Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、2022年のポルトガルの天然蜂蜜の生産量は11,465トンで、1961年の2,304トンと比較すると約5倍に増加しています。特に2000年代以降、生産量の急激な増加が見られ、2015年には初めて12,000トンを超えましたが、その後の変動も見られます。この変動は自然災害や気候変動、そして地元産業の投資状況など、さまざまな要因が影響している可能性があります。
ポルトガルの天然蜂蜜生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 11,465 |
2021年 | 10,441 |
2020年 | 9,817 |
2019年 | 10,104 |
2018年 | 9,878 |
2017年 | 10,778 |
2016年 | 14,246 |
2015年 | 12,623 |
2014年 | 10,452 |
2013年 | 9,346 |
2012年 | 6,851 |
2011年 | 7,792 |
2010年 | 7,426 |
2009年 | 6,919 |
2008年 | 6,654 |
2007年 | 6,908 |
2006年 | 5,978 |
2005年 | 5,686 |
2004年 | 6,737 |
2003年 | 7,310 |
2002年 | 7,861 |
2001年 | 7,379 |
2000年 | 4,461 |
1999年 | 4,465 |
1998年 | 3,703 |
1997年 | 3,690 |
1996年 | 3,672 |
1995年 | 3,600 |
1994年 | 4,253 |
1993年 | 4,196 |
1992年 | 3,515 |
1991年 | 3,470 |
1990年 | 3,324 |
1989年 | 3,280 |
1988年 | 3,246 |
1987年 | 3,211 |
1986年 | 3,176 |
1985年 | 3,141 |
1984年 | 3,106 |
1983年 | 3,071 |
1982年 | 3,036 |
1981年 | 3,001 |
1980年 | 2,966 |
1979年 | 2,931 |
1978年 | 2,896 |
1977年 | 2,862 |
1976年 | 2,827 |
1975年 | 2,792 |
1974年 | 2,757 |
1973年 | 2,722 |
1972年 | 2,687 |
1971年 | 2,653 |
1970年 | 2,618 |
1969年 | 2,583 |
1968年 | 2,548 |
1967年 | 2,513 |
1966年 | 2,479 |
1965年 | 2,444 |
1964年 | 2,409 |
1963年 | 2,374 |
1962年 | 2,338 |
1961年 | 2,304 |
ポルトガルの天然蜂蜜生産量データは、1961年の2,304トンから始まり、その後数十年にわたり緩やかに増加を続けました。この増加傾向は養蜂産業への少数精鋭の取り組みや、伝統的な農業の持続に対する政策が奏功したものと考えられます。また、ポルトガルは地中海性気候であり、これが蜂蜜の原料となる自然植生の豊かさに繋がり、生産において有利な環境を提供しています。
1990年代後半から2000年代初頭にかけては、生産量が一時的に急騰しています。特に2001年の7,379トンから2002年の7,861トンへの大幅な増加が顕著で、この急成長は、国内外での需要拡大に応えるための生産体制の強化に関連している可能性があります。また、この時期にはEU加盟後の政策支援が強まり、蜂蜜生産が農村地域の生計を立て直す手段として注目されたことも一因と考えられます。
一方で、2004年から2006年にかけて生産量が減少した背景には、気候イベントや病害虫の発生が関係していると見られます。近年でも、2012年や2018年の生産量の減少が散見されており、これは気候変動、特に乾燥化や異常高温が蜜源植物に影響を与え、蜂の活動に悪影響を与えた結果だと考えられます。また、地域衝突や他国の市場動向は蜂蜜の輸出にも適度な影響を与えており、安定した生産量の維持を難しくしている要因の一つです。
2014年以降は大きな伸びが見られ、2016年には14,246トンと過去最高に達しました。しかしそれ以降は、再び変動を伴いながら推移しています。この変動の一部は、疫病の発生や気候要因に加え、新型コロナウイルスのパンデミックが農業活動全般に与えた影響にも関連しています。労働力不足や輸送の制限が、蜂蜜の収穫や販売の効率に影響を与えた可能性があります。
現在の課題としては、気候変動への対応や、病害虫、特にミツバチの減少問題が挙げられます。ポルトガルだけでなく世界的に見ても、蜜蜂の個体数減少が食品生産の安定性に重大なリスクを及ぼしています。このため、持続可能な農業方法や蜜蜂の生育環境を守るためのイニシアチブが重要です。しかしながら、ポルトガルの場合、地中海気候の強みを活かした多様な花蜜源の維持や、生態系に基づいた農業政策の下、生産だけでなく輸出産業としても成長の余地が大いにあります。
地政学的な視点からも、ポルトガルの蜂蜜生産量の推移は、中東欧諸国や地中海沿岸諸国と比較した際、地域協力や競争力の持続可能な枠組みを築く重要性を物語っています。例えば新しい国際貿易パートナーを開拓することで、季節ごとの過剰生産をうまく吸収する一方、輸入に依存する国々への供給を確保することが可能です。また、地元の小規模生産者が国際市場で価値を高めるための統一ブランディング戦略も需要を喚起する策として有効でしょう。
将来的には、ミツバチの生態研究やトレーサビリティ(生産履歴追跡)技術の導入による高品質化の推進、気候変動下における生産安定性を確保するための技術革新が必要です。また、国際機関や地域的な農業協定を通じて、養蜂分野における知見と技術を共有し、さらなる発展への協力関係を築くことが重要となるでしょう。このアプローチがポルトガルの蜂蜜産業を長期的に持続可能にし、農産物の輸出国としての地位を高めるに違いありません。