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ポルトガルの豚飼育数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ポルトガルにおける豚の飼育数は1961年の約152万頭からピーク時の1981年には360万頭にまで増加しました。しかしその後、減少傾向が続き、2000年代に入ってからは安定しながらも、年間約200万頭前後を維持してきています。直近の2022年では218万3320頭という数値を記録しており、この分野での一定の安定感が示されています。

年度 飼育数(頭)
2022年 2,183,320
2021年 2,221,020
2020年 2,251,970
2019年 2,255,870
2018年 2,205,050
2017年 2,165,000
2016年 2,151,000
2015年 2,247,000
2014年 2,127,000
2013年 2,014,000
2012年 2,024,000
2011年 1,985,000
2010年 1,917,000
2009年 1,945,000
2008年 1,955,000
2007年 1,978,000
2006年 1,917,000
2005年 1,955,000
2004年 1,967,000
2003年 1,886,000
2002年 1,964,000
2001年 2,014,000
2000年 2,350,000
1999年 2,385,000
1998年 2,394,000
1997年 2,375,000
1996年 2,430,000
1995年 2,444,000
1994年 2,690,000
1993年 2,574,000
1992年 2,588,000
1991年 2,675,000
1990年 2,618,000
1989年 2,315,000
1988年 2,455,000
1987年 2,454,000
1986年 3,092,000
1985年 3,127,000
1984年 3,000,000
1983年 3,590,000
1982年 3,500,000
1981年 3,600,000
1980年 3,500,000
1979年 3,000,000
1978年 2,270,000
1977年 2,120,000
1976年 1,683,000
1975年 1,833,200
1974年 2,182,200
1973年 2,075,492
1972年 2,045,550
1971年 1,899,300
1970年 1,828,600
1969年 1,778,000
1968年 1,593,052
1967年 1,810,600
1966年 1,676,300
1965年 1,565,000
1964年 1,624,000
1963年 1,590,000
1962年 1,559,000
1961年 1,527,000

ポルトガルの豚飼育数の長期データは、国内の食料政策や輸出需要、また経済的背景やEU(欧州連合)加盟後の農業政策の変化を反映しています。データは1961年から収集され、当初の約152万頭から1970年代後半から1980年代初頭にかけ急増しました。この急増は、ポルトガル国内での食肉需要の増加や革新的な農業技術の導入による結果と考えられます。また、1974年のカーネーション革命後の政治的安定期には、農業従事者の支援策が展開されたことも背景にあると言えます。

しかし、1981年に最大値を記録した後、豚の飼育数が停滞し、その後減少傾向が見られました。この要因には、1986年のEUへの加盟が大きく関係しています。共通農業政策(CAP)の導入により、大規模化が進む一方で、小規模農家は競争力を失い、結果的に国内の豚の頭数に影響を与えました。EUの他の生産大国、例えばスペインやドイツといった国々と比べると、ポルトガルの持続的な生産体制はやや脆弱であると言えます。特にEU内での自由市場化による競争激化が、ポルトガル国内の産業に厳しい影響を与えたことは間違いありません。

2000年代以降のデータを見ると、飼育数はやや減少傾向にあるものの、おおむね安定している姿が見られます。特に2012年以降は約200万頭台で推移しており、大きな変動は確認されていません。この安定性は、国内の消費需要の堅調さやEU内貿易の効率化、ポルトガルの畜産業界における近年の改革の一環としての技術適応に支えられていると考えられます。

未来に向けた課題は、まず環境負荷の軽減です。特に、豚の集約的な飼育による土地や水質汚染、温室効果ガスの排出問題が取り沙汰されています。EUでは農業分野におけるサステナビリティに対する目標が掲げられているため、ポルトガルの畜産業界にもさらなる環境基準の整備や堆肥の効率活用、生態系に配慮した経営モデルの採用が求められています。また、豚熱(ASF:アフリカ豚熱)など感染症への備えも重要で、持続的な衛生管理と研究投資が必要です。国際市場においては、アジアの需要が増加している状況を鑑み、特に中国や日本に向けた高品質なポルトガル産豚肉を輸出する機会の拡充が課題として挙げられます。

地政学的には、ウクライナ問題や国際的な物流の混乱が飼料の確保や輸送コストに影響を及ぼしています。特に、輸入に依存するトウモロコシや大豆などの飼料価格が上昇すると、ポルトガル国内の飼育経済性にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを軽減するために、国内での飼料の生産や地域協力枠組みの強化が提案されます。

ポルトガルが飼育数の維持と環境保全の両立を実現するには、テクノロジーを重視したスマート農業の推進が鍵となります。デジタルツールを活用した生産効率の最適化や、廃棄物処理システムの改良が考えられます。また、EUの補助金や国際的な研究機関との連携を活用し、ポルトガル独自の畜産ブランド化を進めていくべきです。このような取り組みを通じて、ポルトガルの豚飼育業界が持続可能な未来に向けて発展していくことが期待されます。