国際連合食糧農業機関(FAO)が提供したデータによると、ポルトガルのエンドウ豆(生)の生産量は、1977年から2023年までの間に大きな変動を見せてきました。近年、特に2010年代半ば以降に急激な増加を経験しましたが、2022年と2023年には再び生産量が減少しています。最大の生産量は2015年の18,796トンで、1977年の4,200トンから見ると、およそ4倍以上の増加を示しました。しかし2022年および2023年には8,030トンおよび7,280トンと回復傾向の減速が見られ、今後の動向が注目されています。
ポルトガルのエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 7,280 |
-9.34% ↓
|
2022年 | 8,030 |
-47.24% ↓
|
2021年 | 15,220 |
-3.97% ↓
|
2020年 | 15,850 |
28.44% ↑
|
2019年 | 12,340 |
-5.59% ↓
|
2018年 | 13,070 |
10.67% ↑
|
2017年 | 11,810 |
13.34% ↑
|
2016年 | 10,420 |
-44.56% ↓
|
2015年 | 18,796 |
157.37% ↑
|
2014年 | 7,303 |
83.45% ↑
|
2013年 | 3,981 |
-39.98% ↓
|
2012年 | 6,633 |
41.07% ↑
|
2011年 | 4,702 |
-38.15% ↓
|
2010年 | 7,603 |
-6.14% ↓
|
2009年 | 8,100 |
0.62% ↑
|
2008年 | 8,050 |
4.55% ↑
|
2007年 | 7,700 |
2.73% ↑
|
2006年 | 7,495 |
1.7% ↑
|
2005年 | 7,370 |
0.64% ↑
|
2004年 | 7,323 |
1.3% ↑
|
2003年 | 7,229 |
1.45% ↑
|
2002年 | 7,126 |
1.18% ↑
|
2001年 | 7,043 |
0.61% ↑
|
2000年 | 7,000 |
1.14% ↑
|
1999年 | 6,921 | - |
1998年 | 6,921 |
-16.9% ↓
|
1997年 | 8,329 |
18.99% ↑
|
1996年 | 7,000 |
8.91% ↑
|
1995年 | 6,427 |
2.02% ↑
|
1994年 | 6,300 |
26% ↑
|
1993年 | 5,000 |
-5.66% ↓
|
1992年 | 5,300 |
-11.67% ↓
|
1991年 | 6,000 |
-4.76% ↓
|
1990年 | 6,300 |
18.87% ↑
|
1989年 | 5,300 | - |
1988年 | 5,300 |
-15.87% ↓
|
1987年 | 6,300 |
12.5% ↑
|
1986年 | 5,600 |
27.27% ↑
|
1985年 | 4,400 |
2.33% ↑
|
1984年 | 4,300 |
16.22% ↑
|
1983年 | 3,700 |
-2.63% ↓
|
1982年 | 3,800 |
-5% ↓
|
1981年 | 4,000 |
5.26% ↑
|
1980年 | 3,800 | - |
1979年 | 3,800 | - |
1978年 | 3,800 |
-9.52% ↓
|
1977年 | 4,200 | - |
提供されたデータから、ポルトガルにおけるエンドウ豆(生)の生産量は、約半世紀にわたる期間で多様な動きが繰り返されてきたことが分かります。特に1977年から1990年代までの生産量は、ほぼ4,000から6,000トン台の範囲に収まり、比較的安定していました。しかし1997年には初めて8,329トンを記録し、生産量の底上げが始まりました。その後2005年以降、目に見えて生産量が7,000トン台から徐々に上昇し、2009年には8,100トンとなり初期からの約2倍の規模に成長しました。
2010年代半ばには急激な変化が見られました。2015年には18,796トンを記録し、この年がポルトガルのエンドウ豆生産史における頂点となりました。これは農業技術の進展、政策支援、さらには気候的条件の整備が重なった結果と推測されます。一方で2013年や2017年には生産量が大幅に縮小した年も見られ、極端な気候変動や市場価格の変動、作物被害など、外的要因の影響を受けやすい特性も浮き彫りになっています。
2020年以降の動向には、さらなる変動が見受けられます。2020年には15,850トンと再び大きな成果を上げたものの、2022年に8,030トン、2023年には7,280トンにまで減少しました。この背景には、ヨーロッパ全域を襲った熱波、干ばつなどの異常気象、ウクライナ情勢に起因する肥料や農業資源のコスト上昇、新型コロナウイルスの影響による輸送網の混乱などが複合的に影響を及ぼした可能性が高いです。
ポルトガルの生産増減動向を他国と比較すると、例えば中国は世界有数のエンドウ豆の生産地であるため、大規模な設備投資や人的労働力の導入が進み、生産量が年間数十万トンに及んでいます。一方でイギリスやフランス、スペインといったヨーロッパの他国もエンドウ豆の生産を行っていますが、ポルトガルほど急激な増減は見られません。これはポルトガルの農地依存度の高い農業構造、気候変動の直接的な影響の強さ、政策支援の変化に敏感であることが影響していると考えられます。
今後、ポルトガルがエンドウ豆生産の安定化を図るためには、いくつかの課題と解決方針が挙げられます。まず不可欠なのは、気候変動に対するレジリエントな農業システムの構築です。耐干ばつ性のある栽培技術や品種改良の研究が進められるべきであり、そのために大学や研究機関を中心とした科学的なアプローチを強化することが求められます。また、生産者への資金援助や低金利農業ローンの提供を通じて市場変動への耐性を向上させることも重要です。さらに、国際的な農業支援プログラムに積極的に参加することで、知識や技術移転による生産効率化が図れるでしょう。
地政学的には、近年のヨーロッパ全域におけるエネルギー危機やロシア・ウクライナ紛争による資源供給問題への対応が必要です。ポルトガル自身もエネルギー効率的な農業機械の導入や再生可能エネルギーの利用拡大を進めることで、生産コストの削減やエコロジカルな生産体系への移行を目指すべきです。
これらの取り組みは、ポルトガルのエンドウ豆のみならず、同国全体の農業分野における持続可能性向上にもつながるでしょう。最終的には、国内外市場の競争力を高め、安定した輸出収益の確保に寄与すると期待されます。