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セントルシアのバナナ生産量推移(1961年~2023年)

セントルシアのバナナ生産量は、1961年の53,000トンから急激に増加し、1988年には168,060トンとピークに達しました。その後、徐々に減少傾向を示し、2022年には7,015トンと大幅に低下しました。特に近年の減少幅は顕著で、新型コロナウイルスの影響や自然災害の影響が一因と考えられます。バナナはセントルシアの重要な農作物として歴史的・経済的な役割を担ってきたため、この減少は同国の経済と雇用に大きな影響を及ぼしています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,759
-46.41% ↓
2022年 7,015
16.74% ↑
2021年 6,009
-37.74% ↓
2020年 9,651
-40.36% ↓
2019年 16,182
-15.47% ↓
2018年 19,143
9.22% ↑
2017年 17,527
10.45% ↑
2016年 15,869
-9.11% ↓
2015年 17,461
-7.7% ↓
2014年 18,917
6.49% ↑
2013年 17,764
26.78% ↑
2012年 14,011
-37.88% ↓
2011年 22,554
3.93% ↑
2010年 21,702
-45.37% ↓
2009年 39,726
-9.3% ↓
2008年 43,798
35.22% ↑
2007年 32,389
-12.25% ↓
2006年 36,909
12.69% ↑
2005年 32,752
-28.37% ↓
2004年 45,726
-8.55% ↓
2003年 50,000
-23.08% ↓
2002年 65,000
30% ↑
2001年 50,000
-26.47% ↓
2000年 68,000
-20% ↓
1999年 85,000
6.25% ↑
1998年 80,000
-20% ↓
1997年 100,000
-23.08% ↓
1996年 130,000
-7.14% ↓
1995年 140,000
21.74% ↑
1994年 115,000
-28.13% ↓
1993年 160,000
1.27% ↑
1992年 158,000
23.44% ↑
1991年 128,000
-20% ↓
1990年 160,000
10.34% ↑
1989年 145,000
-13.72% ↓
1988年 168,060
47.49% ↑
1987年 113,950
-19.23% ↓
1986年 141,080
32.98% ↑
1985年 106,095
24.68% ↑
1984年 85,094
23.36% ↑
1983年 68,980
17.37% ↑
1982年 58,772
0.93% ↑
1981年 58,229
26.01% ↑
1980年 46,211
-27.08% ↓
1979年 63,372
-5.28% ↓
1978年 66,907
21.21% ↑
1977年 55,197
-9.27% ↓
1976年 60,838
37.64% ↑
1975年 44,200
-35% ↓
1974年 68,000
38.78% ↑
1973年 49,000
-20.97% ↓
1972年 62,000
6.9% ↑
1971年 58,000
11.85% ↑
1970年 51,857
-40.3% ↓
1969年 86,860
-5.59% ↓
1968年 92,000
-3.16% ↓
1967年 95,000
-4.04% ↓
1966年 99,000
-3.41% ↓
1965年 102,500
29.75% ↑
1964年 79,000
13.67% ↑
1963年 69,500
6.92% ↑
1962年 65,000
22.64% ↑
1961年 53,000 -

セントルシアのバナナ生産量の推移を1961年から2022年までのデータで確認すると、生産量の変動は同国の経済と農業政策の歴史を反映しているといえます。1961年から1988年にかけて、特に1980年代前半は生産量が大幅に増加しました。1988年の168,060トンは、セントルシアのバナナ輸出が国際市場で好調だった時期を象徴しています。当時、政府主導の農業支援策や国際的な輸出需要がこの増加を後押ししていました。

しかし、1988年以降は市場競争の激化や価格の低下、主要輸出先である欧州連合(EU)の輸入規制変更といった外的要因が生産量に影響を及ぼし始めました。1990年代にはセントルシア国内の農家が生産コスト高騰や気候変動の影響に直面し、生産量が減少傾向に転じます。また、ハリケーンや熱帯暴風雨といった自然災害の頻発も、バナナ栽培へ深刻な打撃を与えています。特に2010年以降は、これら自然災害の影響で生産量は2万トンを下回る年が多く見られました。

さらに、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の世界的流行も状況を悪化させました。都市封鎖や国際物流の混乱が農業生産と輸出市場に影響を及ぼし、2020年の9,651トン、2021年の6,009トンというデータが示すように、生産量は最低値に達しました。このような一連の減少は、国際競争とセントルシア国内のバナナ農業形態の脆弱性を浮き彫りにしています。

セントルシアのバナナ産業の低迷の背景には、地政学的なリスクも存在しています。同国は欧州市場への輸出に依存する形を取っているため、EUによる関税割当制度の改定や、国際的な貿易協定の見直しが特に影響を与えました。加えて、中国やインドなど世界の主要生産国による低価格のバナナ供給が市場競争を激化させ、これが同国の農民に重くのしかかりました。

このような困難に対処するためには、具体的な対策が必要です。第一に、災害に強い農法や耐病性の高いバナナの栽培品種の開発を進めることが重要です。これは、気候変動や自然災害の影響を緩和する方向性として国際的な農業研究機関と連携する形で実施するべきです。第二に、バナナ農家への補助金や技術支援を通じて、小規模農家が持続可能な形で農業を続けられるよう支援する取り組みを強化する必要があります。

また、セントルシアのバナナ産業が依存する輸出市場の多様化も検討すべき課題の一つです。アジアや中東などの新興市場へのアクセスを拡大するためには、輸送ハブの整備や同地域における輸入需要の徹底調査が必要です。同時に、観光業との連携によるローカル消費の促進や、オーガニック栽培による付加価値を高めた商品開発など、国内需要の喚起も現実的な戦略となります。

結論として、このデータが示すように、セントルシアのバナナ生産量は過去数十年間を通じて数々の課題に直面し、現在では危機的な状況に陥っています。一方で、農業政策の適切な見直しや、バナナ産業に新たな視点を導入することで、持続可能な生産への転換が可能です。国際連合食糧農業機関(FAO)や地域協力機関との連携を深めることで、セントルシアのバナナ産業を再び成長軌道に乗せるための道筋を描ける可能性があります。