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パラグアイの羊の毛生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、パラグアイの羊の毛生産量は長期的に見ると1960年代から増加傾向にあり、特に1991年の1,058トンや2008年の1,200トンが高いピークを示しています。しかし、2016年以降は急激に減少し、2022年には603トンと過去のピーク時から半減しました。気候的要因、地政学的リスク、農業政策の影響がこの変動に関与していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 623
3.36% ↑
2022年 603
-4.89% ↓
2021年 634
-8.06% ↓
2020年 689
4.4% ↑
2019年 660
10% ↑
2018年 600
-3.23% ↓
2017年 620
-29.6% ↓
2016年 881
-18.64% ↓
2015年 1,083
0.61% ↑
2014年 1,076
-0.44% ↓
2013年 1,081
0.68% ↑
2012年 1,073
7.34% ↑
2011年 1,000
-5.97% ↓
2010年 1,064
0.15% ↑
2009年 1,062
-11.5% ↓
2008年 1,200
15.54% ↑
2007年 1,039
-5.58% ↓
2006年 1,100
9.11% ↑
2005年 1,008
-3.98% ↓
2004年 1,050
21.39% ↑
2003年 865
0.58% ↑
2002年 860
1.18% ↑
2001年 850
21.6% ↑
2000年 699
-18.16% ↓
1999年 854
0.48% ↑
1998年 850
0.59% ↑
1997年 845
-0.35% ↓
1996年 848
0.59% ↑
1995年 843
1.32% ↑
1994年 832
2.09% ↑
1993年 815
3.95% ↑
1992年 784
-25.9% ↓
1991年 1,058
46.74% ↑
1990年 721
1.55% ↑
1989年 710
1.43% ↑
1988年 700
7.03% ↑
1987年 654
2.19% ↑
1986年 640
1.59% ↑
1985年 630
3.28% ↑
1984年 610
0.83% ↑
1983年 605
33.55% ↑
1982年 453
-11.87% ↓
1981年 514
5.76% ↑
1980年 486
5.65% ↑
1979年 460
5.75% ↑
1978年 435
3.08% ↑
1977年 422
2.93% ↑
1976年 410
5.13% ↑
1975年 390
5.41% ↑
1974年 370
2.78% ↑
1973年 360
2.86% ↑
1972年 350
6.06% ↑
1971年 330
-0.6% ↓
1970年 332
-3.21% ↓
1969年 343
0.88% ↑
1968年 340
-1.45% ↓
1967年 345 -
1966年 345
23.21% ↑
1965年 280 -
1964年 280
12% ↑
1963年 250 -
1962年 250
-16.67% ↓
1961年 300 -

1960年代から2020年代までのパラグアイにおける羊の毛生産量の推移を見ると、長期的には著しい増加の傾向が見られます。1960年代の時点では年平均300トン前後の安定した生産量が維持されていました。その後、1970年代以降、農業技術の向上や家畜飼育の最適化が進展したことで徐々に増産が進み、1980年代には500トンを超えました。1991年に初めて1,000トンを突破し、2008年の1,200トンは過去最高記録として特筆すべき年でした。

しかし、この成長傾向は2016年を境に急激に変化しました。生産量が881トンに急落した結果、その後も600~700トン程度の低迷状態が続いています。2022年の603トンという数値は、近年の生産の縮小を如実に表しています。この減少傾向の背景にはいくつかの要因が考えられます。

まず、気候変動がパラグアイの羊毛生産に与える影響が大きいとされています。パラグアイは亜熱帯性気候地域に位置しており、近年の気温上昇や降雨パターンの変化が農牧業に悪影響を及ぼしている可能性があります。特に羊に適した牧草地の品質低下や水資源不足が、家畜の健康と毛質に悪影響を及ぼしていると考えられます。

また地政学的な背景も見逃せません。パラグアイは大西洋通商圏における農業商品の輸出国ですが、隣国との貿易協定や政治的緊張が輸出経路に影響を及ぼすことがあります。特に羊毛市場ではアルゼンチンやブラジルなどの強力な生産国と競合しているため、貿易摩擦や価格競争の影響で採算が悪化する可能性があります。

さらに、国内農牧業政策や技術向上の停滞も重要な課題です。他の農業セクターに比べて羊毛生産は政策支援が少なく、近年では飼育者の高齢化や次世代の就業者不足が問題となっています。これに加え、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる需要の減少も、近年の生産量減少に一定の影響を与えています。

この現状を受けて、未来の課題と対策を挙げますと、まずは気候変動に対応した牧草地の管理技術や持続可能な飼育法の導入が急務です。具体的には、乾燥や高温に耐えうる牧草品種の活用や、効率的な水資源管理技術の普及が考えられます。同時に、国内外での羊毛市場の需要を喚起し、輸出先の多様化を図るための国際協力が必要です。例えば、南米地域全体での協力体制を強化し、輸送コストの削減や品質基準の統一を進めることで競争力を向上させることが期待されます。

結論として、パラグアイの羊毛生産量は、過去の輝かしい成長期から近年の低迷期へと変化していますが、適切な政策や技術導入によって、環境や市場の変化に対応することが可能です。政府や国際機関、地域の農牧業関係者が協力し合い、多面的な意味でのサステナビリティ(持続可能性)を実現することが、業界の再興に必要不可欠です。