国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ポルトガルの馬飼養数は、近年増減を繰り返しながらも長期的な変動が見られます。1961年には51,000頭だった飼養数は徐々に減少し、1990年には26,000頭まで低下しましたが、その後回復基調に転じ、2009年には97,000頭のピークに達しました。その後は再び減少と増加を繰り返し、2022年には90,000頭が確認されています。これらの変動は、ポルトガル国内の経済状況、農業の推移、また国際的な馬需要の影響など、多くの要因と関係していると考えられます。
ポルトガルの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 90,000 |
2021年 | 88,000 |
2020年 | 85,000 |
2019年 | 87,000 |
2018年 | 82,000 |
2017年 | 77,000 |
2016年 | 66,000 |
2015年 | 74,000 |
2014年 | 83,000 |
2013年 | 78,000 |
2012年 | 88,000 |
2011年 | 97,000 |
2010年 | 97,000 |
2009年 | 97,000 |
2008年 | 80,000 |
2007年 | 69,000 |
2006年 | 64,000 |
2005年 | 61,000 |
2004年 | 60,000 |
2003年 | 59,000 |
2002年 | 59,000 |
2001年 | 59,000 |
2000年 | 59,000 |
1999年 | 58,000 |
1998年 | 58,000 |
1997年 | 57,000 |
1996年 | 55,000 |
1995年 | 52,000 |
1994年 | 48,000 |
1993年 | 43,000 |
1992年 | 42,000 |
1991年 | 41,000 |
1990年 | 26,000 |
1989年 | 26,000 |
1988年 | 26,000 |
1987年 | 26,000 |
1986年 | 26,000 |
1985年 | 28,000 |
1984年 | 28,000 |
1983年 | 28,000 |
1982年 | 29,000 |
1981年 | 29,000 |
1980年 | 29,000 |
1979年 | 30,000 |
1978年 | 31,000 |
1977年 | 31,000 |
1976年 | 32,000 |
1975年 | 32,000 |
1974年 | 35,000 |
1973年 | 38,791 |
1972年 | 37,778 |
1971年 | 37,700 |
1970年 | 35,800 |
1969年 | 34,500 |
1968年 | 32,854 |
1967年 | 35,800 |
1966年 | 39,500 |
1965年 | 37,000 |
1964年 | 40,000 |
1963年 | 44,000 |
1962年 | 47,400 |
1961年 | 51,000 |
ポルトガルの馬飼養数推移のデータは、同国における農業、経済、文化の変遷を反映する重要な指標です。このデータに基づけば、ポルトガルの馬飼養数は1960年代から1980年代にかけ、一貫して減少傾向にありました。この時期、農業の機械化が急速に進み、馬の労働力としての需要は大幅に減少しました。また、都市化の影響やライフスタイルの変化により、馬の飼育が減少したと考えられます。これには、ポルトガル国内だけでなく、同様の現象が日本やヨーロッパ諸国、特にイギリスやフランスなどでも見られることから、世界的なトレンドの一環である可能性があります。
1990年代に入ると状況は転換し、1991年から飼養数は回復の兆しを見せます。この増加の要因として、レクリエーション用の馬の需要拡大や国際市場との繋がりの強化が挙げられます。また、文化的・観光的側面で馬との関わりが見直され、サラブレッド種やポルトガルの在来馬種の保全への取り組みが進められたこともその一因と考えられます。特に2009年の97,000頭というピークは、経済の堅調さと相まって、馬産業の発展が集中した時期を示しています。
その後、2010年代に入ると、再び飼養数の変動が目立ちます。2012年や2013年には、欧州金融危機の影響による経済的困難が馬産業にも影響を及ぼしている可能性があります。馬の飼育には資金が必要なため、経済的な制約が飼養数にも反映されたと推測できます。この背景には、同様の影響を受けたスペインやイタリアなど、金融危機の影響が大きかった地域の傾向とも共通点があります。
最新の2022年のデータでは、90,000頭まで回復していることが確認されており、これは馬産業の持続的成長の兆しとも解釈できます。ただし、過去の変動パターンを見ると、依然として経済状況や政策による影響を大きく受けやすい状況です。今後さらなる安定性を目指すためには、持続可能な馬産業の発展が鍵となります。
課題として挙げられるのは、第一に経済変動による影響の緩和、第二に気候変動をはじめとした地政学的リスクへの対応です。特にポルトガルが属する南ヨーロッパ地域は、農業や畜産に対する気候変動の影響が顕著であり、水資源の不足や土地利用の変化が馬の飼育環境に影響を及ぼす可能性があります。さらに、疫病への備えも重要です。最近では、新型コロナウイルスの流行も畜産業と間接的な結果をもたらしており、疫病リスクを克服するための適切な管理体制が不可欠です。
未来への展望としては、複数の具体的な対策が考えられます。一つは、ポルトガル在来種の馬を守るための国内外の協力体制を構築することです。例えば、国際的な種の保全プログラムを活用することが考えられます。また、馬の観光資源としての活用を促進し、地域経済を活性化させることも効果的です。例えば、乗馬ツアーや馬術競技などの開催を増やすことが挙げられます。さらに、政策支援として、馬の飼育インフラ整備や馬農家に対する財政的な助成の強化が求められます。
最後に、ポルトガルだけではなく、グローバルな視点で産業の持続可能性を検討する意義を強調したいと思います。国際機関や他国との連携を通じ、馬産業の環境負荷を低減しつつ、文化と経済両面での価値を最大化する取り組みが、次世代へつながる重要な課題となるでしょう。