2010年の世界の羊の毛生産量ランキングデータによると、1位は中国で386,768トン、2位はオーストラリアで349,788トン、3位はニュージーランドで176,300トンでした。この三カ国で世界全体の羊毛生産量の大半を占め、特に中国が他国を引き離すトップの生産量を記録しています。また、上位10カ国中ではイギリスやイランなど比較的生産量が均一な構成となっています。一方、日本はデータに登場しておらず、羊毛生産の規模が著しく小さいことが示唆されます。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
アジア | 386,768 |
| 2 |
|
オセアニア | 349,788 |
| 3 |
|
オセアニア | 176,300 |
| 4 |
|
ヨーロッパ | 67,000 |
| 5 |
|
アジア | 63,828 |
| 6 |
|
南アメリカ | 54,000 |
| 7 |
|
アフリカ | 53,938 |
| 8 |
|
ヨーロッパ | 53,521 |
| 9 |
|
アフリカ | 43,489 |
| 10 |
|
アジア | 42,991 |
| 11 |
|
アジア | 42,823 |
| 12 |
|
アジア | 42,000 |
| 13 |
|
アジア | 38,000 |
| 14 |
|
アジア | 37,635 |
| 15 |
|
南アメリカ | 34,700 |
| 16 |
|
アジア | 30,750 |
| 17 |
|
アジア | 26,510 |
| 18 |
|
アフリカ | 26,119 |
| 19 |
|
ヨーロッパ | 22,688 |
| 20 |
|
ヨーロッパ | 20,457 |
| 21 |
|
アジア | 18,670 |
| 22 |
|
アジア | 16,977 |
| 23 |
|
アジア | 15,900 |
| 24 |
|
アジア | 15,621 |
| 25 |
|
アジア | 15,000 |
| 26 |
|
ヨーロッパ | 14,000 |
| 27 |
|
ヨーロッパ | 14,000 |
| 28 |
|
北アメリカ | 13,776 |
| 29 |
|
アジア | 13,100 |
| 30 |
|
ヨーロッパ | 12,800 |
| 31 |
|
南アメリカ | 11,646 |
| 32 |
|
アフリカ | 11,059 |
| 33 |
|
アジア | 10,857 |
| 34 |
|
アフリカ | 10,352 |
| 35 |
|
南アメリカ | 10,218 |
| 36 |
|
アフリカ | 9,357 |
| 37 |
|
ヨーロッパ | 8,939 |
| 38 |
|
アフリカ | 8,000 |
| 39 |
|
南アメリカ | 7,808 |
| 40 |
|
アジア | 7,693 |
| 41 |
|
ヨーロッパ | 7,600 |
| 42 |
|
アジア | 6,860 |
| 43 |
|
アフリカ | 6,322 |
| 44 |
|
ヨーロッパ | 6,292 |
| 45 |
|
アジア | 5,771 |
| 46 |
|
南アメリカ | 4,683 |
| 47 |
|
ヨーロッパ | 4,368 |
| 48 |
|
ヨーロッパ | 4,192 |
| 49 |
|
ヨーロッパ | 4,070 |
| 50 |
|
南アメリカ | 4,000 |
| 51 |
|
アフリカ | 3,787 |
| 52 |
|
ヨーロッパ | 3,300 |
| 53 |
|
ヨーロッパ | 3,058 |
| 54 |
|
ヨーロッパ | 2,700 |
| 55 |
|
ヨーロッパ | 2,461 |
| 56 |
|
アジア | 2,200 |
| 57 |
|
アジア | 2,192 |
| 58 |
|
ヨーロッパ | 2,067 |
| 59 |
|
アフリカ | 2,042 |
| 60 |
|
アフリカ | 1,900 |
| 61 |
|
南アメリカ | 1,801 |
| 62 |
|
アジア | 1,700 |
| 63 |
|
南アメリカ | 1,654 |
| 64 |
|
アフリカ | 1,645 |
| 65 |
|
ヨーロッパ | 1,382 |
| 66 |
|
北アメリカ | 1,262 |
| 67 |
|
アジア | 1,188 |
| 68 |
|
アフリカ | 1,150 |
| 69 |
|
南アメリカ | 1,064 |
| 70 |
