Skip to main content

メキシコの羊の毛生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(FAO)が2024年7月に発表したデータによると、メキシコの羊の毛生産量は1961年の7,036トンからスタートしました。一時期の増加傾向を経て、1980年代に比較的安定して推移しましたが、その後減少傾向に転じ、2022年には3,786トンにまで減少しています。この60年以上のデータは、生産量が全体として長期的には減少していることを示しており、メキシコの畜産業における課題や構造変化を反映していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,797
0.3% ↑
2022年 3,786
-8.19% ↓
2021年 4,124
1.7% ↑
2020年 4,055
0.98% ↑
2019年 4,015
-11.36% ↓
2018年 4,530
-2.52% ↓
2017年 4,647
-4.27% ↓
2016年 4,854
-2.43% ↓
2015年 4,975
0.79% ↑
2014年 4,936
1.61% ↑
2013年 4,858
-3.65% ↓
2012年 5,042
7.37% ↑
2011年 4,696
0.28% ↑
2010年 4,683
-1.49% ↓
2009年 4,754
5.43% ↑
2008年 4,509
-0.22% ↓
2007年 4,519
4.8% ↑
2006年 4,312
1.84% ↑
2005年 4,234
-6.84% ↓
2004年 4,545
1.7% ↑
2003年 4,469
7.17% ↑
2002年 4,170
-3.54% ↓
2001年 4,323
3.52% ↑
2000年 4,176
0.14% ↑
1999年 4,170 -
1998年 4,170
-4.12% ↓
1997年 4,349
11.34% ↑
1996年 3,906
-3.67% ↓
1995年 4,055
1.45% ↑
1994年 3,997
-15.19% ↓
1993年 4,713
0.81% ↑
1992年 4,675
-9.54% ↓
1991年 5,168
14.41% ↑
1990年 4,517
-18.26% ↓
1989年 5,526
-13.86% ↓
1988年 6,415
-16.6% ↓
1987年 7,692
8.55% ↑
1986年 7,086
7.64% ↑
1985年 6,583
4.64% ↑
1984年 6,291
-1.93% ↓
1983年 6,415
-5.1% ↓
1982年 6,760
1.56% ↑
1981年 6,656
1.56% ↑
1980年 6,554
0.83% ↑
1979年 6,500
2.36% ↑
1978年 6,350
3.64% ↑
1977年 6,127
1.44% ↑
1976年 6,040
2.42% ↑
1975年 5,897
1.1% ↑
1974年 5,833
2.24% ↑
1973年 5,705
1.06% ↑
1972年 5,645
-20.69% ↓
1971年 7,118
0.74% ↑
1970年 7,066
-15.63% ↓
1969年 8,375
-1.47% ↓
1968年 8,500
-3.74% ↓
1967年 8,830
10.38% ↑
1966年 8,000
2.56% ↑
1965年 7,800
2.93% ↑
1964年 7,578
3% ↑
1963年 7,357
29.3% ↑
1962年 5,690
-19.13% ↓
1961年 7,036 -

メキシコの羊の毛生産量推移を見ていくと、1961年の7,036トンを皮切りに、1960年代後半には一時的に最大8,830トン(1967年)まで増加しました。しかし、1970年代に入ると増加の勢いが失速し始め、その後、生産量は長期的に減少へと向かいました。特に1990年代以降のデータでは、生産量が急激に減少しており、1990年の4,517トンをピークに大幅な低下がみられます。その後、2010年代には年間約4,500トン前後で推移していましたが、2020年代に入って生産量はさらに低下し、2022年には3,786トンを記録しています。

この動向の背景として、いくつかの要因が考えられます。まず、農業・畜産業の近代化が進展する中、農家の収益性や効率性を低下させた要素が影響している可能性があります。一例として、羊毛価格の低迷やグローバル市場での需要変化が挙げられます。特に合成繊維の普及により、羊毛の需要が世界的に減少したため、羊毛を生産する国々は過去に比べて大きな競争圧力にさらされています。さらに、メキシコ国内では労働力不足や農地の競争激化、気候変動による生産環境の変化が畜産業に影響を及ぼしていると考えられます。例えば、降水量の減少や水資源不足が牧草地の生産性を低下させ、羊の飼育効率が低下している可能性があります。

また、地域衝突や経済的理由から、メキシコ国内における畜産業の優先順位が低下している可能性も否定できません。メキシコは伝統的に輸出指向の農業製品に依存してきましたが、羊毛はその主流品目ではありません。したがって、政策的な支援が不十分であった可能性があります。他国の状況と比較すると、中国やインドなどの新興経済国では羊毛の生産量が一定規模で維持されている一方、アメリカやヨーロッパの一部の地域では市場縮小から生産量減少が顕著です。この点で、メキシコも他の多くの国々と同じ課題に直面しているといえるでしょう。

この減少への対応として、いくつかの提案が考えられます。まず、羊毛以外の収益源の多角化を目指すことが必要です。例えば、羊肉や乳製品の生産を強化することで、羊の飼育全体を持続可能な形へと転換することが考えられます。加えて、合成繊維に対抗するため、生分解性や環境適合性をアピールした高付加価値の羊毛製品を開発し、国内外の市場に訴求することも可能性のひとつです。市場へのアクセスが不十分な農家を支援するため、デジタル技術を活用したマーケティングや販路拡大も視野に入れるべきです。

さらに、国際協力の枠組みを利用してメキシコの羊毛生産を支える施策も重要です。国連や地域協力機関を通じて、技術支援や市場情報の共有を進めることで、グローバル市場での競争力を高めることが期待されます。また、気候変動への適応策として、耐乾燥性に優れた牧草種の育成や新たな飼育技術の導入も考えるべきです。

結論として、1961年から2022年にかけての羊の毛生産量推移データは、メキシコの畜産業の変動要因とその現状を明確に示しています。このまま生産量が減少を続ければ、産業としての衰退が避けられません。国や地域が具体的な対策を講じることで、羊毛産業の再生のみならず、畜産分野全体の持続可能性向上が期待できるでしょう。そのために、技術革新、政策支援、多国間協力の三本柱を基軸とした戦略が不可欠です。