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モンテネグロの羊の毛生産量推移(1961-2022)

モンテネグロの羊の毛生産量は、2006年には346トンであったものの、長期的な視点で見ると全体として減少傾向にあります。2008年から2014年にかけて大きく減少し、2014年の238トンを最低値として以降は小幅な変動が続いています。最近のデータでも減少幅はやや緩やかになりつつありますが、2022年時点において240トンに留まり、過去の水準を大きく下回る水準が続いています。

年度 生産量(トン)
2022年 240
2021年 244
2020年 243
2019年 240
2018年 250
2017年 250
2016年 254
2015年 254
2014年 238
2013年 310
2012年 275
2011年 260
2010年 274
2009年 296
2008年 289
2007年 346
2006年 346

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、モンテネグロの羊の毛生産量は2006年から2022年の間に長期的に減少しています。2006年の346トンはピークの水準でしたが、それ以降のデータではほぼ一貫して生産量が低下しており、2022年には240トンとピーク時の約70%に落ち込んでいます。このような長期的な生産量減少の背景には、羊の飼育頭数の減少、需給動向の変化、農村部から都市部への人口移動、また気候変動など複数の要因が影響していると考えられます。

モンテネグロは、地中海性気候と山岳地帯に恵まれた環境を活かして羊毛生産を行ってきましたが、その持続可能性には課題が見られます。特に注目すべきは、2008年から2014年の間で生産量が急激に減少した点で、その原因としては欧州内での金融危機や、それに伴う農業資金の減少、羊毛価格の下落が挙げられます。また、小規模農家の高齢化や後継者不足が、家畜飼育継続の課題として浮上していることも無視できません。

生産量の減少はモンテネグロ国内だけでなく、世界市場や近隣諸国への羊毛供給にも影響を及ぼしています。他の国と比較してみると、例えば同じヨーロッパ地域では、フランスやドイツなどの大規模な羊毛生産国は効率的な大規模農場によって生産量を維持しています。一方で、モンテネグロのような小規模で伝統的な方法に依存する国は、これらの競争において不利な立場に置かれています。この点では、羊毛需要の減少も、モンテネグロの生産者にとって経済的な圧力として作用している可能性があります。

しかしながら、近年のデータを見ると、生産量の減少ペースは2014年以降緩やかになっています。例えば、2020年以降はおおむね240トン前後で安定しており、減少傾向が一定程度止まっていることが示されています。ただし、これは必ずしも生産構造が改善されていることを示しているわけではなく、むしろ底に達した可能性を意味しているとも言えます。

未来を見据えた場合、羊毛生産量減少への対応としていくつかの方策が考えられます。まず、羊飼育に従事する若年層の育成を目的とした奨励金の提供や、牧畜業における持続可能な技術の導入が必要です。また、モンテネグロ国内での付加価値を高めるため、羊毛を原料とした地元産品のブランド化や輸出促進も有望な選択肢です。さらに、気候変動に備えた対策として、飼育環境の改善や土地利用計画の見直しも進める必要があります。

地政学的な背景では、モンテネグロはバルカン半島に位置し、その経済は近隣諸国との貿易に依存しています。仮に地域的な紛争や経済的リスクが高まれば、羊毛生産と輸出にも影響を及ぼす可能性があるでしょう。そのため、地域協力の強化や欧州連合(EU)との連携を進めることが鍵となります。

結論として、羊の毛生産量推移データはモンテネグロにおける農牧業の持続可能性に課題があることを浮き彫りにしています。国際市場での競争力を高めるため、技術革新と政策介入の強化が急務です。同時に、地域協力や気候変動への適応戦略を進めることがモンテネグロ農業の中長期的な発展において重要な柱となるでしょう。