FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、レソトの羊の毛生産量は1960年代には4,000トン台を維持していましたが、1970年代以降、大幅に減少し、1980年代半ばには2,000~3,000トンの間で変動を続けました。その後、1990年代には再び一時的に増加したものの、2000年代以降はおおむね3,000トン前後で安定傾向にあります。近年では3,600トン台でほぼ横ばい状態が続いています。このデータは、羊毛産業の長期的な変遷と、経済・気候・地政学的要因が生産に与える影響を示しています。
レソトの羊の毛生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 3,614 |
-0.21% ↓
|
2022年 | 3,622 |
-0.15% ↓
|
2021年 | 3,627 |
-0.15% ↓
|
2020年 | 3,633 |
-0.41% ↓
|
2019年 | 3,647 |
-0.38% ↓
|
2018年 | 3,661 |
-0.9% ↓
|
2017年 | 3,695 |
0.07% ↑
|
2016年 | 3,692 |
0.06% ↑
|
2015年 | 3,690 |
0.98% ↑
|
2014年 | 3,654 |
-3.47% ↓
|
2012年 | 3,785 |
-5.37% ↓
|
2011年 | 4,000 |
5.62% ↑
|
2010年 | 3,787 |
-2.89% ↓
|
2009年 | 3,900 |
-13.33% ↓
|
2008年 | 4,500 |
16.88% ↑
|
2007年 | 3,850 |
-1.28% ↓
|
2006年 | 3,900 |
2.63% ↑
|
2005年 | 3,800 |
22.58% ↑
|
2004年 | 3,100 |
10.71% ↑
|
2003年 | 2,800 |
-11.39% ↓
|
2002年 | 3,160 |
1.15% ↑
|
2001年 | 3,124 |
20.15% ↑
|
2000年 | 2,600 |
1.96% ↑
|
1999年 | 2,550 |
6.25% ↑
|
1998年 | 2,400 |
-31.43% ↓
|
1997年 | 3,500 |
6.06% ↑
|
1996年 | 3,300 |
-35.29% ↓
|
1995年 | 5,100 |
23.25% ↑
|
1994年 | 4,138 |
0.51% ↑
|
1993年 | 4,117 |
-17.67% ↓
|
1992年 | 5,000 |
68.12% ↑
|
1991年 | 2,974 |
-5.38% ↓
|
1990年 | 3,143 |
30.85% ↑
|
1989年 | 2,402 |
43.75% ↑
|
1988年 | 1,671 |
-46.83% ↓
|
1987年 | 3,143 |
-7.83% ↓
|
1986年 | 3,410 |
7.84% ↑
|
1985年 | 3,162 |
0.54% ↑
|
1984年 | 3,145 |
7.19% ↑
|
1983年 | 2,934 |
9.07% ↑
|
1982年 | 2,690 |
1.01% ↑
|
1981年 | 2,663 |
7.94% ↑
|
1980年 | 2,467 |
0.94% ↑
|
1979年 | 2,444 |
2.17% ↑
|
1978年 | 2,392 | - |
1977年 | 2,392 |
13.9% ↑
|
1976年 | 2,100 |
-8.7% ↓
|
1975年 | 2,300 |
-23.21% ↓
|
1974年 | 2,995 |
-16.83% ↓
|
1973年 | 3,601 |
14.97% ↑
|
1972年 | 3,132 |
-23.29% ↓
|
1971年 | 4,083 |
-11.24% ↓
|
1970年 | 4,600 | - |
1969年 | 4,600 |
4.55% ↑
|
1968年 | 4,400 |
2.33% ↑
|
1967年 | 4,300 | - |
1966年 | 4,300 |
13.16% ↑
|
1965年 | 3,800 |
-10.04% ↓
|
1964年 | 4,224 |
-1.63% ↓
|
1963年 | 4,294 |
-0.23% ↓
|
1962年 | 4,304 |
16.89% ↑
|
1961年 | 3,682 | - |
レソトはその地理的条件と自然環境から、長らく羊毛の生産が経済活動の重要な柱として位置づけられてきました。特に、1960年代には羊の毛生産量が毎年4,000トン前後で推移し、この小国の対外輸出品目の中核を担う存在として注目されました。しかし、1970年代半ば以降、羊毛生産量が急激に減少していることがデータから確認できます。この背景には、大規模な干ばつ、過剰放牧による土地劣化、そして国際市場の価格変動が複合的に影響を与えた可能性が高いと考えられます。
1980年代に入ると、生産量は2,000トン台から3,000トン台の範囲で変動する時期が続きます。この間、レソト国内では農業政策の変遷や地域紛争の影響が牧畜業全体に影響を与えました。また、レソトは南アフリカに完全に囲まれた内陸国であり、南アフリカとの貿易関係や国境管理の変化が物資輸送や市場開拓に影響を及ぼしたことも、生産の低迷を引き起こす一因となっていると考えられます。
1990年代の一部の年には、生産量が一時的に5,000トンを超えるなど、一定の回復傾向も見られました。この時期の増加は、政策的な支援や国際市場需要の拡大に対応したと考えられます。しかし、その勢いは続かず、2000年代に入ってからは再び3,000トン前後で安定する状況が続きます。特に2018年以降のデータを見てみると、毎年わずかな減少傾向が続いていますが、大きな変動はなく、3,600トン台が維持されています。
未来へ向けた主な課題としては、まず環境問題への対策が挙げられます。過剰放牧が進行することで、土地の砂漠化がさらに広がるリスクがあります。これを防ぐために、放牧地の輪作管理や植樹活動の推進といった持続可能な農牧業政策の導入が不可欠です。また、気候変動の進行による異常気象が、特に干ばつを通じて家畜資源に深刻な影響を及ぼす可能性もあります。このため、雨水の効率的な管理や耐久性の高い牧草種の導入が効果的な対策となるでしょう。
さらに、国際市場における競争力強化も重要な課題です。中国、オーストラリア、ニュージーランド等の主要羊毛生産国と比較すると、レソトの生産量はごく限られたものであるため、高品質なニッチ市場への特化が有効と考えられます。具体的には、羊毛の品質向上を目指した品種改良や、地元コミュニティによる付加価値製品(例えば高級ウール製品や手工芸品)の生産促進が挙げられます。
地政学的な視点から見ると、レソトはその地形的制約のため、輸送インフラの整備が未熟な状態にあります。このことは、国際市場への輸出促進を難しくしている要因の一つです。南アフリカとの経済協力を強化し、物流経路の改善や市場アクセスの拡大を図ることは、羊毛産業だけでなく、全体的な経済発展にも寄与する可能性があります。
結論として、レソトにおける羊の毛生産量の推移は、単なる量の増減だけでなく、環境問題、経済政策、地政学的課題の複合的な影響を示しています。今後は持続可能な生産体制の確立、高付加価値化、そして国際市場での競争力向上を目指すべきです。このために国や国際機関が果たすべき役割は大きく、技術支援やインフラ整備、貿易促進のための連携が鍵となります。持続可能な未来を築くために、政策とコミュニティの協働が重要と言えるでしょう。