Skip to main content

チリの羊の毛生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国連食糧農業機関)が発表した最新データによると、チリの羊の毛生産量は1961年に22,000トンを記録しました。その後、1960年代後半にかけて徐々に増加しましたが、1970年代以降は減少傾向が顕著で、2022年には6,626トンと過去60年間で最低の水準にまで減少しています。この推移は、国内の生産体制や国際市場、環境の変化や紛争などの地政学的背景と密接に関係していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 6,316
-4.68% ↓
2022年 6,626
-2.51% ↓
2021年 6,797
-2.76% ↓
2020年 6,990
-1.06% ↓
2019年 7,065
1.8% ↑
2018年 6,940
-4.12% ↓
2017年 7,238
-3.02% ↓
2016年 7,464
6.77% ↑
2015年 6,991
-6.97% ↓
2014年 7,514
-4.71% ↓
2013年 7,886
-1.43% ↓
2012年 8,000
2.46% ↑
2011年 7,808 -
2010年 7,808
-9.68% ↓
2009年 8,645
-7.87% ↓
2008年 9,384
-5.54% ↓
2007年 9,934
-3.24% ↓
2006年 10,267
-0.32% ↓
2005年 10,300
-12.57% ↓
2004年 11,781
-9.38% ↓
2003年 13,000
-7.14% ↓
2002年 14,000
-3.45% ↓
2001年 14,500
-14.71% ↓
2000年 17,000
1.8% ↑
1999年 16,700
9.15% ↑
1998年 15,300
-1.92% ↓
1997年 15,600
-15.68% ↓
1996年 18,500
-2.63% ↓
1995年 19,000
-0.32% ↓
1994年 19,061
0.45% ↑
1993年 18,976
15.71% ↑
1992年 16,400
-2.38% ↓
1991年 16,800
-1.75% ↓
1990年 17,100
3.01% ↑
1989年 16,600
-15.31% ↓
1988年 19,600
-2.49% ↓
1987年 20,100
-1.95% ↓
1986年 20,500
-0.49% ↓
1985年 20,600
-3.74% ↓
1984年 21,400 -
1983年 21,400
-1.83% ↓
1982年 21,800
0.93% ↑
1981年 21,600
4.85% ↑
1980年 20,600
5.1% ↑
1979年 19,600
2.54% ↑
1978年 19,115
1.64% ↑
1977年 18,806
1.64% ↑
1976年 18,502
-1.56% ↓
1975年 18,795
2.74% ↑
1974年 18,294
3.55% ↑
1973年 17,666
-3.19% ↓
1972年 18,248
-6.42% ↓
1971年 19,500
-3.47% ↓
1970年 20,200
-19.84% ↓
1969年 25,200
5.88% ↑
1968年 23,800
-10.19% ↓
1967年 26,500
3.11% ↑
1966年 25,700
8.9% ↑
1965年 23,600
2.16% ↑
1964年 23,100
5% ↑
1963年 22,000 -
1962年 22,000 -
1961年 22,000 -

チリの羊の毛生産量の推移は、約60年にわたり大きな変化を遂げてきました。1960年代には22,000トン台を維持した後、1966年には25,700トンとピークを迎えました。しかし、その後は一定の増減を繰り返しながら、1970年代には20,000トン前後、1980年代後半にはさらに減少して16,600トンを記録しています。この減少傾向は、国際的な市場動向やチリ国内の農業政策の変化、さらには羊毛の国際的な需要が合織繊維に取って代わられ、低迷したことが影響していると考えられます。

1990年代以降、チリの羊毛生産量はさらなる縮小を見せ、特に2000年代後半から顕著な値下がりが始まりました。2001年には14,500トンとなり、2010年には7,808トン、2022年には6,626トンと、半世紀前の生産量と比較して約70%以上の縮小が確認されます。この大幅な減少は、地球温暖化による牧草地の変質や羊の数の減少、また農地転用による牧畜面積の縮小に直結しています。

一方、同じ羊毛生産国である中国やオーストラリアの状況を見てみると、これらの国は依然として世界的な羊毛の主要輸出国として安定した生産基盤を保っています。特にオーストラリアは品質と量の両面で世界的な評価を受けており、チリの生産体制とは対照的です。この背景には、安定した農業支援政策や技術の進展、そして国際市場への柔軟な対応が挙げられます。

チリ国内に目を向けると、羊毛生産の縮小は、地元コミュニティの収入減少や農村経済の衰退を招き、持続可能な農業発展の観点からも懸念材料となっています。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により、人手不足や出荷遅延が発生し、さらなる生産減少が加速しています。同時に、地球温暖化が進む中での降水量の変化や牧草地の劣化も、この現象を助長しています。

この問題に対処するためには、いくつかの具体的な施策が提案されます。まず、農業従事者に対して専門的な技術指導を提供し、生産効率を向上させる教育政策が必要です。また、牧草地の回復と土地利用の最適化を目指した環境保全プロジェクトを推進することが求められます。さらに、国際市場の動向を見据え、羊毛を活用した地元特産品のブランド化を図り、付加価値を高めることも重要な課題です。

地政学的な視点からは、チリの羊毛産業に影響を与えている国際競争や貿易関係を理解し、新たな輸出先の開拓やサプライチェーンの適応力を高める施策も欠かせません。これは、単なる生産量の回復にとどまらず、チリの羊毛産業の国際的なポジションを強化するうえでの要と考えられます。

総じて、チリの羊の毛生産量の減少は、ただの農業生産データの一側面ではなく、環境問題や地域社会の発展、そして国際市場戦略の一端を映し出すデータとして重要です。今後、国や国際機関が連携して、地域特有の課題に応じた包括的な政策を実施することが求められるでしょう。