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ポルトガルのレモン・ライム生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公開した最新データによると、ポルトガルのレモン・ライム生産量は長年にわたる安定期の後、2010年代中盤以降急速に増加しています。1961年では10,000トンだった生産量は2023年には36,210トンに達しており、この62年間で3倍以上の増加を記録しています。特に2018年以降の伸びが顕著で、2022年には30,620トン、2023年には前年比約18.2%増の36,210トンとなりました。このデータはポルトガルが世界市場におけるレモン・ライム供給の重要なプレーヤーとして台頭しつつあることを示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 36,210
18.26% ↑
2022年 30,620
12.61% ↑
2021年 27,190
7.9% ↑
2020年 25,200
8.67% ↑
2019年 23,190
40.97% ↑
2018年 16,450
6.94% ↑
2017年 15,382
-0.38% ↓
2016年 15,440
-0.08% ↓
2015年 15,452
5.29% ↑
2014年 14,676
4.71% ↑
2013年 14,016
6.29% ↑
2012年 13,187
0.42% ↑
2011年 13,132
2.88% ↑
2010年 12,765
-1.76% ↓
2009年 12,994
15.91% ↑
2008年 11,210
2.59% ↑
2007年 10,927
1.34% ↑
2006年 10,782
-3.93% ↓
2005年 11,223
-4.78% ↓
2004年 11,786
-9.98% ↓
2003年 13,093
18.45% ↑
2002年 11,054
-3.38% ↓
2001年 11,441
-4.54% ↓
2000年 11,985
9.23% ↑
1999年 10,972
19.65% ↑
1998年 9,170
-6.46% ↓
1997年 9,803
9.79% ↑
1996年 8,929
-20.35% ↓
1995年 11,210
1.29% ↑
1994年 11,067
5.99% ↑
1993年 10,442
-3.88% ↓
1992年 10,863
5.98% ↑
1991年 10,250
0.49% ↑
1990年 10,200
3.03% ↑
1989年 9,900
2.96% ↑
1988年 9,615
2.72% ↑
1987年 9,360
2.69% ↑
1986年 9,115
1.28% ↑
1985年 9,000
5.88% ↑
1984年 8,500
6.25% ↑
1983年 8,000 -
1982年 8,000
14.29% ↑
1981年 7,000 -
1980年 7,000
-22.22% ↓
1979年 9,000 -
1978年 9,000 -
1977年 9,000 -
1976年 9,000 -
1975年 9,000 -
1974年 9,000 -
1973年 9,000
12.5% ↑
1972年 8,000 -
1971年 8,000 -
1970年 8,000 -
1969年 8,000 -
1968年 8,000
-33.33% ↓
1967年 12,000
-7.69% ↓
1966年 13,000
-7.14% ↓
1965年 14,000
40% ↑
1964年 10,000 -
1963年 10,000
-28.57% ↓
1962年 14,000
40% ↑
1961年 10,000 -

ポルトガルのレモン・ライム生産量は、1960年代から2000年代初期にかけてほぼ停滞または緩やかな変動を示していました。この期間の生産量は概ね7,000~12,000トンの範囲に収まり、大きな成長が見られなかった理由として、当時の農業技術の発展の遅れや、国内市場への依存が挙げられます。ポルトガルの農業部門は、他のEU諸国に比べ技術革新への取り組みが遅れていたため、生産効率が限られていました。

しかしながら、2000年代に入り、生産量は徐々に伸びを見せ始め、2010年代後半から急激な上昇傾向に転じます。この急増の背景には、いくつかの要因が影響しています。まず、EU加盟に伴う農業助成金や各種支援政策がポルトガルにおける農業インフラや研究開発への投資を加速させました。また、気候変動の影響により地中海性気候が一部の地域で適切な条件を提供したため、レモン・ライムの収穫量を向上させる要因となりました。この他にも、グローバル市場での果物需要の高まり、特に有機食品や健康志向による柑橘類の需要増加が、ポルトガル産のレモンやライムを成長市場へ押し上げたと考えられます。

さらに、最近の2019年以降のデータを見ればこの傾向が顕著に表れています。具体的には、2018年の16,450トンから2019年には23,190トン、2023年には36,210トンと短期間で倍近くの成長を遂げました。この増加は、ポルトガルが主要輸出国としてヨーロッパ全体における需要を取り込んできた証拠です。ユーロ圏の主要な消費国であるドイツ、フランス、イギリスなどとの貿易関係が深まり、ポルトガル産の柑橘類がこれらの市場でその品質を評価されるに至りました。

とはいえ課題も存在します。まず、気候変動によるポルトガルの降水量や気温変化は農業に大きな影響を及ぼす可能性が高まっています。また、生産量が急増している一方で、生産過程による水資源の枯渇や土地利用の偏りなど、環境への負荷も無視できません。これに加え、労働力確保の問題は特に重要な課題です。農業従事者の高齢化が進む中で、持続可能な生産を担保するためには移民を含む労働力の確保や農業従事者への支援策が求められるでしょう。

具体的な対策としては、政府および国際機関によりさらに効率的な灌漑技術や持続可能な農業の実践が推進されるべきです。特に、ドローンやAIを活用したスマート農業の導入はコスト削減と環境保全に効果的です。また、EUレベルでの共同研究や協力により、新たな植樹法や育種技術を発展させることも可能です。さらに、若者や移民への農業教育の充実を図ることで、長期的に労働力不足問題へ対応できる基盤を築くことも求められます。

ポルトガルは、地政学的リスクや地域衝突の影響は限定的と考えられるものの、EUの一員として安定した貿易関係を維持することが必要です。近年のような紛争や輸送コストの上昇が続く場合、安定的に輸送を行うためのインフラ投資は重要です。同時に、国際市場における競争力を高め、価格面や品質面で他の主要生産国であるスペインやトルコと差異化を図る戦略が不可欠です。

結論として、ポルトガルのレモン・ライム生産は近年著しい成長を遂げており、この成長を維持しつつも持続可能性を軸にした政策と技術革新が必要です。今後の展望として、世界の農業をリードするモデルケースとなるためには、環境配慮型生産および国際貿易での拡大戦略を進めることが鍵となるでしょう。