|
ヨーロッパ | 1,025 |
| 71 |
|
アジア | 1,000 |
| 72 |
|
ヨーロッパ | 900 |
| 73 |
|
ヨーロッパ | 849 |
| 74 |
|
ヨーロッパ | 774 |
| 75 |
|
ヨーロッパ | 737 |
| 76 |
|
ヨーロッパ | 620 |
| 77 |
|
アジア | 579 |
| 78 |
|
ヨーロッパ | 563 |
| 79 |
|
アジア | 550 |
| 80 |
|
アジア | 475 |
| 81 |
|
アフリカ | 346 |
| 82 |
|
ヨーロッパ | 320 |
| 83 |
|
ヨーロッパ | 274 |
| 84 |
|
アジア | 203 |
| 85 |
|
ヨーロッパ | 188 |
| 86 |
|
ヨーロッパ | 180 |
| 87 |
|
ヨーロッパ | 170 |
| 88 |
|
アジア | 161 |
| 89 |
|
ヨーロッパ | 154 |
| 90 |
|
ヨーロッパ | 150 |
| 91 |
|
ヨーロッパ | 109 |
| 92 |
|
ヨーロッパ | 84 |
| 93 |
|
ヨーロッパ | 84 |
| 94 |
|
ヨーロッパ | 69 |
| 95 |
|
ヨーロッパ | 10 |
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国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータに基づく2010年の羊の毛生産量ランキングは、農業と産業の両方の観点から非常に興味深い内容を提供しています。最多生産国である中国は、386,768トンという膨大な量を記録しており、これは主に中国の広大な農地、豊富な労働力、国内および国外市場への積極的な供給体制が背景にあります。次いでオーストラリアとニュージーランドがランクインしています。これらの国々は、羊毛の品質の高さでも知られ、とりわけオーストラリアのメリノウールは世界市場で主要な輸出品となっています。
羊毛生産は、主に温暖で乾燥した地域に適した牧畜方式に依存しています。これは地理的条件が生産量に大きな影響を与える産業であることを示しており、ランキング上位国もこのような条件を有する国が多い点が特徴です。同時に、アフリカのモロッコや南アフリカ、中央アジアのトルクメニスタンやカザフスタンなどの地域もランクインしており、それぞれ独自の地理的特性を活かして生産を続けています。一方、アメリカやヨーロッパ各国においては、羊肉生産の副産物として扱われる場合も多いため、羊毛生産量は比較的少量に留まっています。
しかし、このデータにはいくつかの課題も浮き彫りになります。特に、中国やオーストラリアのような大規模生産国に依存する市場構造は、気候変動や地政学的リスクの影響を受けやすいという弱点を抱えています。もしこれらの国で干ばつや疫病などが発生した場合、羊毛生産量が急減し、世界全体の供給に大きな影響を及ぼすことが予想されます。さらに、労働力不足や牧草地の減少といった構造的な問題が生産性に与える影響も見逃せません。特に先進国においては、牧畜産業の労働人口の高齢化が深刻化しています。
こうした課題に対し、国際的な協力と共通政策の構築が重要です。例えば、耐乾燥性に優れた新種の羊の開発や牧草地の効率的な管理を進めるための技術協力は、安定的な生産量を確保する意味で有望です。同時に、地域的な生産量の少ない国々や新興国の技術力やインフラを改善することで、生産地の多様性を拡大し、需給バランスの是正に寄与することが期待できます。加えて、気候変動の影響を緩和するため、再生可能エネルギーを活用した牧畜業への転換や、二酸化炭素排出削減を目指した政策の強化も必須です。
そして日本を含むアジア諸国では、羊毛生産そのものよりも輸入による消費が主流となっていますが、今後は自然素材としての羊毛の魅力をより広くアピールし、国内市場の需要をさらに喚起することが重要です。また、ファッション業界における持続可能性をめぐる潮流の中で、羊毛のサステナブルな価値を活用することで、付加価値を高める余地も残されています。
この報告を踏まえると、ヒトと自然環境の調和を重視した産業政策が、羊毛業界全体の発展において不可欠です。国際機関を中心に、耐性のある生産環境の構築や市場の安定化を図る取り組みが必要です。特に国際市場を支える大生産国と小生産国の協力体制は、長期的な需要増加への適応能力を高めることで、より安定した供給網を築く道筋となるでしょう。