Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、ポルトガルのクルミ(胡桃)生産量は、1961年の7,000トンから2023年の9,200トンへと長期的に変動を伴いながら増加基調を見せています。特に、2019年以降の増加は顕著であり、2023年には記録的な生産量を達成しました。このデータは、ポルトガルの農業生産構造の変化や気候条件の影響を反映したものと考えられます。
ポルトガルのクルミ(胡桃)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 9,200 |
29.03% ↑
|
2022年 | 7,130 |
-5.44% ↓
|
2021年 | 7,540 |
47.55% ↑
|
2020年 | 5,110 |
-17.05% ↓
|
2019年 | 6,160 |
29.68% ↑
|
2018年 | 4,750 |
3.6% ↑
|
2017年 | 4,585 |
6.26% ↑
|
2016年 | 4,315 |
6.23% ↑
|
2015年 | 4,062 |
-1.72% ↓
|
2014年 | 4,133 |
-10.33% ↓
|
2013年 | 4,609 |
9.32% ↑
|
2012年 | 4,216 |
13% ↑
|
2011年 | 3,731 |
11.37% ↑
|
2010年 | 3,350 |
-11.02% ↓
|
2009年 | 3,765 |
11.19% ↑
|
2008年 | 3,386 |
-5.89% ↓
|
2007年 | 3,598 |
-7.29% ↓
|
2006年 | 3,881 |
7.12% ↑
|
2005年 | 3,623 |
-10.57% ↓
|
2004年 | 4,051 |
-1.1% ↓
|
2003年 | 4,096 |
-2.75% ↓
|
2002年 | 4,212 |
2.91% ↑
|
2001年 | 4,093 |
9.91% ↑
|
2000年 | 3,724 |
-19.43% ↓
|
1999年 | 4,622 |
48.09% ↑
|
1998年 | 3,121 |
-10.85% ↓
|
1997年 | 3,501 |
3.92% ↑
|
1996年 | 3,369 |
17.63% ↑
|
1995年 | 2,864 |
-2.15% ↓
|
1994年 | 2,927 |
-16.92% ↓
|
1993年 | 3,523 |
-16.12% ↓
|
1992年 | 4,200 |
-27.59% ↓
|
1991年 | 5,800 |
-0.85% ↓
|
1990年 | 5,850 |
12.93% ↑
|
1989年 | 5,180 |
21.88% ↑
|
1988年 | 4,250 |
13.33% ↑
|
1987年 | 3,750 |
33.93% ↑
|
1986年 | 2,800 |
-59.58% ↓
|
1985年 | 6,927 |
24.01% ↑
|
1984年 | 5,586 |
-8.13% ↓
|
1983年 | 6,080 |
6.46% ↑
|
1982年 | 5,711 |
-6.5% ↓
|
1981年 | 6,108 |
-10.33% ↓
|
1980年 | 6,812 |
2.9% ↑
|
1979年 | 6,620 |
-18.15% ↓
|
1978年 | 8,088 |
2.35% ↑
|
1977年 | 7,902 |
28.45% ↑
|
1976年 | 6,152 |
30.56% ↑
|
1975年 | 4,712 |
-21.07% ↓
|
1974年 | 5,970 |
-18.33% ↓
|
1973年 | 7,310 |
20.03% ↑
|
1972年 | 6,090 |
-13.37% ↓
|
1971年 | 7,030 |
58.33% ↑
|
1970年 | 4,440 |
-37.99% ↓
|
1969年 | 7,160 |
8.48% ↑
|
1968年 | 6,600 |
1.54% ↑
|
1967年 | 6,500 | - |
1966年 | 6,500 | - |
1965年 | 6,500 | - |
1964年 | 6,500 | - |
1963年 | 6,500 | - |
1962年 | 6,500 |
-7.14% ↓
|
1961年 | 7,000 | - |
ポルトガルにおけるクルミ生産量の推移を見ると、1961年の7,000トンを基点に長期的な変動が見られます。データでは、1960年代後半から1970年代には、生産量は6,500トン前後で安定していました。しかし、1970年を皮切りに不安定な下落と増加の波が観察されるようになります。1970年の4,440トンへの急減は国内外の市場条件や気候の影響を受けた可能性が高く、同様の変動は1980年代から1990年代にかけて、特に1994年から1996年の間に顕著でした。この期間の最低記録は1995年の2,864トンであり、国内の農業資源の利用状況や外的な要因が影響したことが推測されます。
その後、2000年代には生産規模が3,500トンから4,200トンの範囲で変動し、やや安定が見られるようになりました。ただし一貫性のある増加傾向はこの時期にはまだ見られず、この間は気候変動やインフラの整備状況などが要因として挙げられるでしょう。2010年代後半に入ってから生産量の増加傾向が顕著化し、2019年には6,160トンとなります。その後、国内外の需要増加、技術改善、政策支援の影響から2021年の7,540トン、2023年には9,200トンという最高数値を記録しました。
近年の急成長は、気候に適応した農業技術や灌漑システムの向上、EUの農業助成金による支援などが鍵となっていると考えられます。一方で、このポジティブな進展には新たな課題が伴います。例えば、2030年に向けて予測される地球温暖化や異常気象の影響で、生産量の安定性が揺らぐ可能性があります。また、輸出市場の依存が高まる中、国際的な需給変動や貿易障壁などのリスクも無視できません。
他国と比較すると、ポルトガルの隣国であるスペインは同様の地中海性気候のもとでクルミの生産を行っていますが、生産規模や技術面で優位性を持つとされています。一方で、アメリカ合衆国のカリフォルニア州や中国など、世界的なクルミの主要産地と比較すると、規模の差はまだ大きい状況にあります。しかし、ポルトガルにおける特に高品質を志向した生産が、このスケールの差をパフォーマンスで補っている点は注目に値します。
未来においては、安定した生産を確保するための気候変動適応対策が必要です。具体的には、耐暑性や低水供給下での生育が期待される品種の開発や、灌漑システムのさらなる効率化が挙げられます。また、国内農家への助成金や教育、輸出市場の拡大に向けた交渉の推進も課題となります。さらに、地政学的な背景として、ヨーロッパ全体の農業貿易政策や国際紛争の際の供給鎖への影響も考慮する必要があるでしょう。
最後に、新型コロナウイルスの流行と関連した影響も見逃せません。一時的な需要減少があった一方で、健康に良い食品としての需要が増加したことが、ポルトガルのクルミ生産にプラスの影響を与えたとも考えられます。このような機会を活用し、世界市場でのポルトガル産クルミの認知度向上に努めることで、さらなる発展が期待できるでしょう。