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ポルトガルのブドウ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月更新の最新データによると、ポルトガルのブドウ生産量は、1960年代以降、多くの変動を経ながら推移しています。1961年には約106万トンだった生産量が1962年には200万トンを超え、その後は気候変動や経済状況の影響を受けながら上下を繰り返しています。近年では、2023年の生産量が約100万トンとなり、ここ数十年でほぼ安定したブドウ生産量が見られます。一方で、生産量は高い年と低い年の差が著しく、特に極端な減少の見られた年もあります。これらの変動に、気候変動や経済的な影響が関与している可能性が指摘されています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 999,740
10.65% ↑
2022年 903,510
-7.59% ↓
2021年 977,670
14.56% ↑
2020年 853,380
-1.33% ↓
2019年 864,850
7.83% ↑
2018年 802,080
-7.66% ↓
2017年 868,635
12.24% ↑
2016年 773,904
-17.2% ↓
2015年 934,633
14.19% ↑
2014年 818,512
-1.12% ↓
2013年 827,745
-1.65% ↓
2012年 841,619
12.74% ↑
2011年 746,512
-21.2% ↓
2010年 947,299
20.73% ↑
2009年 784,668
4.49% ↑
2008年 750,924
-6.89% ↓
2007年 806,486
-20.02% ↓
2006年 1,008,364
3.62% ↑
2005年 973,117
-3.36% ↓
2004年 1,006,998
1.28% ↑
2003年 994,287
9.22% ↑
2002年 910,383
-13.45% ↓
2001年 1,051,898
15.14% ↑
2000年 913,587
-14.57% ↓
1999年 1,069,402
106.78% ↑
1998年 517,165
-39.15% ↓
1997年 849,962
-35.6% ↓
1996年 1,319,862
32.28% ↑
1995年 997,789
10.91% ↑
1994年 899,661
33.05% ↑
1993年 676,190
-36.6% ↓
1992年 1,066,497
-21.9% ↓
1991年 1,365,589
-12.18% ↓
1990年 1,555,000
44.65% ↑
1989年 1,075,000
100.93% ↑
1988年 535,000
-64.92% ↓
1987年 1,525,000
39.27% ↑
1986年 1,095,000
-20.82% ↓
1985年 1,383,000
14.3% ↑
1984年 1,210,000
-0.33% ↓
1983年 1,214,000
-17.47% ↓
1982年 1,471,000
15.83% ↑
1981年 1,270,000
-11.81% ↓
1980年 1,440,000
-28% ↓
1979年 2,000,000
116.22% ↑
1978年 925,000
-2.53% ↓
1977年 949,017
-28% ↓
1976年 1,318,000
1.19% ↑
1975年 1,302,500
-33.14% ↓
1974年 1,948,000
25.09% ↑
1973年 1,557,252
31.19% ↑
1972年 1,187,000
-8.69% ↓
1971年 1,300,000
-20.35% ↓
1970年 1,632,064
39.12% ↑
1969年 1,173,120
-28.56% ↓
1968年 1,642,000
18.3% ↑
1967年 1,388,000
7.85% ↑
1966年 1,287,000
-36.26% ↓
1965年 2,019,000
7.74% ↑
1964年 1,874,000
4.87% ↑
1963年 1,787,000
-14.54% ↓
1962年 2,091,000
96.71% ↑
1961年 1,063,000 -

ポルトガルのブドウ生産量は、国の農業経済や伝統産業であるワイン製造において重要な指標の1つです。データからは、ブドウの生産量が大きな波を描きつつ、過去60年以上にわたり徐々に安定化しつつあることが示されています。例えば、1961年には約106万トンであった生産量が、1962年には急増し209万トンを記録しました。この急増の背景には、技術革新や農業政策の改善、気候条件の好影響が関与したと考えられます。一方で、1977年や1988年、1998年といった年には50万トン台まで急落しており、伝染病の蔓延や天候不順が技術的・環境的なボトルネックとして影響した可能性が挙げられます。

また、2000年代以降は約75~100万トンの範囲内で生産量が推移しており、極端な変動が少なくなっています。例えば、2023年には約100万トンに達し、近年では比較的安定した生産量を維持しています。ただし、これが将来的に永続するとは言えません。気候変動の影響による異常気象の増加や、土壌の肥沃度の低下といった課題が、今後のブドウ生産量に影響を与える可能性は見逃せません。

国際的に比較すると、ポルトガルはワインの主要生産国の一つです。しかし、生産量では、フランス、イタリア、スペインといった他の欧州諸国、さらにはアメリカやオーストラリアなどと比べると規模は小さく、競争力に影響を与えています。特に近隣のフランスやイタリアが産業化による規模の拡大や品質管理を積極的に進めているのに対し、ポルトガルは生産量の維持と土壌保全のバランスが課題となります。

この地域にはさらに地政学的なリスクも存在しています。例えば、ポルトガル南部では気温上昇や水不足が進行しており、これがブドウの収穫量や質に悪影響を及ぼす可能性があります。また新型コロナウイルスの大流行により、過去数年間で農業従事労働者の確保が難しくなり、ワイン生産サプライチェーン全体が一時的に揺らいだことも重要な要因です。

未来のポルトガルにとっての課題は、収穫量を高めることと、環境保全の両立を目指すことにあります。具体的な提案としては、テクノロジーを活用した先端的な栽培技術の導入や、気候変動に柔軟に対応できる耐性品種の開発が挙げられます。また、EUなどの枠組みを活用して農業補助金を引き出し、灌漑設備の改善や農村部への投資を行うことが効果的です。さらに、国際マーケティングの協力を強化し、「ポートワイン」などの地理的表示付き製品のブランド力を増強することも重要です。

結論として、ポルトガルのブドウ生産量の推移は、気候条件、政策の影響、地域的な課題の反映として読み取ることができます。将来に向けては、持続可能な農業技術と適応力のある政策を通じて、変動リスクを軽減し、安定した生産を実現していく必要があります。国際市場での競争力強化と同時に環境への配慮も進めていくことが、長期的な成功の鍵となるでしょう。