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サウジアラビアの羊の毛生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、サウジアラビアの羊の毛生産量は1961年の1,765トンから2022年の14,374トンに増加しています。全期間を通じて着実な増加傾向を示していますが、特定の年には急激な増減が見られます。特に1982年や2013年に顕著なピークを記録し、その後は安定からやや緩やかな変動へと移行しました。近年は13,000~14,000トン台で推移しており、過去に比べて成長が穏やかになっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 14,195
-1.25% ↓
2022年 14,374
0.97% ↑
2021年 14,236
1.03% ↑
2020年 14,091
3.75% ↑
2019年 13,581
3.58% ↑
2018年 13,112
-5.43% ↓
2017年 13,865
1.27% ↑
2016年 13,690
16.76% ↑
2015年 11,725
-2.66% ↓
2014年 12,045
-30.37% ↓
2013年 17,300
13.82% ↑
2012年 15,200
0.66% ↑
2011年 15,100
15.27% ↑
2010年 13,100
45.56% ↑
2009年 9,000
-14.29% ↓
2008年 10,500
-12.5% ↓
2007年 12,000 -
2006年 12,000
-4% ↓
2005年 12,500
5.93% ↑
2004年 11,800
9.26% ↑
2003年 10,800
1.89% ↑
2002年 10,600
0.95% ↑
2001年 10,500
5% ↑
2000年 10,000
2.04% ↑
1999年 9,800
1.26% ↑
1998年 9,678
0.82% ↑
1997年 9,600
-4% ↓
1996年 10,000
9.89% ↑
1995年 9,100
1.11% ↑
1994年 9,000
13.92% ↑
1993年 7,900
3.95% ↑
1992年 7,600
3.06% ↑
1991年 7,374
5.34% ↑
1990年 7,000
13.4% ↑
1989年 6,173
-0.34% ↓
1988年 6,194
-9.07% ↓
1987年 6,812
-6.33% ↓
1986年 7,272
8.8% ↑
1985年 6,684
-3.69% ↓
1984年 6,940
-0.13% ↓
1983年 6,949
18.64% ↑
1982年 5,857
50.53% ↑
1981年 3,891
-8.38% ↓
1980年 4,247
6.68% ↑
1979年 3,981
2.42% ↑
1978年 3,887
18.87% ↑
1977年 3,270
1.24% ↑
1976年 3,230
4.43% ↑
1975年 3,093
8.91% ↑
1974年 2,840
7.7% ↑
1973年 2,637
4.02% ↑
1972年 2,535
3.89% ↑
1971年 2,440
4.05% ↑
1970年 2,345
3.99% ↑
1969年 2,255
4.16% ↑
1968年 2,165
2.85% ↑
1967年 2,105
2.93% ↑
1966年 2,045
3.02% ↑
1965年 1,985
3.12% ↑
1964年 1,925
2.94% ↑
1963年 1,870
3.03% ↑
1962年 1,815
2.83% ↑
1961年 1,765 -

データを詳しく分析すると、1960年代から2010年代にかけて、サウジアラビアの羊毛生産量は全体として増加してきたことが確認できます。初期の1,765トン(1961年)からスタートし、1970年代には2,000トン台後半~3,000トン台と成長の勢いを見せています。この時期の増加は、農業技術の改善や牧畜業の強化が影響した可能性があります。また、1970年代後半以降の石油経済の発展も間接的に農業や牧畜業への資本投資を後押ししたと考えられます。

しかし、目立つ変化として、1982年から1983年にかけて顕著な生産量の急増(5,857トンから6,949トン)が記録されています。その背景には、政策上の支援や国際市場の需要拡大が影響した可能性があります。一方、1980年代後半から1990年代半ばは比較的緩やかな波を描いており、気候条件や地政学的な要因、さらには湾岸戦争などの地域情勢が間接的に影響していることが推測されます。

2000年代に入ると、10,000トンを超える安定成長の時期を迎えます。この時期、政府による農牧業の助成金支出や、水資源利用の効率化、新しい育種技術が貢献した可能性があります。特に2011年以降の15,000トン台への突然の伸びは、新たな資源開発の一環や国内消費分の需要増加に対応した結果と考えられます。ただし2014年以降、再び不安定な動きが見られるようになり、特に15,200トン(2012年)から12,045トン(2014年)への急減は、世界的な市場動向や気候変動に起因していると推察されます。

また、近年の生産量(2018年以降)は、緩やかな安定化の兆しを見せつつ、サウジアラビアとしては依然として高い生産量を維持しています。これは、国内外の需要を満たしつつ、羊毛業界の技術基盤が一定の成熟を見せていることを示唆しています。一方で、新型コロナウイルスの影響により2020年前後に牧畜業のオペレーションや輸送の制約が発生し、一部地域でロジスティクス上の課題があった可能性も否定できません。

今後の課題として、まず気候変動が挙げられます。サウジアラビアは乾燥地域に位置するため、牧草地や水資源の確保が困難になれば、生産量の維持が難しくなる可能性があります。このため持続可能な水利用技術や牧草代替品の研究が急務です。また、国際市場の価格動向や地政学的リスクも大きな影響を与えます。特に中東地域の緊迫した状況が、輸出ルートや生産活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、2030年に向けた「サウジアラビアビジョン2030」に合わせて、農牧業を多様化し、付加価値の高い製品、例えば毛織物産業や高品質の羊毛製品の生産を推進することが提案されます。これは雇用創出と地域経済のさらなる発展につながるでしょう。他にも、環境適応型牧畜モデルの導入や、国際機関との連携による専門知識の共有が有望です。

結論として、サウジアラビアの羊毛生産は、歴史的に見ると確実な成長を遂げてきたものの、今後の持続可能性や市場変動への対応が重要です。これを達成するためには、農牧業の革新や技術的な工夫、地域協力の強化が鍵となるでしょう。