国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ポルトガルのラズベリー生産量は2023年に35,660トンに達し、過去最高を記録しました。この成功は、特に2010年代中盤以降の急激な成長に支えられています。生産量は1980年代から1990年代前半は横ばいで推移し、その後減少を経て2009年以降飛躍的に増加しています。この変化は、技術の革新や生産効率の向上、そして地政学的および経済的要因による影響が背景にあります。
ポルトガルのラズベリー生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 35,660 |
21.71% ↑
|
2022年 | 29,300 |
4.83% ↑
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2021年 | 27,950 |
10.58% ↑
|
2020年 | 25,276 |
-0.57% ↓
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2019年 | 25,420 |
-5.61% ↓
|
2018年 | 26,930 |
50.62% ↑
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2017年 | 17,880 |
5.35% ↑
|
2016年 | 16,972 |
34.07% ↑
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2015年 | 12,659 |
169.48% ↑
|
2014年 | 4,697 |
70.39% ↑
|
2013年 | 2,757 |
-10.82% ↓
|
2012年 | 3,091 |
59.13% ↑
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2011年 | 1,943 |
21.4% ↑
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2010年 | 1,600 |
6.67% ↑
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2009年 | 1,500 |
66.67% ↑
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2008年 | 900 |
28.57% ↑
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2007年 | 700 |
40% ↑
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2006年 | 500 |
71.14% ↑
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2005年 | 292 |
-58.24% ↓
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2004年 | 700 |
-35.82% ↓
|
2003年 | 1,090 | - |
2002年 | 1,090 | - |
2001年 | 1,090 | - |
2000年 | 1,090 | - |
1999年 | 1,090 | - |
1998年 | 1,090 | - |
1997年 | 1,090 | - |
1996年 | 1,090 | - |
1995年 | 1,090 | - |
1994年 | 1,090 | - |
1993年 | 1,090 | - |
1992年 | 1,090 | - |
1991年 | 1,090 |
751.62% ↑
|
1990年 | 128 |
28% ↑
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1989年 | 100 | - |
1988年 | 100 | - |
1987年 | 100 | - |
1986年 | 100 | - |
1985年 | 100 | - |
ポルトガルのラズベリー生産量は、1985年から1990年代末にかけて停滞した水準にありました。特に1985年から2000年までの期間では、年平均約1,090トンという比較的低い生産量が維持されました。しかしながら、2000年代初頭から変化が見られ、2004年に700トン、2009年には1,500トンと徐々に増加に転じました。このモメンタムは2010年代に急激な拡大を迎え、2018年には26,930トン、そして2023年には35,660トンまで成長しました。
この劇的な増加の背景には、数多くの要因が存在します。まず第一には、ポルトガル国内での農業技術革新が挙げられます。ポルトガルのラズベリー農家は近代的な栽培技術や高品質の品種などを導入することで、生産量と果実の品質を同時に向上させました。また、ヨーロッパ市場をターゲットにした輸出重視の戦略も生産の拡大に拍車をかけました。特にイギリスやドイツはポルトガル産ラズベリーの重要な輸入国として、需要を大きく支えています。
また、EUの農業助成金プログラムも重要な役割を果たしました。これにより、ポルトガルの農家は必要な投資資金を調達し、高効率の農業機器や灌漑システムを導入できたことが、効率的な大規模生産を可能にしました。また、気候的にラズベリー栽培に適した温暖な環境も、この成長の追い風となりました。
一方で課題も浮き彫りになっています。2022年から2023年にかけて再び増加した生産量はポジティブな兆候を示していますが、長期的には市場依存が高まっていることがリスクとして見え隠れしています。特に輸出市場における価格変動や、競争相手の台頭が懸念されます。例えば、世界的に大きなラズベリー生産を担うメキシコ、ポーランド、チリなどの国々は、ポルトガルにとって競争上の脅威となっています。また、EU内での環境規制の強化に適応する必要があることも課題です。
さらに、気候変動の影響も無視できません。ポルトガルを含む地中海地域では、高温や水不足のリスクが高まっており、生産活動に悪影響を及ぼす可能性があります。2020年代の初めには、これらの課題を予測し、灌漑技術や耐干ばつ性品種の研究開発が早急に求められています。
未来への具体的な提案としては、地政学的リスクに備えるために、輸出先の多様化を進める必要があります。例えば、アジアや中東の新興市場への進出が視野に入ります。また、国内市場の需要を喚起するためのプロモーション活動を展開することも効果的です。同時に、温暖化への適応策として、再生可能エネルギーを活用した持続可能な農業モデルの採用が重要です。
結論として、ポルトガルのラズベリー生産量の継続的な増加と高い国際競争力を維持するためには、多様なリスクへの備えと市場戦略の高度化が不可欠です。この目標を実現するために、農業分野の持続可能な発展に特化した政策や技術開発が、国レベルおよび国際的な協力を通じて推進されるべきです。