国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、セントルシアのサツマイモ生産量は、1961年の760トンから1979年の1,400トンまで増加し、その後1990年代にかけて急激な減少を見せました。1995年には507トンと最低記録を更新しましたが、2000年以降一部回復の兆しが見られています。しかし、2020年代に入って以降も生産量は安定しておらず、2022年時点では723トンとピーク時の半分程度の水準にとどまっています。この推移から、セントルシアにおけるサツマイモ生産は様々な要因で揺れ動いている現状がうかがえます。
セントルシアのサツマイモ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 723 |
2021年 | 684 |
2020年 | 585 |
2019年 | 530 |
2018年 | 808 |
2017年 | 607 |
2016年 | 591 |
2015年 | 626 |
2014年 | 716 |
2013年 | 845 |
2012年 | 576 |
2011年 | 494 |
2010年 | 468 |
2009年 | 397 |
2008年 | 604 |
2007年 | 529 |
2006年 | 498 |
2005年 | 204 |
2004年 | 391 |
2003年 | 550 |
2002年 | 778 |
2001年 | 650 |
2000年 | 836 |
1999年 | 480 |
1998年 | 379 |
1997年 | 1,039 |
1996年 | 558 |
1995年 | 507 |
1994年 | 700 |
1993年 | 900 |
1992年 | 1,100 |
1991年 | 1,300 |
1990年 | 1,380 |
1989年 | 1,490 |
1988年 | 1,480 |
1987年 | 1,480 |
1986年 | 1,470 |
1985年 | 1,470 |
1984年 | 1,460 |
1983年 | 1,460 |
1982年 | 1,450 |
1981年 | 1,450 |
1980年 | 1,400 |
1979年 | 1,400 |
1978年 | 1,398 |
1977年 | 1,300 |
1976年 | 1,180 |
1975年 | 1,026 |
1974年 | 1,020 |
1973年 | 1,065 |
1972年 | 960 |
1971年 | 930 |
1970年 | 900 |
1969年 | 870 |
1968年 | 850 |
1967年 | 840 |
1966年 | 820 |
1965年 | 800 |
1964年 | 800 |
1963年 | 780 |
1962年 | 770 |
1961年 | 760 |
サツマイモはセントルシアにおける農業と食料産業の中で、地域経済や食料安全保障に寄与する重要な農産物の一つです。1961年から1979年にかけて生産量が順調に増加している背景には、土地資源の有効活用や農業技術の進展、そして国内外の需要の拡大が挙げられます。特に1970年代後半には年1,400トンを超える記録を達成しています。
しかし、1990年代以降の急激な生産量の下降は、産業構造の変化や自然災害による影響が原因の一端と考えられます。例えば、1990年代にセントルシアを襲った幾度かの熱帯気候災害により、農地やインフラが大きく被害を受けた可能性があります。また、経済的には新興産業の発展が農業分野の労働人口を減少させたことも一因と考えられます。
加えて、2000年代初期には再び生産量が回復基調にありますが、2005年には大幅に減少し、204トンにまで減少しました。この低迷の理由としては、気候変動の影響や農業基盤の縮小、輸出市場での競争激化などが考えられます。一方で、2018年に808トン、2022年には723トンまで生産量が増加していることから、一定の回復傾向も見られると推察されます。これは、地域農業の計画的な振興政策や農業従事者への支援が部分的に成功している証左かもしれません。
セントルシアが直面する課題は多岐にわたります。一つとして、地政学的な側面が挙げられます。同国はカリブ海の島国として災害リスクが極めて高い地域に位置しており、ハリケーンや洪水などにより農業の安定性が損なわれやすい状況です。また、農業従事者の高齢化や農業経験者の減少により、労働力や技術の維持が課題となっています。さらに、コロナ禍の影響で2020年以降は国際的な物流の停滞や肥料価格の上昇が、農業全般に影響を与えました。
セントルシアのサツマイモ生産を持続可能な形にするためには、気候変動への適応と災害リスクの低減に向けた取り組みが欠かせません。具体的には、災害に強い農作物品種の開発、温室型栽培などの気候順応型農業技術の導入、地域間での農業研究機関との連携強化が必要です。また、地元市場だけでなく、近隣国や観光産業への販売チャネルの多様化も重要です。例えば、観光業と提携し、地産地消の食材としてサツマイモの消費を促進することは経済面での相乗効果を期待できます。
さらに、農業教育の充実による若年層への技術移転や、女性や地域コミュニティの農業参加を促す政策も効果的と考えられます。このような取り組みにより、セントルシアのサツマイモ生産量を安定化させ、長期的な農業経済の成長を目指すことが可能でしょう。
現時点のデータから判断すると、セントルシアはサツマイモ生産において、過去の困難な状況から徐々に回復をみせつつあります。しかし、気候や市場の変動要因が多く、依然として脆弱な一面があります。国際協力や公共投資を活用しながら、持続可能で効率的な農業システムの構築を進めることが、同国の未来に向けた課題解決の第一歩となるでしょう。