Skip to main content

アルメニアの羊の毛生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、アルメニアの羊の毛生産量は過去30年以上にわたって大きな変動を見せています。1992年の2,100トンから1990年代後半には急激に減少し、その後は1,000トン前後の水準で伸び悩む傾向がありましたが、近年、わずかに増加傾向が見られます。特に2018年と2019年に大きな落ち込みが発生した後、2020年以降は生産量が回復基調を取り戻しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,101
-1.43% ↓
2022年 1,117
3.13% ↑
2021年 1,083
3.64% ↑
2020年 1,045
6.52% ↑
2019年 981
-4.91% ↓
2018年 1,032
-25.52% ↓
2017年 1,385
-15.6% ↓
2016年 1,641
4.46% ↑
2015年 1,571
6.36% ↑
2014年 1,477
3.58% ↑
2013年 1,426
11.41% ↑
2012年 1,280
4.07% ↑
2011年 1,230
3.54% ↑
2010年 1,188
-9.1% ↓
2009年 1,307
-1.88% ↓
2008年 1,332
4.31% ↑
2007年 1,277
4.5% ↑
2006年 1,222
-6.43% ↓
2005年 1,306
8.83% ↑
2004年 1,200
1.69% ↑
2003年 1,180
5.36% ↑
2002年 1,120
3.61% ↑
2001年 1,081
-17.48% ↓
2000年 1,310
-0.08% ↓
1999年 1,311
3.23% ↑
1998年 1,270
-2.98% ↓
1997年 1,309
-4.31% ↓
1996年 1,368
-8.8% ↓
1995年 1,500
-11.76% ↓
1994年 1,700
-12.37% ↓
1993年 1,940
-7.62% ↓
1992年 2,100 -

アルメニアの羊の毛生産量は1992年から見て急速に減少を始め、1996年にはピーク時の約65%となる1,368トンに達しました。それ以降はおおむね安定して横ばい傾向を保ちながら、2000年代中頃まで1,300トン前後を推移していました。しかし、2001年には大幅な低下が見られ、1,081トンという最低水準にまで落ち込みました。

その後の2010年代には徐々に生産量が持ち直し、特に2015年から2016年には1,571トン、1,641トンと回復基調が顕著となりました。しかし、2017年以降には再び減少に転じ、2018年には過去30年間で最低の1,032トンまで減少、翌2019年も同様に981トンと低迷しました。2020年以降は再び回復基調に入り、2022年には1,117トンまで持ち直しています。

このような動向の背景には、アルメニア特有の経済的・地政学的な要因が影響していると考えられます。1990年代初頭から中盤にかけての生産量の急減は、ソ連崩壊後の経済混乱や輸出市場の縮小、関連インフラの不安定さが直接的な要因であったと推測されます。また、長引く地域紛争が農牧業の活動にも悪影響を及ぼしていたと言えます。

2018年と2019年に見られた急激な低下は、国内外の需要動向や気候変動の影響、さらには羊毛生産に携わる労働力不足の可能性が影響しているかもしれません。一方で2020年以降の回復傾向は、新型コロナウイルスの感染拡大による一時的な世界的な需要変化、あるいは政府や地域レベルでの小規模な農業支援プログラムが一定の効果をあげたことが寄与している可能性があります。

この先、アルメニアの羊の毛生産を持続的に成長させるためには、いくつかの課題に取り組む必要があります。一つは労働力や技術の不足に対する対策です。若い世代が農業分野を避けがちな傾向があるため、地域における教育や研修の充実、専門人材の育成を促進する政策が求められます。また、外部市場への輸出を増加させるために、輸送インフラや物流システムの改善が不可欠でしょう。

さらに、地政学的な側面に関しても対処が必要です。地域紛争は未解決のままであり、特に農牧業が依存する国境近くの不安定な状況が経済全体にリスクをもたらしています。これに対しては、地域間協力の枠組みを構築し、和解を推進する国際的な努力も重要と言えます。

まとめると、アルメニアの羊毛生産は過去30年間でいくつかの困難に直面しながらも、回復の兆しを見せています。持続的発展の鍵を握るのは、技術革新、教育投資、地政学リスクへの対応と輸出市場拡大の4点にあります。国際機関や近隣諸国との連携を強化し、アルメニアの羊毛生産業が地域経済全体に好影響を欠かせる産業となるよう努力を続けることが必要です。