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セントルシアのカカオ豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したセントルシアのカカオ豆生産量推移データによると、このカリブ海の小国におけるカカオ豆生産は1961年の300トンをピークに急激に低下し、その後長期にわたり不安定な推移を続けています。特に2000年代後半以降では、生産量が明らかに縮小し、近年では2022年の29トンと非常に低水準にとどまっています。この変動の背景には、セントルシアの農業政策、地政学的影響、自然災害、そして市場構造の変化が影響している可能性があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 18
-37.93% ↓
2022年 29
-12.12% ↓
2021年 33
83.33% ↑
2020年 18
-10% ↓
2019年 20
17.65% ↑
2018年 17
-19.05% ↓
2017年 21
-8.7% ↓
2016年 23
-28.13% ↓
2015年 32
68.42% ↑
2014年 19
-67.07% ↓
2013年 58
128.97% ↑
2012年 25
-45.34% ↓
2011年 46
-19.12% ↓
2010年 57
-48.18% ↓
2009年 110
10% ↑
2008年 100
23.46% ↑
2007年 81
47.27% ↑
2006年 55
-15.38% ↓
2005年 65
27.63% ↑
2004年 51
35.06% ↑
2003年 38
17.37% ↑
2002年 32
7.1% ↑
2001年 30
30.43% ↑
2000年 23
-11.54% ↓
1999年 26
13.04% ↑
1998年 23
-23.33% ↓
1997年 30
-6.25% ↓
1996年 32
14.29% ↑
1995年 28
-45.1% ↓
1994年 51
-26.09% ↓
1993年 69
15% ↑
1992年 60
11.11% ↑
1991年 54
12.5% ↑
1990年 48
-52% ↓
1989年 100 -
1988年 100 -
1987年 100 -
1986年 100 -
1985年 100
53.85% ↑
1984年 65
10.17% ↑
1983年 59
18% ↑
1982年 50
4.17% ↑
1981年 48
-33.33% ↓
1980年 72
-33.33% ↓
1979年 108
8% ↑
1978年 100 -
1977年 100 -
1976年 100 -
1975年 100 -
1974年 100
-45.95% ↓
1973年 185
85% ↑
1972年 100 -
1971年 100 -
1970年 100 -
1969年 100 -
1968年 100 -
1967年 100 -
1966年 100 -
1965年 100
-50% ↓
1964年 200 -
1963年 200 -
1962年 200
-33.33% ↓
1961年 300 -

セントルシアのカカオ豆生産量データは、おおむね三つの大きな傾向を示しています。第一に、1961年以降、生産量が急速に減少しています。この時期には世界的なカカオ市場の競争が激化しており、特にアフリカ諸国が主導する大規模生産の影響で、セントルシアのような小国の生産者が競争に苦戦したことが背景にあると考えられます。第二に、1970年代から1980年代は年間約100トン周辺の停滞期に入りましたが、これは地元の農業基盤が縮小し、輸出市場への対応力が低下していたことを示している可能性があります。第三に、2000年代以降には、生産量が変動を伴いながらもさらに低下傾向を見せ、2022年にはわずか29トンという極めて低い水準に落ち込んでいます。この減少の背景には複合的な要因が絡んでいると推測されます。

カカオ豆はセントルシアの歴史的な特産品の一つであり、高品質の「プレミアムカカオ」として、ニッチ市場での役割を担ってきた経緯があります。しかし、現在はその競争力が低下しています。地政学的にセントルシアはハリケーンの影響を受けやすい地域に位置しており、農業生産はこれらの自然災害に依存する状況が続いています。近年の気候変動に伴い、災害の頻度や規模が拡大しており、これが生産基盤をさらに脆弱にしています。この点は、例えばインドネシアなどの気候変動適応型農業技術を導入している国と比較すると、セントルシアの対応の遅れが目立つ要素です。

また、国際市場の動向として、アフリカ諸国(特にガーナやコートジボワール)がカカオ生産の主要国を占める中、消費大国であるアメリカ、ヨーロッパ、中国などの市場では、環境負荷が低いフェアトレード製品やオーガニックカカオの需要が増加しています。セントルシアはこの市場動向をうまく活用するため、持続可能な生産方式への転換を検討する必要があります。日本などの先進国は既にオーガニックや高付加価値商品への需要が高く、これを利用することが可能です。

さらにセントルシアは、小規模農家の技術支援や資金援助が課題として浮かび上がっています。他国では、政府や国際機関が小規模農家を対象とした技術研修、設備投資補助などを行う事例が増えています。例えば、コロンビアでは農家に対するマイクロクレジット制度の導入が進行しており、セントルシアでも同様の政策展開が考えられるでしょう。

結論として、セントルシアのカカオ豆生産の低下は、多層的な課題から成り立っています。今後の具体的な対策として、気候変動への適応策を含む災害対策、プレミアム市場向けのブランド戦略開発、政府主導の農業支援策の拡充、そして地元と国際市場の連携強化が重要となります。特に、フェアトレード製品やオーガニック認証の取得を支援し、差別化を進めることが求められます。これらの取り組みを通じて、セントルシアのカカオ産業が持続可能な形で発展する可能性が広がるでしょう。