時点のデータによれば、ボスニア・ヘルツェゴビナの羊の毛生産量は、1992年から持続的な増加の傾向を見せつつも、2008年以降は変動が見られます。特に1992年では470トンと低い水準でしたが、2006年には1,395トンに達し、その後も1,400トン前後で安定した状態が続いています。近年(2022年)は1,408トンの生産量を記録しており、ピーク時の2007年(1,474トン)や2005年(1,220トン)と比較すると全体的な動向には小幅な変動が伴います。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,417
0.68% ↑
2022年 1,408
0.43% ↑
2021年 1,402
0.43% ↑
2020年 1,396
-2.47% ↓
2019年 1,431
3.42% ↑
2018年 1,384
3.55% ↑
2017年 1,336
-5.3% ↓
2016年 1,411
1.45% ↑
2015年 1,391
6.35% ↑
2014年 1,308
0.77% ↑
2013年 1,298
1.72% ↑
2012年 1,276
-4.13% ↓
2011年 1,331
-3.69% ↓
2010年 1,382
-3.89% ↓
2009年 1,438
1.55% ↑
2008年 1,416
-3.93% ↓
2007年 1,474
5.66% ↑
2006年 1,395
14.34% ↑
2005年 1,220
6.09% ↑
2004年 1,150
15% ↑
2003年 1,000
13.64% ↑
2002年 880
17.33% ↑
2001年 750
2.74% ↑
2000年 730
1.39% ↑
1999年 720
5.88% ↑
1998年 680
11.48% ↑
1997年 610
12.96% ↑
1996年 540
8% ↑
1995年 500
-13.39% ↓
1994年 577
-0.3% ↓
1993年 579
23.2% ↑
1992年 470 -

ボスニア・ヘルツェゴビナの羊の毛生産量推移は、同地域の農業従事者や国際市場にとって重要な指標となっています。このデータは、羊毛産業を通じた地域経済の活性化や、農業に基づく生計手段の価値を示すものです。1992年の470トンという生産量は、当時勃発していたボスニア紛争の影響や経済的混乱を反映していると考えられます。戦後、平和が回復し農業と畜産が復興する中で生産量は急激に増加しました。その後、2003年以降は1,000トンを突破し、2007年には1,474トンの生産ピークを迎えました。

しかし2008年以降には、景気要因や農業政策の変化、さらには気候の影響などが複合的に作用し、生産量に上下の変動が見られます。特に2011年から2013年にかけて1,300トン台への減少が確認されており、この背景には農村部の若者の減少や、近代的な農業技術の遅れが指摘されています。また、2022年に達した1,408トンという数字は近年の努力の成果を反映しており、緩やかな回復が見込まれています。

羊毛生産の長期的な課題の一つには、気候変動が挙げられます。異常気象や降水量の変化による農地の荒廃や羊の健康への影響が懸念されています。また、近隣諸国との競争も課題の一つです。例えば、中国やオーストラリアは大規模な羊毛輸出国であり、ボスニア・ヘルツェゴビナの競争力を高めるには、品質向上と効率的な生産手法の採用が必要です。

さらに地政学的な要素も見逃せません。ボスニア・ヘルツェゴビナは欧州南東部という位置にあり、国際市場との接続性が今後の羊毛産業発展の鍵を握っています。適切な貿易政策や、ドイツやイタリアといったEU諸国への輸出ルートの確保は急務と言えます。

将来に向けて、いくつかの具体的な対策が考えられます。特に、農村部への支援を強化し、若年層が農業に参加しやすい環境を整えることが重要です。また、環境に配慮したサステナブルな畜産手法の導入によって、気候変動への適応能力を高めることも必要です。他の対策例としては、スマート農業技術の導入や地域間協力による市場拡大などが挙げられます。国際援助機関やEUの支援を活用しながら、ボスニア・ヘルツェゴビナの羊毛生産を地域の象徴的な産業として位置づけていくべきでしょう。

結論として、ボスニア・ヘルツェゴビナの羊の毛生産は復興から成長へと歩を進めていますが、現在の安定的な生産水準を維持するためには、外的環境と内部的な課題の双方に対応していく必要があります。国際的な支援と地域内での包括的な政策が、この産業の持続可能な発展に寄与すると期待されます。