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ポルトガルのさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ポルトガルのさくらんぼ生産量は長年にわたり大きく変動しています。特に1960年代から1970年代後半にかけては安定せず、その後1980年代以降は長期的な減少傾向が続きました。ただし、2000年代以降若干の回復傾向が見られ、2019年以降に一時的な生産量の増加も記録されています。2022年には24,680トンと比較的高いレベルに達した後、2023年には11,810トンまで減少しました。この長期的な推移には、環境条件、農業技術、地理的要因などが影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 11,810
-52.15% ↓
2022年 24,680
3.13% ↑
2021年 23,930
158.98% ↑
2020年 9,240
-58% ↓
2019年 22,000
26.29% ↑
2018年 17,420
-10.95% ↓
2017年 19,563
12.68% ↑
2016年 17,362
-1.99% ↓
2015年 17,714
67.48% ↑
2014年 10,577
-1.85% ↓
2013年 10,776
3.46% ↑
2012年 10,416
-21.98% ↓
2011年 13,350
35.73% ↑
2010年 9,836
-17.86% ↓
2009年 11,975
11.17% ↑
2008年 10,772
12.65% ↑
2007年 9,562
-37.22% ↓
2006年 15,231
-6.97% ↓
2005年 16,373
4.57% ↑
2004年 15,658
12.4% ↑
2003年 13,930
-28.28% ↓
2002年 19,422
55.59% ↑
2001年 12,483
55.92% ↑
2000年 8,006
-52.15% ↓
1999年 16,730
304.99% ↑
1998年 4,131
-63.99% ↓
1997年 11,471
-0.51% ↓
1996年 11,530
21.11% ↑
1995年 9,520
-18.1% ↓
1994年 11,624
-11.48% ↓
1993年 13,131
-13.15% ↓
1992年 15,119
11.41% ↑
1991年 13,570
19.98% ↑
1990年 11,310
7.65% ↑
1989年 10,506
110.12% ↑
1988年 5,000
-37.5% ↓
1987年 8,000
-18.01% ↓
1986年 9,757
-23% ↓
1985年 12,672
3% ↑
1984年 12,303
-5% ↓
1983年 12,950
-0.99% ↓
1982年 13,080
20% ↑
1981年 10,900
-2.3% ↓
1980年 11,157
-8% ↓
1979年 12,127
19% ↑
1978年 10,191
-13% ↓
1977年 11,714
-45% ↓
1976年 21,298
38% ↑
1975年 15,433
2.89% ↑
1974年 14,999
-4.34% ↓
1973年 15,680
-35.1% ↓
1972年 24,160
0.67% ↑
1971年 24,000
12.15% ↑
1970年 21,400
-10.83% ↓
1969年 24,000
10.6% ↑
1968年 21,700
-27.67% ↓
1967年 30,000
-14.29% ↓
1966年 35,000
-7.41% ↓
1965年 37,800
8.93% ↑
1964年 34,700
13.4% ↑
1963年 30,600
-2.24% ↓
1962年 31,300
5.74% ↑
1961年 29,600 -

ポルトガルは、果物の生産が盛んな地中海性気候の恩恵を受けるヨーロッパ南西部の国です。その中でも、さくらんぼは重要な農産物の一つとして位置づけられています。しかし、FAOのデータが示すように、さくらんぼの生産量は過去数十年間にわたり著しい変動を繰り返しています。

1960年代は年間30,000トン以上の生産量を記録する年が多く、1965年には37,800トンとピークを迎えました。しかし、1968年以降、生産量は急激な減少を見せ、特に1970年代後半には10,000トン以下のレベルにまで落ち込みました。この要因の一つとして、当時の天候の変動や農地の減少が挙げられます。また、農業効率の低下やさくらんぼに適応した品種改良の不足も影響した可能性があります。

1980年代以降には生産量が停滞し、特に1988年の5,000トンという最低水準の記録は、生産を取り巻く困難さを象徴しています。ここから1990年代後半にかけて約10,000トン台で推移しましたが、安定的な回復は見られませんでした。

2000年代に入ると、生産量は再び変動が大きくなりつつも、持続的な増加に向かう傾向が見られ始めました。特に2015年以降、17,000トンを上回る年が増え、2019年の22,000トン、2021年と2022年には23,930トンおよび24,680トンという近年では高い生産量が見られました。しかし、2023年には再び11,810トンまで落ち込んでおり、不安定な要素が払拭されたとは言えません。

この不安定な傾向には、いくつかの課題と要因があります。一つは気候変動の影響です。極端な気温や不規則な降水パターンがさくらんぼの栽培に適した条件を難しくしている可能性があります。また、他のヨーロッパ諸国、特にスペインやイタリアなどの競争も影響しており、国際市場における価格動向や輸出の競争力強化が求められます。加えて、農業人口の高齢化や農地の効率低下といった構造的課題も生産量の変動に寄与しているでしょう。

今後の対策としては、気候適応型の農業技術の導入や耐性のある品種の開発、農業従事者への支援が重要になります。たとえば、新しい灌漑技術を導入することで、雨不足や熱波の影響を軽減できます。また、農業教育や若い世代への支援を通じて農業人口の活性化を図ることも必要です。さらに、地元市場だけでなく国際市場での競争力を高めるため、品質管理やブランド構築、輸出支援も進められるべきです。

地政学的な背景に目を向けると、ポルトガルのさくらんぼ生産は、EUの農業政策や国際的な貿易協定の影響を受けやすい分野です。特に、近年の地域衝突やエネルギー価格の高騰は、輸送コストなどの観点で生産者に新たな課題をもたらしています。これらの要素が長期的に生産動態にどのように影響を及ぼすか、注視する必要があります。

結論として、ポルトガルのさくらんぼ生産は、長期的な変動に直面しつつも可能性を秘めた分野です。持続的な成長を実現するためには、政策支援と技術革新が重要となるでしょう。国や地域レベルでの取り組みに加え、国際的な協力や資金援助プログラムの活用も視野に入れるべきです。特に、環境・経済の回復力を強化することで、変動を減らし、安定的な供給体制を構築することが期待されます。