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ポルトガルの羊飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによれば、ポルトガルの羊飼養数は1960年代の約500万匹から2022年までに約220万匹へと減少しました。この期間には、一時的な増加や急激な減少も見られ、全体として長期的な減少傾向が確認されています。特に1970年代から1980年代にかけて急減した後は安定性を取り戻し、2000年代以降は比較的緩やかな減少傾向が続いていますが、近年はやや横ばいの動きを見せています。

年度 飼養数(匹) 増減率
2023年 2,216,700
-2.32% ↓
2022年 2,269,280
1.4% ↑
2021年 2,237,970
-2.85% ↓
2020年 2,303,720
3.78% ↑
2019年 2,219,780
0.54% ↑
2018年 2,207,790
-0.77% ↓
2017年 2,225,000
7.59% ↑
2016年 2,068,000
1.22% ↑
2015年 2,043,000
0.49% ↑
2014年 2,033,000
-1.98% ↓
2013年 2,074,000
-0.86% ↓
2012年 2,092,000
-3.59% ↓
2011年 2,170,000
-2.52% ↓
2010年 2,226,000
-6% ↓
2009年 2,368,000
-7.43% ↓
2008年 2,558,000
-5.36% ↓
2007年 2,703,000
-4.79% ↓
2006年 2,839,000
-2.2% ↓
2005年 2,903,000
1.22% ↑
2004年 2,868,000
3.35% ↑
2003年 2,775,000
-1.32% ↓
2002年 2,812,000
-1.06% ↓
2001年 2,842,000
-20.7% ↓
2000年 3,584,000
-0.17% ↓
1999年 3,590,000
4.6% ↑
1998年 3,432,000
-1.55% ↓
1997年 3,486,000
0.11% ↑
1996年 3,482,000
0.2% ↑
1995年 3,475,000
3.89% ↑
1994年 3,345,000
-0.42% ↓
1993年 3,359,000
-0.65% ↓
1992年 3,381,000
0.65% ↑
1991年 3,359,000
0.36% ↑
1990年 3,347,000
5.02% ↑
1989年 3,187,000
5.01% ↑
1988年 3,035,000
1.17% ↑
1987年 3,000,000 -
1986年 3,000,000
-6.25% ↓
1985年 3,200,000
-3.03% ↓
1984年 3,300,000
-31.25% ↓
1983年 4,800,000
0.42% ↑
1982年 4,780,000
5.75% ↑
1981年 4,520,000
-0.88% ↓
1980年 4,560,000
7.55% ↑
1979年 4,240,000
-13.47% ↓
1978年 4,900,000
27.27% ↑
1977年 3,850,000
1.32% ↑
1976年 3,800,000
-2.56% ↓
1975年 3,900,000
-4.2% ↓
1974年 4,071,150
-2.02% ↓
1973年 4,155,000
5.98% ↑
1972年 3,920,400
-1.28% ↓
1971年 3,971,100
-10.19% ↓
1970年 4,421,800
-8.33% ↓
1969年 4,823,500
-9.4% ↓
1968年 5,324,200
-7.96% ↓
1967年 5,784,425
1.32% ↑
1966年 5,709,303
1.81% ↑
1965年 5,607,881
10.22% ↑
1964年 5,088,000
1.17% ↑
1963年 5,029,288
-0.39% ↓
1962年 5,049,000
0.4% ↑
1961年 5,029,000 -

ポルトガルの羊飼養数推移を振り返ると、経済、社会、農業実態の変化が大きく反映されたデータであることがわかります。1960年代から1970年代にかけて羊の飼養数は500万匹以上を維持していましたが、1970年代後半から1980年代初頭にかけて300万匹台まで急減しました。この急激な減少は、農村部の人口減少、農業構造の変化、高度経済成長による工業化が重なり、牧畜業が衰退したことが一因と考えられます。同様の傾向は、ヨーロッパ全体でも見られ、例えばイギリス、ドイツ、フランスでも小規模牧畜業の衰退が報告されています。

1990年代になると飼養数は安定期を迎えましたが、2000年代以降再び減少傾向に入りました。この背景には、EU政策の影響が考えられます。ポルトガルを含む欧州各国では、共通農業政策(Common Agricultural Policy)の改定により、牧畜補助金が削減され、羊飼育の経済的な採算性の問題が顕在化しました。また、都市化が進み、若年層が農村部から離れることで、伝統的な羊飼育が継承されにくくなったとも考えられます。一方で、2000年代後半から2010年代にかけて、羊乳を原料とした特産品(例えば、ポルトガルの伝統的なチーズ)の需要が高まり、羊飼養数の一定の維持に寄与した可能性もあります。

ポルトガルの国土は山地が多く、大規模農業よりも牧畜が適した環境であることから、羊飼育はかつて地域経済や文化に深く根付いていました。しかしながら、2009年以降の金融危機やその後の慢性的な経済停滞は、農業分野への影響も大きく、新たな投資がなかなか進みにくい状況を生み出しています。近年のデータを見ると、2020年から2022年にかけてやや回復傾向が見られますが、この変化は持続可能性を伴っているのか注視する必要があります。

今後の課題として、まず若年層や新規就農者に牧畜業の魅力を伝える施策が重要です。また、農業補助金を活用した持続可能な牧畜支援や、高付加価値製品の開発を奨励することで、競争力のある産業に変革することが提言されます。さらに、気候変動による干ばつや牧草不足が羊飼育に悪影響を与える可能性も考えられるため、水資源の管理や環境負荷を軽減する方策が求められます。

ポルトガルの事例は、地域経済や文化の維持、そしてグローバル経済にも関連する重要なトピックです。羊飼育の推移を理解し、その改善や発展を目指す取り組みは、単なる産業政策を超えて、地域社会の活性化にも繋がるでしょう。今後、ポルトガル政府やEU、さらには国際機関の連携が鍵を握るといえます。