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エチオピアの羊の毛生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に発表した最新データによると、エチオピアの羊の毛生産量は、1993年の11,500トンから2000年の12,000トンへと増加し、2000年代前半にピークを迎えました。その後、2004年以降は減少に転じ、2022年には7,307トンと、ピーク時の約60%にまで落ち込んでいます。この推移から、長期的な生産量の低下傾向がはっきりとみてとれます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 7,323
0.22% ↑
2022年 7,307
-0.51% ↓
2021年 7,345
-0.51% ↓
2020年 7,382
-0.34% ↓
2019年 7,408
1% ↑
2018年 7,334
-1.51% ↓
2017年 7,447
-1.45% ↓
2016年 7,556
-2.07% ↓
2015年 7,716
-2.81% ↓
2014年 7,939
-0.76% ↓
2013年 8,000 -
2012年 8,000 -
2011年 8,000 -
2010年 8,000
-0.41% ↓
2009年 8,033
-0.47% ↓
2008年 8,071
-0.57% ↓
2007年 8,117
-0.63% ↓
2006年 8,168
-18.72% ↓
2005年 10,050
-3.76% ↓
2004年 10,443
-15.27% ↓
2003年 12,324
1.42% ↑
2002年 12,152
0.78% ↑
2001年 12,058
0.48% ↑
2000年 12,000
1.2% ↑
1999年 11,858
1.35% ↑
1998年 11,700
0.38% ↑
1997年 11,655
0.48% ↑
1996年 11,600
0.31% ↑
1995年 11,564
0.22% ↑
1994年 11,539
0.34% ↑
1993年 11,500 -

エチオピアはアフリカの農業国として、羊の飼育とその毛の生産が重要な部門となっています。羊の毛は主に繊維産業で利用され、同国の経済および輸出品目の一部として貢献してきました。しかし、羊毛生産量の推移を見ると、1993年から2000年にかけては順調に増加していたものの、2004年を境に急激な減少が始まり、その後現在に至るまで低迷状態が続いています。

この現象の背景にはいくつかの要因が考えられます。まず、2000年代中頃から続くエチオピアの気候変動の影響が挙げられます。同国では長引く干ばつや不規則な降雨が牧草地の減少を引き起こし、羊の放牧に適した環境が悪化しました。また、人口増加による農地拡大と都市化が進み、羊および他の家畜の飼育可能な土地の競争が激化した可能性があります。この環境的および地政学的課題が羊毛生産に負の影響を及ぼしていると考えられます。

さらに、2004年以降における急激な生産量の減少は、政策や市場問題の影響も否定できません。例えば、羊毛生産の近代化や効率化のための投資が不足していることや、国際市場へのアクセスが制限されていることが生産規模縮小を招いた可能性があります。このような要素が複合的に絡み合い、エチオピアの羊毛生産を圧迫していると推測されます。

過去数年間では、羊毛生産量は相対的に安定しているように見えますが、それは低水準での安定です。これを改善するためには、いくつかの具体的な対策が必要です。例えば、気候変動に対処するための耐干ばつ性牧草の導入や、家畜の適切な飼育技術の普及が重要です。さらに、資金援助を通じて近代的な飼育設備を整えるとともに、市場アクセスを向上させるための物流インフラの改善が求められます。地域間協力の枠組みを構築し、隣国との共同研究や資源共有を進めることも非常に有益です。

また、地域衝突や治安の問題も、家畜生産の効率低下や農家の収入低迷を引き起こしている可能性があり、これに対応するためには農村地域の治安回復および農民の生活改善を目指した政策が必要となります。

羊毛産業に再び活力を与えるには、これらの具体的な課題を解決するとともに、エチオピアの豊かな羊毛資源を最大限に活用する戦略を練る必要があります。これにより、同国の農業および輸出産業全体の発展に寄与できる可能性が高まります。今後も国際機関との協力を通じて、政策の実施とその進捗をモニタリングしていくことが重要です。