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セントルシアの牛乳生産量推移(1961-2022)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新のデータによると、1961年から2022年にかけてセントルシアの牛乳生産量は長期的に見てゆるやかな増加傾向を示しています。ただし、過去数十年にわたり生産量の変動が見られ、中長期的な安定性の課題が浮き彫りになっています。特に1960年代は生産量の急激な減少が顕著で、その後1970年代から1990年代にかけて回復基調となり、2000年代以降ではおおむね1,000トン以上を維持しています。2022年の牛乳生産量は1,036トンであり、過去10年間は大きな変動はありませんでした。

年度 生産量(トン)
2022年 1,036
2021年 1,035
2020年 1,035
2019年 1,034
2018年 1,028
2017年 1,031
2016年 1,036
2015年 1,041
2014年 1,044
2013年 1,250
2012年 1,200
2011年 1,150
2010年 1,041
2009年 1,100
2008年 1,040
2007年 1,050
2006年 1,027
2005年 1,009
2004年 1,008
2003年 996
2002年 1,000
2001年 1,000
2000年 800
1999年 1,000
1998年 900
1997年 890
1996年 1,000
1995年 1,150
1994年 1,200
1993年 1,180
1992年 1,150
1991年 1,100
1990年 1,050
1989年 1,020
1988年 1,020
1987年 1,020
1986年 1,000
1985年 1,020
1984年 1,000
1983年 1,000
1982年 980
1981年 970
1980年 950
1979年 930
1978年 920
1977年 900
1976年 842
1975年 826
1974年 800
1973年 800
1972年 800
1971年 800
1970年 816
1969年 900
1968年 980
1967年 1,000
1966年 1,100
1965年 1,172
1964年 1,172
1963年 1,406
1962年 1,406
1961年 1,640

セントルシアの牛乳生産量のデータには、国内農業の動向や地政学的背景、さらには経済政策の影響が反映されています。1961年に記録された1,640トンという生産量は、当時の農業基盤の整備状況や市場需要の影響を示しています。しかし、1960年代後半から1970年代初頭にかけて、生産量は急激に減少し、最低記録となった1971年ではわずか800トンにまで落ち込みました。この背景には、農村人口の都市部への移動、放牧地や家畜管理技術の不足、さらには外貨獲得を目的とした農作物の輸出優先政策などの内外要因が影響したと考えられます。

その後、1980年代にかけて再び生産量が増加に転じたのは、政府や国際機関が農業部門への支援を行った結果と見られます。具体的には、農地整備や酪農技術の導入が進み、安定的な生産基盤が整備されました。1990年代後半から生産量は再び減少傾向を見せましたが、これは地域の気候変動や、輸入乳製品への依存が進んだことが一因です。輸入品は価格競争力が高く、国内生産にとって逆風となった状況が影響しました。

2000年代以降、セントルシアの牛乳生産量はほぼ毎年1,000トン前後を維持しており、これはある程度の安定供給が可能になったことを示しています。ただし、この間も多くの課題が残されています。主に、小規模農家が主流であり、効率的な生産体制の整備が不十分なままであることが指摘されています。また、近年では、気候変動による降雨パターンの変化や、家畜病の流行が生産量に影響を及ぼすリスクがあります。

近年(2010年代以降)では輸入乳製品の市場シェアが拡大しており特に価格の安いアメリカやヨーロッパからの輸入が国内農家の競争力低下を招いています。この状況を打開するためには、地域ブランドを活用した高付加価値商品(オーガニック牛乳や乳製品など)の開発や、政府による補助金制度の強化が効果的です。また、農業分野への若手人材の育成や、共同製品加工施設の設置などの措置も、長期的な競争力の強化に貢献することが期待されます。

さらに、地理的にハリケーンの影響を受けやすいカリブ海諸国に位置するセントルシアでは、気候変動が与える農業への影響が今後も予測されます。具体的には、異常気象による作物収量や家畜の健康状態への直接的な干渉が考えられます。そのため、防災インフラの整備や地域間での気候リスク共有の枠組みづくりが重要です。また、中国やインドなど主要国が推進している安価な農業技術を活用し、セントルシアの生産効率を改善する取り組みも有望です。

国際的な協力や支援も視野に入れるべきです。FAOなど国連機関や地域機関との連携を深め、効率的かつ持続可能な酪農システムの構築を目指すことが求められます。例えば、地域共同の畜産研究施設を設置し、気候変動への適応を目指した研究を進めることは、将来的に生産量と品質に大きな貢献をするでしょう。

結論として、セントルシアの牛乳生産は過去と比べ一定程度の安定性を見せていますが、この先、地政学的リスクや気候変動の影響、輸入品との競争など多くの課題を抱えています。これらを克服するためには、国内外の協力関係を深化させ、現代的な農業技術を取り入れながら、持続可能な酪農モデルを推進する必要があります。