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中国の羊の毛生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公表した最新データによると、中国の羊の毛生産量は1961年から2022年までの間、大幅な増減を繰り返す独特な推移を見せています。1961年の93,000トンから1980年代前半まで着実に成長し、1994年には254,659トン、2003年には338,058トン、2013年にはピークの471,111トンに達しましたが、その後は減少傾向に転じ、2022年には356,193トンに落ち着いています。このような中国の羊毛生産量の変化は、国内外の市場需要、環境問題、政策の変遷に強く影響を受けていると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 367,505
3.18% ↑
2022年 356,193
-0.01% ↓
2021年 356,216
6.77% ↑
2020年 333,624
-2.2% ↓
2019年 341,120
-4.34% ↓
2018年 356,608
-13.13% ↓
2017年 410,523
-0.27% ↓
2016年 411,642
-0.36% ↓
2015年 413,134
-10.1% ↓
2014年 459,564
-2.45% ↓
2013年 471,111
7.78% ↑
2012年 437,119
-1.55% ↓
2011年 443,981
14.79% ↑
2010年 386,768
6.25% ↑
2009年 364,002
-1% ↓
2008年 367,687
1.16% ↑
2007年 363,470
-6.51% ↓
2006年 388,777
-1.12% ↓
2005年 393,172
5.15% ↑
2004年 373,902
10.6% ↑
2003年 338,058
9.91% ↑
2002年 307,588
3.13% ↑
2001年 298,254
1.97% ↑
2000年 292,502
3.3% ↑
1999年 283,152
2.31% ↑
1998年 276,759
8.51% ↑
1997年 255,059
-14.44% ↓
1996年 298,102
7.47% ↑
1995年 277,375
8.92% ↑
1994年 254,659
5.98% ↑
1993年 240,300
0.89% ↑
1992年 238,192
-0.59% ↓
1991年 239,607
0.06% ↑
1990年 239,457
0.89% ↑
1989年 237,352
7.04% ↑
1988年 221,737
6.14% ↑
1987年 208,909
12.92% ↑
1986年 185,000
3.96% ↑
1985年 177,953
-2.64% ↓
1984年 182,776
-5.79% ↓
1983年 194,000
-3.96% ↓
1982年 202,000
6.88% ↑
1981年 189,000
7.39% ↑
1980年 176,000
15.03% ↑
1979年 153,000
11.11% ↑
1978年 137,700
0.51% ↑
1977年 137,000
1.48% ↑
1976年 135,000
1.5% ↑
1975年 133,000
2.31% ↑
1974年 130,000
1.56% ↑
1973年 128,000
2.4% ↑
1972年 125,000
2.46% ↑
1971年 122,000
3.39% ↑
1970年 118,000
3.51% ↑
1969年 114,000
3.64% ↑
1968年 110,000
2.8% ↑
1967年 107,000
5.94% ↑
1966年 101,000
1% ↑
1965年 100,000
2.04% ↑
1964年 98,000
2.08% ↑
1963年 96,000
1.05% ↑
1962年 95,000
2.15% ↑
1961年 93,000 -

中国は長い間、羊毛生産において世界有数の国であり、農牧業分野で重要な位置を占めています。このデータが示す羊毛生産量の増減には、複数の要因が絡み合っています。まず、1961年から1980年代初頭まで安定した上昇が記録されているのは、当時の中国国内の人口増加や衣料需要の拡大が背景にあります。この時期、中国の農業政策は羊毛の生産を奨励し、国内を中心に消費を支えました。同時に、羊飼育地域での放牧の拡大や技術改良により、生産量が向上しました。

しかし、1980年代中盤から1990年代初頭にかけて、羊毛生産量は一時的に停滞または減少しました。特に1984年から1986年にかけて生産量が低下したのは、農村改革や放牧地の管理政策の変更による影響と考えられます。この時期、経済成長に伴い羊毛以外の繊維製品、特に化学繊維の普及が進んだことも需要に影響を与えました。

その後1993年から2000年にかけての回復と2000年代初頭の飛躍的な増加は、世界的な経済成長とともに羊毛需要が増大したことに支えられています。また、技術革新や農業設備の近代化も、生産効率を高める要因として寄与していました。特に2003年以降、世界市場でのプレミアム羊毛需要の増加により、中国は輸出向けの生産を強化しました。しかし一方で、2006年以降の減少傾向には、環境への負荷が問題視されるようになったことが影響しています。放牧地の過剰利用による砂漠化や土壌劣化を受け、政府は環境保護政策を強化し、生産規模を制限する動きが見られました。

2013年以降のピークの後、中国の羊毛生産量は持続的な減少を経験しています。これは単に環境政策の影響だけでなく、労働力不足や生産コストの上昇、国内需要の傾向変化など、多面的な要因が絡んでいます。2020年以降の減少幅が小さくなっているのは、安定化を図るための政策調整の結果と考えられます。

地域ごとに着目すると、主要な羊毛生産地域である西北部の内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区では、放牧地管理と環境保護の取り組みが特に進んでいます。しかし、地政学的な背景として新疆地域における緊張状態や国際的圧力が、中国の生産活動や輸出市場に影響を与えています。

未来に向けて、中国の羊毛生産にはいくつかの課題があります。まず、環境持続性を高めながら、効率的な生産体制を構築する必要があります。具体的には、放牧技術のさらなる改善や環境負荷の低減策を講じることが求められるでしょう。また、国内外での高品質羊毛への需要に応えるため、ブランド力の向上や国際市場での位置付けを強化する政策も重要です。

国際的な視点から見ると、中国を含む世界の羊毛生産は、気候変動や市場の変化に大きく影響されています。そのため、地域間協力を通じて気候変動適応策を共有したり、国連などの国際機関と連携して技術支援を拡充することが、未来の安定した供給に役立つ可能性があります。

結論として、中国の羊毛生産は長期的な視点での環境保護と市場ニーズの均衡を保つことが重要です。この指針を軸に進むことで、持続可能な生産と経済的発展の両立が図られるでしょう。