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マリの羊の毛生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、マリの羊の毛生産量は1961年の500トンを記録した後、年間ごとに変動が生じています。特に1965年から1970年代前半にかけて大幅に減少した時期がありましたが、1980年代以降は比較的安定した推移を見せ、370トン前後を記録しました。その後、2007年の390トンをピークに生産量は減少基調に転じ、2022年には274トンにまで低下しました。長期的には羊毛生産量の減少が顕著で、近年の環境的・社会的要因の影響が懸念されています。

年度 生産量(トン)
2022年 274
2021年 280
2020年 286
2019年 292
2018年 284
2017年 291
2016年 298
2015年 305
2014年 307
2013年 311
2012年 325
2011年 320
2010年 346
2009年 355
2008年 364
2007年 390
2006年 374
2005年 377
2004年 379
2003年 381
2002年 382
2001年 383
2000年 384
1999年 380
1998年 386
1997年 369
1996年 370
1995年 371
1994年 373
1993年 374
1992年 376
1991年 378
1990年 430
1989年 370
1988年 370
1987年 370
1986年 370
1985年 370
1984年 370
1983年 370
1982年 370
1981年 360
1980年 350
1979年 340
1978年 330
1977年 320
1976年 310
1975年 300
1974年 280
1973年 280
1972年 300
1971年 300
1970年 300
1969年 300
1968年 300
1967年 200
1966年 800
1965年 300
1964年 400
1963年 500
1962年 500
1961年 500

マリにおける羊の毛生産量は、地域の農牧業における重要な収入源や伝統的な手工芸産業を支える指標として注目されています。しかし、60年以上の統計を俯瞰すると、その数値の推移から課題が多く見受けられます。1960年代前半から1970年代後半にかけては、大きな変動が続きました。1980年代に入ってからは370トン付近での安定期がしばらく続きましたが、21世紀に入ると次第に減少傾向に転じていることがわかります。2022年には過去60年余りで最低水準の274トンに達しました。

この羊毛生産量の推移を考える際、複数の要因が絡み合っている可能性があります。まず、干ばつなどの気候変動の影響が大きいと考えられます。マリはサヘル地域に位置しており、過去数十年間にわたる降雨量の減少や砂漠化の進行が典型的な課題です。これにより牧草地の劣化が進み、羊の生育環境が悪化した可能性があります。過度な放牧や土地の不適切な利用も、牧草地の持続可能性を損ねる原因となります。また、紛争や社会的不安定も生産活動に影響を与える重要な要素です。特に2010年以降、地域全体での安全保障の悪化や移動制限が原因で、効率的な牧畜が妨げられる状況が続いています。

さらに、国際的な羊毛需要と価格の変動も見逃せません。競合する他国、特に羊毛の主要産出国であるオーストラリアやニュージーランドの影響が、マリの羊毛産業の競争力に影響を及ぼしています。これに加え、国内での加工・流通設備の未整備や、市場アクセスの課題も産業成長を阻害している要因とされています。

将来を見据えると、まず考慮すべきは地元の牧草地管理の再編成と環境保護の強化です。持続可能な牧畜が維持できるよう、牧草地の再生を目的とした植林や土壌改良への投資を推進すべきです。また、牧畜業者に対する教育や資金提供を通じて、飼育技術の向上と効率化を図る取り組みも有効です。さらに、羊毛を加工・販売する地元の施設を整備することで、付加価値の高い製品を国内外市場に供給できる体制を早急に構築する必要があります。

国際的な協力も求められます。例えば国際連合やアフリカ開発銀行といった組織による支援プログラムを通じ、サプライチェーン全体の向上を目指すことが挙げられます。また、気候変動対策をテーマとする地域協力も必要です。地域全体で一致団結して砂漠化を抑え、サヘル地帯全体の農業・牧畜可能性を向上させるためのイニシアチブを推進することが、長期的な解決策として期待されます。

結論として、マリの羊毛生産量の減少は、主に気候変動と社会的・経済的な要因に起因しています。この問題は単なる生産量の減少にとどまらず、農牧民の収入減少や地域社会の持続可能性にも深刻な影響を及ぼします。この課題に取り組むためには、国内外の関係者が連携して政策を立案し、環境・社会・経済の各側面から包括的なアプローチを実施することが求められます。