最新データによると、ポルトガルの羊肉生産量は2023年で12,370トンとなり、過去数十年で最も低い水準を記録しています。生産量は1960年代にはおおむね18,000~23,000トンを維持し、1991年には27,009トンとピークを迎えました。しかし、それ以降、特に2010年代から2020年代にかけて急激な減少傾向が顕著となり、この下降傾向が現在も続いています。このような長期的な減少の背景には、気候変動、農業構造の変化、および市場需要の変化が影響していると考えられます。
ポルトガルの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 12,370 |
-16.42% ↓
|
2022年 | 14,800 |
-7.09% ↓
|
2021年 | 15,930 |
9.18% ↑
|
2020年 | 14,590 |
-12.84% ↓
|
2019年 | 16,740 |
6.42% ↑
|
2018年 | 15,730 |
-0.46% ↓
|
2017年 | 15,803 |
-7.5% ↓
|
2016年 | 17,085 |
-3.05% ↓
|
2015年 | 17,622 |
72.39% ↑
|
2014年 | 10,222 |
-42.43% ↓
|
2013年 | 17,755 |
1.32% ↑
|
2012年 | 17,524 |
-3.62% ↓
|
2011年 | 18,183 |
-0.53% ↓
|
2010年 | 18,279 |
2.15% ↑
|
2009年 | 17,895 |
-16.78% ↓
|
2008年 | 21,503 |
-11.27% ↓
|
2007年 | 24,235 |
3.76% ↑
|
2006年 | 23,356 |
6.21% ↑
|
2005年 | 21,990 |
-0.02% ↓
|
2004年 | 21,994 |
-1.94% ↓
|
2003年 | 22,428 |
-6.1% ↓
|
2002年 | 23,884 |
6.72% ↑
|
2001年 | 22,380 |
-7.34% ↓
|
2000年 | 24,153 |
8.19% ↑
|
1999年 | 22,324 |
-1.99% ↓
|
1998年 | 22,778 |
-4.89% ↓
|
1997年 | 23,949 |
3.86% ↑
|
1996年 | 23,059 |
-3.13% ↓
|
1995年 | 23,805 |
-1.08% ↓
|
1994年 | 24,065 |
3.66% ↑
|
1993年 | 23,216 |
-4.02% ↓
|
1992年 | 24,188 |
-10.44% ↓
|
1991年 | 27,009 |
8.47% ↑
|
1990年 | 24,900 |
3.3% ↑
|
1989年 | 24,105 |
-1.34% ↓
|
1988年 | 24,432 |
8.68% ↑
|
1987年 | 22,480 |
0.21% ↑
|
1986年 | 22,434 |
5.99% ↑
|
1985年 | 21,167 |
-3.24% ↓
|
1984年 | 21,876 |
-4.06% ↓
|
1983年 | 22,802 |
6.15% ↑
|
1982年 | 21,480 |
8.78% ↑
|
1981年 | 19,747 |
-1.66% ↓
|
1980年 | 20,081 |
8.63% ↑
|
1979年 | 18,485 |
-16.73% ↓
|
1978年 | 22,200 |
-4.52% ↓
|
1977年 | 23,250 |
5.68% ↑
|
1976年 | 22,000 |
5.77% ↑
|
1975年 | 20,800 |
-1.76% ↓
|
1974年 | 21,173 |
0.98% ↑
|
1973年 | 20,967 |
16.41% ↑
|
1972年 | 18,012 |
0.32% ↑
|
1971年 | 17,954 |
-6.36% ↓
|
1970年 | 19,174 |
4.13% ↑
|
1969年 | 18,414 |
5.43% ↑
|
1968年 | 17,465 |
-17.37% ↓
|
1967年 | 21,136 |
-0.08% ↓
|
1966年 | 21,152 |
-9.58% ↓
|
1965年 | 23,394 |
3.99% ↑
|
1964年 | 22,496 |
17.56% ↑
|
1963年 | 19,136 |
-0.6% ↓
|
1962年 | 19,252 |
2.13% ↑
|
1961年 | 18,851 | - |
ポルトガルの羊肉生産量のデータは、国際連合食糧農業機関(FAO)が提供しており、1961年から2023年までの長期的な傾向を観察することができます。このデータから、ポルトガルの羊肉生産は1960年代から1990年代末にかけて一定の水準を維持しながらも季節的な変動がみられるものの、比較的安定していました。この時期は、ポルトガルの農業が農村部を中心に家族経営的に支えられ、国内消費を満たすための生産が中心だったことが影響しているといえます。
しかし、2000年代以降、特に2010年代に入ると羊肉生産量は明らかに減少しました。2014年には10,222トンと大幅な減少を記録しており、この減少は経済状況の変化や家畜の飼育環境の悪化と関係があるとみられます。また、気候変動により、干ばつや異常気象が頻発し、これが牧草地の劣化や生産コストの増大を招いた可能性が考えられます。この影響によって農家が生産を維持することが難しくなり、生産量が減少する結果となっています。また、都市部への人口移動や若年層の農業離れといった社会的要因も、持続可能な農業の発展を妨げる一因と考えられます。
さらに、近年のグローバル化が肉の消費パターンに影響を及ぼしています。ポルトガル国内における羊肉の需要が低下しつつある一方で、輸入肉との価格競争に対応することが困難になっていることも、生産の減少につながる重要な要因です。他の国との比較では、例えばニュージーランドやオーストラリアでは国際市場向けの羊肉輸出が盛況である一方、ポルトガルの場合、主に国内消費が対象の市場であるため、輸出市場へのアクセスが限定的である点が課題となっています。
地域的には、ポルトガルの乾燥地域や山岳地帯が羊飼育の中心であったものの、これらの地域の人口減少と経済活動の衰退がさらに問題を深刻化させています。また、羊肉生産は他の農業作物と比べて収益性が低い場合が多く、この点が農業従事者から敬遠される原因の一つとなっています。
このような状況を受けて提案される対策として、まず農業従事者への支援を強化することが求められるでしょう。具体的には、持続可能な農業技術の導入や気候変動に適応できる牧草管理の推進が必要です。また、農業従事者の世代交代を促進するための若年層向けのインセンティブ提供や教育プログラムも重要です。さらに、輸出市場への進出を支援する政策立案や国際協力の推進により、ポルトガルの羊肉生産の競争力を高めることが期待されます。
結論として、このデータはポルトガルの農業構造の転換期にあることを示しており、気候変動や経済変化といった複数の要因が羊肉産業の持続可能性に深刻な影響を及ぼしていることを明らかにしています。この問題に対処するためには、国や国際機関が一体となり、中長期的な視点で包括的な対策を講じる必要があります。ポルトガルの農村を活性化させ、持続可能な牧畜業を構築することが、今後の羊肉生産の安定を図るための鍵となるでしょう。