国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、タンザニア連合共和国の羊の毛生産量は1960年代から2022年まで安定的に推移しており、大きな成長を遂げています。1961年から1970年代までは年間2,850~3,800トン程の幅で推移し、2000年代以降急激に増加し、近年の2022年には7,712トンを記録しました。この流れには、農業や畜産技術の向上、国内外市場の需要増加などが影響していると考えられます。
タンザニア連合共和国の羊の毛生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 7,712 |
2021年 | 7,567 |
2020年 | 7,767 |
2019年 | 7,654 |
2018年 | 7,270 |
2017年 | 7,264 |
2016年 | 7,198 |
2015年 | 7,970 |
2014年 | 6,824 |
2013年 | 6,800 |
2012年 | 6,800 |
2011年 | 6,750 |
2010年 | 6,322 |
2009年 | 5,630 |
2008年 | 4,984 |
2007年 | 4,375 |
2006年 | 3,800 |
2005年 | 3,780 |
2004年 | 3,807 |
2003年 | 3,820 |
2002年 | 3,853 |
2001年 | 3,800 |
2000年 | 3,803 |
1999年 | 3,783 |
1998年 | 3,769 |
1997年 | 3,759 |
1996年 | 3,750 |
1995年 | 3,738 |
1994年 | 3,725 |
1993年 | 3,707 |
1992年 | 3,700 |
1991年 | 3,635 |
1990年 | 3,600 |
1989年 | 3,500 |
1988年 | 3,500 |
1987年 | 3,500 |
1986年 | 3,500 |
1985年 | 3,500 |
1984年 | 3,100 |
1983年 | 3,900 |
1982年 | 3,850 |
1981年 | 3,800 |
1980年 | 3,800 |
1979年 | 3,700 |
1978年 | 3,650 |
1977年 | 3,600 |
1976年 | 3,500 |
1975年 | 3,400 |
1974年 | 3,400 |
1973年 | 3,300 |
1972年 | 2,850 |
1971年 | 2,850 |
1970年 | 2,850 |
1969年 | 2,850 |
1968年 | 2,850 |
1967年 | 2,850 |
1966年 | 2,850 |
1965年 | 2,850 |
1964年 | 2,750 |
1963年 | 3,000 |
1962年 | 3,000 |
1961年 | 3,000 |
タンザニア連合共和国は羊毛生産の歴史が長く、長期にわたり安定した生産を維持してきました。1960年代初期の生産量は年間3,000トンでしたが、その後1970年代はわずかに減少して約2,850~3,300トン付近で安定して推移しました。この期間には、地域の干ばつや農業資源へのアクセス改善が課題であった可能性があります。一方で、同時期の日本や韓国、中国のような急成長を遂げた国々と比べ、畜産分野への技術革新や設備投資の進み具合は遅れを取っている状況でした。
1980年代以降のデータを見ると、羊の毛生産量は徐々に増加基調となり、2000年代には約3,800トンから始まり、2010年には6,322トンまで拡大しました。この間、畜産における国際市場の需要の高まりや、生活水準の向上が重要な要因として挙げられます。2007年から2009年にかけては約4,375トンから5,630トンと大幅な増加傾向が見られましたが、この急拡大は畜産業への政府支援や外部からの投資誘導が寄与したと推測されます。
さらに、2015年以降のデータでは、生産量が7,970トンに到達した一方、2016年と2017年には若干の落ち込みがありました。これには天候不順や地域的な疫病の流行が影響した可能性があり、このようなリスクは羊毛生産への安定的供給に今後も影響を及ぼしうる重要な課題です。2020年以降には再び回復傾向が見られ、2022年には7,712トンを記録しましたが、同時に環境変動や地政学的な不安定要因、特に周辺地域の紛争による影響が懸念されます。
タンザニアにおける羊の毛生産量の増加の主な要因として、以下が考えられます。まず、政府による農畜産業への支援と、農村コミュニティにおける技術導入が生産性向上の鍵となりました。これに加え、国際市場における羊毛需要の高まりがタンザニアの輸出市場拡大を後押ししました。しかし、中国やインドなどの大規模な生産国と比較すると、競争力強化の余地はまだあります。これらの国々は、生産管理の効率化やクオリティ向上で先行しているため、タンザニアにとっても教訓とすべき領域です。
未来を見据えると、まずは持続可能な生産体制を整えることが重要です。気候変動への適応手段として家畜の飼料管理や、地域での水供給インフラの強化を進めるべきです。また、羊毛の付加価値を高めるための加工産業への投資や国内外市場へのアクセス強化が必要です。さらに、地政学的リスクに備えた地域間協力の構築や疫病・自然災害対策として、広域的な早期警戒システムの導入が推奨されます。
結論として、タンザニアは羊毛生産の歴史と潜在能力を生かしつつ、課題に取り組むことで世界市場での競争力を高めることが可能です。国としての努力と国際的な協力が進めば、さらなる成長が期待できる分野と言えるでしょう。