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セントルシアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、セントルシアの牛乳生産量は、1960年代の減少を経た後1970年代から徐々に増加傾向に転じ、1990年代には年間1,000トンを安定的に維持する段階まで達しました。2000年代以降は大きな変動もなく、2023年には1,028トンとなり、近年は横ばいの状態が続いています。これによりセントルシアの酪農業は安定した成長を遂げている一方で、生産量の大幅な拡大は見込めない状況にあります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,028
-0.73% ↓
2022年 1,036
0.01% ↑
2021年 1,035
0.01% ↑
2020年 1,035
0.18% ↑
2019年 1,034
0.57% ↑
2018年 1,028
-0.32% ↓
2017年 1,031
-0.5% ↓
2016年 1,036
-0.46% ↓
2015年 1,041
-0.26% ↓
2014年 1,044
-16.51% ↓
2013年 1,250
4.17% ↑
2012年 1,200
4.35% ↑
2011年 1,150
10.47% ↑
2010年 1,041
-5.36% ↓
2009年 1,100
5.8% ↑
2008年 1,040
-0.98% ↓
2007年 1,050
2.26% ↑
2006年 1,027
1.79% ↑
2005年 1,009
0.06% ↑
2004年 1,008
1.24% ↑
2003年 996
-0.43% ↓
2002年 1,000 -
2001年 1,000
25% ↑
2000年 800
-20% ↓
1999年 1,000
11.11% ↑
1998年 900
1.12% ↑
1997年 890
-11% ↓
1996年 1,000
-13.04% ↓
1995年 1,150
-4.17% ↓
1994年 1,200
1.69% ↑
1993年 1,180
2.61% ↑
1992年 1,150
4.55% ↑
1991年 1,100
4.76% ↑
1990年 1,050
2.94% ↑
1989年 1,020 -
1988年 1,020 -
1987年 1,020
2% ↑
1986年 1,000
-1.96% ↓
1985年 1,020
2% ↑
1984年 1,000 -
1983年 1,000
2.04% ↑
1982年 980
1.03% ↑
1981年 970
2.11% ↑
1980年 950
2.15% ↑
1979年 930
1.09% ↑
1978年 920
2.22% ↑
1977年 900
6.89% ↑
1976年 842
1.94% ↑
1975年 826
3.25% ↑
1974年 800 -
1973年 800 -
1972年 800 -
1971年 800
-1.96% ↓
1970年 816
-9.33% ↓
1969年 900
-8.16% ↓
1968年 980
-2% ↓
1967年 1,000
-9.09% ↓
1966年 1,100
-6.14% ↓
1965年 1,172 -
1964年 1,172
-16.64% ↓
1963年 1,406 -
1962年 1,406
-14.27% ↓
1961年 1,640 -

セントルシアにおける牛乳生産量は、1961年の1,640トンから1960年代後半に大きく減少し、1970年には816トンまで低下しました。この減少は、おそらく経済的要因、農地の利用制限、酪農技術の欠如、さらには外部からの安価な輸入乳製品の増加により、国内生産が停滞した可能性があります。その後1970年代には再び生産量が増加し、1990年代には年間1,000トンを安定的に超える水準に達しました。この安定的な増加は、技術の進歩、小規模酪農コミュニティの活性化、さらには農業政策のサポートが影響している可能性があります。

2023年の生産量は1,028トンであり、過去10年間においてほとんど変動は見られません。この横ばいの推移は、一定水準の酪農業の安定性を示すと言えますが、一方で大規模な技術革新や農業効率化の大幅なポイントが欠けているとも解釈できます。また、国内消費の増加や輸入製品との競争が続く中、牛乳生産を維持するためのプレッシャーにも直面している可能性があります。

セントルシアの酪農業における課題は、輸入乳製品への依存度、農業経済に直結する気候変動の影響、そして若年労働力の農業分野への参加率の低さです。同地域は熱帯性気候に位置し、干ばつや豪雨などの異常気象が農産業に直接的な影響を及ぼすため、これらへの対応力を強化する必要があります。また、輸入乳製品が国内市場を圧迫する現状において、国内製品の競争力を高める取り組みやブランド化戦略が求められます。

他国との比較を行うと、例えばフランスやドイツ、アメリカなどの牛乳主要生産国は、機械化された大規模農場と高度な加工技術、効率的な流通インフラの恩恵を受けています。一方でセントルシアのような小規模な島嶼国は、地理的な制約や小規模家畜経営への依存率の高さから、大規模な生産拡大が難しい状況にあります。この点では、中国やインドのように農業技術を積極的に導入し、ローカルな需要を満たす小規模分散型の酪農モデルが適しているとも考えられます。

今後の具体的な対策としては、まず若年層を対象に農業教育を強化し、酪農業の新規参入者を増やすことが重要です。また、気候変動に対応した持続可能な牧畜システムや餌資源の効率化技術を導入することで、気象リスクへの耐性を向上させることができます。さらに、牛乳の生産から販売までのサプライチェーンを見直し、コスト削減や地方消費の増進を目指すべきです。

最後に、新型コロナウイルスの影響を考慮すると、輸入品の物流が一時的に停滞したことで、地元産業の重要性が再認識されるきっかけとなりました。これを契機に、地元の農業コミュニティを支援し、消費者にも地元生産品を選択する意識を高めるキャンペーンなどを推進することが、持続可能な酪農業を築く上での重要なポイントです。

以上のデータと分析から、セントルシアの牛乳生産量は今後も安定した推移を見せる可能性が高い一方、地政学的なリスクや気候的要因への対応を強化することで、さらに持続可能な酪農産業の発展が期待されます。