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ニュージーランドの羊の毛生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の2024年更新データによると、ニュージーランドの羊の毛生産量は1961年の266,300トンから1981年のピーク時に380,700トンに達した後、持続的に減少しています。2022年には126,880トンにとどまり、過去60年間で3分の1以下に縮小しています。この推移は産業構造の変化、国内外の需要の低下、環境政策など複数の要因が絡んでいると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 124,043
-2.24% ↓
2022年 126,880
-5.14% ↓
2021年 133,752
-4.55% ↓
2020年 140,131
-2.96% ↓
2019年 144,401
-2.74% ↓
2018年 148,467
-1.47% ↓
2017年 150,680
-1.68% ↓
2016年 153,253
3.74% ↑
2015年 147,731
-3.11% ↓
2014年 152,480
-4.43% ↓
2013年 159,548
-3.3% ↓
2012年 165,000
0.79% ↑
2011年 163,700
-7.15% ↓
2010年 176,300
-5.11% ↓
2009年 185,800
17.97% ↑
2008年 157,500
-27.72% ↓
2007年 217,900
-3.03% ↓
2006年 224,700
4.27% ↑
2005年 215,500
-1.01% ↓
2004年 217,700
-5.18% ↓
2003年 229,600
0.57% ↑
2002年 228,300
-3.53% ↓
2001年 236,661
-7.99% ↓
2000年 257,200
2.06% ↑
1999年 252,000
-5.19% ↓
1998年 265,800
-3.28% ↓
1997年 274,800
2.23% ↑
1996年 268,800
-6.86% ↓
1995年 288,600
1.62% ↑
1994年 284,000
11.15% ↑
1993年 255,500
-13.68% ↓
1992年 296,000
-3.05% ↓
1991年 305,300
-1.2% ↓
1990年 309,000
-9.38% ↓
1989年 341,000
-1.45% ↓
1988年 346,000
-1.14% ↓
1987年 350,000
-2.13% ↓
1986年 357,600
-4.23% ↓
1985年 373,400
2.7% ↑
1984年 363,600
-1.99% ↓
1983年 371,000
2.2% ↑
1982年 363,000
-4.65% ↓
1981年 380,700
6.64% ↑
1980年 357,000
11.35% ↑
1979年 320,600
3.15% ↑
1978年 310,804
2.73% ↑
1977年 302,535
-2.96% ↓
1976年 311,760
6% ↑
1975年 294,100
3.27% ↑
1974年 284,800
-7.77% ↓
1973年 308,800
-4.1% ↓
1972年 322,000
-3.59% ↓
1971年 334,000
0.03% ↑
1970年 333,900
0.63% ↑
1969年 331,800
0.45% ↑
1968年 330,300
2.64% ↑
1967年 321,800
2.09% ↑
1966年 315,200 -
1965年 315,200
11.5% ↑
1964年 282,700
1.04% ↑
1963年 279,800
-0.6% ↓
1962年 281,500
5.71% ↑
1961年 266,300 -

ニュージーランドの羊の毛生産量は、かつて羊毛輸出が国内経済の中心的役割を果たしていた1960年代から1980年代にかけて安定した成長を記録しました。特に1981年には380,700トンという生産量を記録し、同国の農畜産業の黄金期とも言える時代でした。しかし、それ以降は一貫して減少傾向にあり、2022年には126,880トンまで縮小しました。その結果、生産量はピークと比較しておよそ67%減少したことになります。

この減少の要因にはいくつかの背景が考えられます。最大の要因の一つは、羊の頭数そのものの減少です。これは、食肉用牛や乳製品生産における牛の飼育への移行が進んだことが影響しています。世界的な羊毛の需要低下も重要です。合成繊維の台頭や、より機能的で安価な人工素材の拡大が羊毛市場に大きな圧力をかけました。また、環境保護政策による農業用地の規制も間接的に影響を与えています。たとえば、ニュージーランドでは温室効果ガス排出削減の一環として農牧地の拡大に制限が課されており、それが羊毛生産減少の一因となっています。

さらに、地政学的リスクも無視できません。紛争や貿易制限による輸出市場への影響、新型コロナウイルス感染症の大流行による物流問題は、羊毛産業に深刻な課題を投げかけました。他国の例と比較すると、中国やオーストラリアが羊毛産業を維持するよう努力しているのに対し、ニュージーランドの生産量減少はより急激であることが明らかです。

今後の課題として、ニュージーランドの羊毛産業が直面する最大の問題は、環境と経済のバランスをどのように取るかという点です。羊毛は天然繊維として環境負荷が低い素材である一方、生産過程での土地利用や温室効果ガスの排出などの課題も存在します。このため、持続可能な生産方法の採用が不可欠です。

具体的な提言としては、羊毛製品の高付加価値化が挙げられます。ニュージーランドの羊毛は高品質で知られており、これを活用したプレミアム市場の開拓が鍵となります。また、羊毛の環境的な利点を強調し、エコ志向の消費者層に訴求するマーケティング戦略が求められます。さらに、国内外の羊毛需要を支えるための貿易パートナーシップの強化も重要です。他国の例では、オーストラリアが中国と連携して羊毛市場を拡大していることが参考になります。

結論として、ニュージーランドの羊毛生産量の減少は、国内の農業構造の変化、国際的な市場動向、環境政策といった複合的な要因が絡み合う結果として生じたものです。この現象は同時に、環境持続性と経済的価値の両立という現代的な課題を浮き彫りにしています。同国が今後もこの重要な産業を維持し発展させるためには、創造的な製品開発や環境問題への適切な取り組みを通じて抜本的な変革が必要です。