Food and Agriculture Organization(FAO)の最新データ(2024年7月時点)によると、セントルシアのサトイモ生産量は1961年に110トンでスタートし、1980年代には漸進的な増加を見せました。その後、2000年代には一時的な急増を記録し、2018年には723トンと歴史的なピークを迎えました。しかし、2019年以降急激に減少し、2020年に299トンまで低下、その後回復しつつあるものの2022年時点では505トンにとどまっています。この推移は、セントルシアの農業政策、外的要因、そして地域経済の影響を強く反映しています。
セントルシアのサトイモ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 566 |
12.04% ↑
|
2022年 | 505 |
7.88% ↑
|
2021年 | 468 |
56.36% ↑
|
2020年 | 299 |
-0.17% ↓
|
2019年 | 300 |
-58.51% ↓
|
2018年 | 723 |
27.07% ↑
|
2017年 | 569 |
12.5% ↑
|
2016年 | 506 |
-0.08% ↓
|
2015年 | 506 |
5.23% ↑
|
2014年 | 481 |
16.73% ↑
|
2013年 | 412 |
-22.33% ↓
|
2012年 | 531 |
2.1% ↑
|
2011年 | 520 |
0.5% ↑
|
2010年 | 517 |
-5.99% ↓
|
2009年 | 550 |
8.48% ↑
|
2008年 | 507 |
23.96% ↑
|
2007年 | 409 |
4.34% ↑
|
2006年 | 392 |
-7.33% ↓
|
2005年 | 423 |
-19.12% ↓
|
2004年 | 523 |
8.65% ↑
|
2003年 | 481 |
0.48% ↑
|
2002年 | 479 |
9.75% ↑
|
2001年 | 437 |
7.18% ↑
|
2000年 | 407 |
8.15% ↑
|
1999年 | 377 |
9.28% ↑
|
1998年 | 345 |
14.87% ↑
|
1997年 | 300 |
-7.04% ↓
|
1996年 | 323 |
0.04% ↑
|
1995年 | 323 |
0.81% ↑
|
1994年 | 320 |
3.23% ↑
|
1993年 | 310 |
1.64% ↑
|
1992年 | 305 |
3.62% ↑
|
1991年 | 294 |
-4.74% ↓
|
1990年 | 309 |
3% ↑
|
1989年 | 300 |
3.45% ↑
|
1988年 | 290 |
3.57% ↑
|
1987年 | 280 | - |
1986年 | 280 |
1.82% ↑
|
1985年 | 275 |
-1.79% ↓
|
1984年 | 280 |
9.8% ↑
|
1983年 | 255 |
9.91% ↑
|
1982年 | 232 |
3.11% ↑
|
1981年 | 225 |
12.5% ↑
|
1980年 | 200 |
4.71% ↑
|
1979年 | 191 |
17.18% ↑
|
1978年 | 163 |
-1.21% ↓
|
1977年 | 165 |
3.13% ↑
|
1976年 | 160 | - |
1975年 | 160 | - |
1974年 | 160 |
6.67% ↑
|
1973年 | 150 | - |
1972年 | 150 | - |
1971年 | 150 |
7.14% ↑
|
1970年 | 140 | - |
1969年 | 140 | - |
1968年 | 140 |
7.69% ↑
|
1967年 | 130 | - |
1966年 | 130 | - |
1965年 | 130 |
8.33% ↑
|
1964年 | 120 | - |
1963年 | 120 |
9.09% ↑
|
1962年 | 110 | - |
1961年 | 110 | - |
1961年に110トンで始まったセントルシアのサトイモ生産量は、農業技術の向上と市場需要の増加に伴い、1980年代には年間280~300トンの規模へと成長しました。この間の増加率は緩やかでしたが、一貫して右肩上がりの傾向を見せています。その背景には、サトイモがセントルシアの主要な農作物として地域住民や近隣諸国の需要を満たす役割を果たしてきたことが挙げられます。しかし、1990年代後半からは、競争の激化や輸出市場の変化による影響で一時的に生産量が停滞する時期も見られました。
2000年代に入ると、生産量は大きな成長を遂げ、特に2004年には523トン、2009年には550トンという高水準に達しました。これには、政府の農業振興政策や国際市場におけるサトイモの需要増が寄与していたと考えられます。しかし、天候の不順や自然災害に伴う農地の被害、農業従事者の高齢化と労働力の減少が課題として浮上し、2010年以降の生産量は年によって大きく変動するようになりました。
特筆すべきは2018年の723トンという過去最高記録です。この年の記録的な増加は、主に良好な天候条件、高収量の品種導入、及び政府の技術支援が影響していると見られます。しかしながら、2019年には300トンと約60%の急激な減少が発生しました。この劇的な変化は、農作業への人材不足、契約農地の変更といった国内問題に加え、気候変動の影響による可能性も指摘されています。
2020年から2022年にかけてのデータを見ると、サトイモ生産量は再び回復傾向にあるものの、コロナ禍による物流の停滞や経済全般への悪影響が回復の足かせとなっています。農業従事者への支援策は進んでいるものの、十分な規模とは言えず、国外市場への輸出戦略も改善の余地があります。
セントルシアにおける課題として、まず、サトイモ生産の持続可能性を確保するための労働力確保が挙げられます。若年層の農業参入を促す仕組みや、女性農業従事者への支援を拡充することが鍵です。また、気候変動に対応するための耐旱性(乾燥への耐性)品種の普及や、灌漑設備の開発も喫緊の課題と言えます。加えて、輸出入市場のダイバーシフィケーション(多様化)を進め、隣国や欧米諸国との新たな輸出経路の確保が必要です。
地政学的に見れば、カリブ海地域内の競争に加え、アメリカやアフリカ市場のサトイモ輸出国による低価格競争の影響が懸念されます。この状況下でセントルシアが価格競争力を保つには、品質管理やブランド化などの付加価値戦略が効果的と考えられます。
今後、セントルシア政府や国際機関が連携し、国内農業基盤の強化と輸出市場の拡大を実現することが重要です。その具体策として、農業従事者への低金利融資、国際的な農業展示会への参加促進、地域農地のデジタル化などが挙げられるでしょう。これにより、セントルシアのサトイモ生産は将来にわたって安定した成長を続けることが期待されます。