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ポルトガルの大麦生産量推移(1961年~2023年)

ポルトガルの大麦生産量は、1961年から2023年の間に大きな変動を繰り返しており、特に近年は減少傾向が続いています。1960年代から1970年代までは時折10万トンを超える年もあった一方、2000年代以降は例年3万トン未満となることが多く、2022年以降はさらに2万トン台まで落ち込んでいます。このデータはポルトガルの農業環境や経済状況、地球規模の気候変動が生産量に影響を与えていることを示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 26,330
-5.22% ↓
2022年 27,780
-44.13% ↓
2021年 49,720
-19.74% ↓
2020年 61,950
-13.54% ↓
2019年 71,650
14.93% ↑
2018年 62,340
12.81% ↑
2017年 55,261
18.55% ↑
2016年 46,615
4.98% ↑
2015年 44,402
17.11% ↑
2014年 37,914
15.07% ↑
2013年 32,949
55.78% ↑
2012年 21,151
0.72% ↑
2011年 21,000
-31.42% ↓
2010年 30,620
-57.94% ↓
2009年 72,799
-27.07% ↓
2008年 99,827
23.67% ↑
2007年 80,718
-23.53% ↓
2006年 105,552
301.78% ↑
2005年 26,271
0.09% ↑
2004年 26,248
101.47% ↑
2003年 13,028
-34.93% ↓
2002年 20,022
58.94% ↑
2001年 12,597
-65.35% ↓
2000年 36,353
24.05% ↑
1999年 29,304
11.83% ↑
1998年 26,203
-8.99% ↓
1997年 28,792
-58.84% ↓
1996年 69,950
31.84% ↑
1995年 53,058
-44.85% ↓
1994年 96,213
-2.32% ↓
1993年 98,500
56.35% ↑
1992年 63,000
-49.24% ↓
1991年 124,104
58.03% ↑
1990年 78,532
-6.99% ↓
1989年 84,437
66.15% ↑
1988年 50,821
-36.11% ↓
1987年 79,548
-11.34% ↓
1986年 89,722
37.38% ↑
1985年 65,311
-28.37% ↓
1984年 91,184
67.94% ↑
1983年 54,294
5.47% ↑
1982年 51,478
26.13% ↑
1981年 40,815
-24.29% ↓
1980年 53,910
31.01% ↑
1979年 41,150
-6.68% ↓
1978年 44,094
11.36% ↑
1977年 39,597
-66.17% ↓
1976年 117,059
35.02% ↑
1975年 86,700
16.06% ↑
1974年 74,700
31.51% ↑
1973年 56,800
-9.27% ↓
1972年 62,600
-26.35% ↓
1971年 85,000
56.25% ↑
1970年 54,400
-0.73% ↓
1969年 54,800
-41.89% ↓
1968年 94,300
27.09% ↑
1967年 74,200
49.3% ↑
1966年 49,700
-30.98% ↓
1965年 72,013
58.16% ↑
1964年 45,531
-25.56% ↓
1963年 61,167
-15.16% ↓
1962年 72,100
38.52% ↑
1961年 52,051 -

ポルトガルにおける大麦生産量を比較すると、1961年の52,051トンから1976年のピークである117,059トンまで増加を見せた後、大きく変化しています。その後1991年の124,104トンという再びのピークを記録しましたが、2000年以降は持続的な減少に見舞われ、一貫して低い水準で推移しています。2023年には26,330トンと、全体の動向から見ると明らかに生産の縮小傾向が確認できます。

この変動の背景にはいくつかの要因が考えられます。まず、ポルトガル特有の気候条件が挙げられます。地中海性気候である同国は降水量が地域によって不均一であり、農業に適した条件が限られています。特に気候変動が進む現代では、極端な干ばつや異常気象により農地の生産性が脅かされ、生産量の低下を招いていると考えられます。また、生産量の劇的な低下が観察される2000年代初頭には、ポルトガル自体の農業政策の変化が影響した可能性も否定できません。この時期から、EU(欧州連合)の共同農業政策(CAP)の影響を受け、農地の利用が多様化したことが見受けられます。農業の効率化を進める中で、利益率の低い作物である大麦の栽培面積が縮小したのかもしれません。

さらに、ポルトガルの全体的な経済状況も重要な要素です。近年の農業労働人口の減少や都市化の進行が、農業全般に影響を及ぼしていると考えられます。これらの社会的要因は、伝統的な農業の衰退と効率的な大麦生産の維持を困難にしています。他の国と比較すると、例えばフランスやドイツなどの穀物先進国では、大麦の生産規模と安定性はポルトガルよりも高水準で維持されています。こうした国々では最新の農業技術を導入することで生産効率を上げており、技術的なギャップがあることが浮き彫りになります。

地政学的な背景にも目を向けるべきです。ウクライナ紛争による世界的な穀物市場の混乱は、ポルトガルの農業生産にも間接的に影響を及ぼしている可能性があります。小麦や大麦などの国際価格が高騰し、輸出や輸入に頼らず国内での生産量が限られるポルトガルには、特に経済的負担が生まれています。

これらを踏まえ、今後の課題と対策としていくつかの具体策を提案します。まず、気候変動に対応した農業技術の導入が不可欠です。干ばつ耐性の高い作物の開発や、省水灌漑システムの導入が役立つでしょう。また、農業部門への投資を強化し、若年層の農業従事者を増やすことも必要です。EUの支援プログラムや他国との技術協力を活用し、農業分野での国際共同研究が推進されるべきです。そして、国内市場のニーズに合わせた効率的な作付け計画を展開し、大麦に依存しすぎない多様な農産物の位置づけを見直すことも現実的な選択肢です。

ポルトガルの大麦生産量データは、単に過去を振り返るだけでなく、未来の農業政策を考える重要な資料でもあります。このデータから得られる教訓を活かし、適応力のある農業体制を築くことで、持続可能な食品供給と農村コミュニティの維持を目指すべきです。国際的な協力をさらに強化することで、気候や政治的不確実性への対応力を高めることが期待されます。