Skip to main content

トルコの羊の毛生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の2024年最新データによると、トルコの羊の毛生産量は、2022年には84,885トンを記録し、過去10年間で一貫して増加傾向にあります。特に、1960年代から2000年代前半の減少傾向を乗り越え、この20年間で急速に回復し、歴史的な生産量の水準を超えています。この生産量の増加は、国内需要と輸出の両方の増加に支えられた結果であり、トルコの農業経済にとって重要な指標となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 80,195
-5.52% ↓
2022年 84,885
-1.2% ↓
2021年 85,916
7.73% ↑
2020年 79,754
12.99% ↑
2019年 70,587
5.39% ↑
2018年 66,975
5.78% ↑
2017年 63,315
1.26% ↑
2016年 62,525
5.62% ↑
2015年 59,196
1.36% ↑
2014年 58,403
6.61% ↑
2013年 54,784
7.04% ↑
2012年 51,180
9.86% ↑
2011年 46,586
8.79% ↑
2010年 42,823
6.34% ↑
2009年 40,270
-8.82% ↓
2008年 44,166
-5.53% ↓
2007年 46,751
-0.05% ↓
2006年 46,776
1.3% ↑
2005年 46,176
0.44% ↑
2004年 45,972
-1.04% ↓
2003年 46,457
21.48% ↑
2002年 38,244
-6.51% ↓
2001年 40,907
-5.17% ↓
2000年 43,139
-5.53% ↓
1999年 45,665
2.92% ↑
1998年 44,368
-2.77% ↓
1997年 45,632
-8.46% ↓
1996年 49,847
-1.83% ↓
1995年 50,775
-5% ↓
1994年 53,450
-4.89% ↓
1993年 56,200
-4.83% ↓
1992年 59,050
-2.38% ↓
1991年 60,490
-0.11% ↓
1990年 60,559
-13.67% ↓
1989年 70,150
-3.77% ↓
1988年 72,897
3.59% ↑
1987年 70,371
0.11% ↑
1986年 70,295
3.38% ↑
1985年 68,000
6.48% ↑
1984年 63,864
2.58% ↑
1983年 62,260
0.3% ↑
1982年 62,075
-0.38% ↓
1981年 62,310
1.67% ↑
1980年 61,285
3.42% ↑
1979年 59,260
4.58% ↑
1978年 56,665
2.52% ↑
1977年 55,270
2.51% ↑
1976年 53,915
1.11% ↑
1975年 53,325
1.77% ↑
1974年 52,400
1.28% ↑
1973年 51,740
2.88% ↑
1972年 50,290
4.97% ↑
1971年 47,910
1.61% ↑
1970年 47,150
0.43% ↑
1969年 46,950
-1.16% ↓
1968年 47,500
3.26% ↑
1967年 46,000
4.55% ↑
1966年 44,000
2.33% ↑
1965年 43,000 -
1964年 43,000
-0.69% ↓
1963年 43,300
1.41% ↑
1962年 42,700
-7.74% ↓
1961年 46,280 -

トルコは羊毛生産において長い歴史を持つ国であり、その産業は農村部の雇用や国の輸出において重要な役割を果たしています。トルコの羊の毛生産量推移を見ると、1961年の46,280トンから始まり、1980年代前半には60,000トンを超えるまで成長を見せていました。しかし、1989年を境に50,000トン台まで減少し、特に1995年から2002年の間で急激な縮小が見られる点が顕著です。この要因として、国内外の経済危機、畜産に対する関心の低下、農村人口の都市部への移動などが挙げられます。

2003年以降、羊毛生産量は徐々に回復に転じ、特に2016年以降は急激な伸びを示しています。2020年には79,754トン、2021年にはさらに85,916トンと記録的な数値に到達しました。成長を後押ししたのは、トルコ政府による農業セクターへの支援政策、羊毛を使用する国内繊維産業の拡大、そして輸出需要の増加です。トルコの主要市場にはヨーロッパ諸国や中東地域などが含まれ、これは地理的な利点や品質の高さが評価されていることを示しています。

他方で、羊毛産業が依存する自然条件やエネルギー供給問題にはリスクが伴います。例えば、2019年以降の新型コロナウイルス感染症の影響下では、輸送や労働力の確保に困難が生じ、一時的に供給体制が脆弱になる懸念もありました。また、気候変動が牧草地に与える影響と、乾燥化や水不足による畜産への圧迫が、長期的に課題となる可能性も否定できません。

さらに、他国との比較では、オーストラリアやニュージーランドなどの主要羊毛産出国と比べると、トルコの生産量は依然として低い水準にあります。ただし、トルコの羊毛の特徴として、地場産業での加工品への転用が進んでおり、農家から繊維産業まで連携が強化されている点で独自の強みがあります。この点は、輸出収益の安定化と付加価値の向上につながっています。

トルコの羊毛産業が未来の発展をするためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、気候変動への対策として、牧草地の持続可能な管理や灌漑設備の整備が急務です。また、家畜の飼育方法の近代化や生産性向上を目的とした研究開発への投資も欠かせません。さらに、貿易政策の強化を通じて、ヨーロッパおよび新興市場への輸出ルートを拡大させることが重要です。他国の例を挙げると、オーストラリアが主導する羊毛マーケティングキャンペーンや、ニュージーランドの環境配慮型の生産手法は、トルコにとっても参考になるモデルと言えます。

加えて、地域の地政学的リスクを考慮する必要があります。中東および周辺地域での紛争や政治的不安定が輸出ルートに影響を与える可能性があるため、トルコ内外での輸送インフラの多様化と強化が急がれます。例えば、新しい貿易協定の締結や、多国間輸出サプライチェーンの構築を進めることで、このリスクへの対応が可能です。

総じて、トルコの羊毛生産量は過去の困難を克服し、現在は安定した成長基調にあります。ただし、気候変動や地政学的リスクなどの外的要因への十分な配慮と対応が必要です。これらを踏まえて適切な対策を取ることができれば、トルコは将来的に、世界の羊毛産業においてより重要な役割を果たすことが期待できます。