国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ポルトガルのスイカの生産量は、1961年にはわずか1,650トンでしたが、長期的な増加傾向を経て2010年代以降に急上昇し、2020年代には約30,000トン近くで推移しています。しかし、年ごとの差異も顕著で、特に2010年以降の急速な成長とその後の変動には注目すべき点が多く見られます。
ポルトガルのスイカ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 27,670 |
-4.42% ↓
|
2022年 | 28,950 |
-6.97% ↓
|
2021年 | 31,120 |
12.02% ↑
|
2020年 | 27,780 |
22.54% ↑
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2019年 | 22,670 |
-12.81% ↓
|
2018年 | 26,000 |
-16.01% ↓
|
2017年 | 30,957 |
-2.43% ↓
|
2016年 | 31,727 |
9.03% ↑
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2015年 | 29,099 |
21.33% ↑
|
2014年 | 23,983 |
-1.22% ↓
|
2013年 | 24,280 |
-0.02% ↓
|
2012年 | 24,285 |
7.53% ↑
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2011年 | 22,585 |
76.35% ↑
|
2010年 | 12,807 |
201.34% ↑
|
2009年 | 4,250 |
6.25% ↑
|
2008年 | 4,000 |
14.29% ↑
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2007年 | 3,500 |
40% ↑
|
2006年 | 2,500 |
17.05% ↑
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2005年 | 2,136 |
27.17% ↑
|
2004年 | 1,680 |
27% ↑
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2003年 | 1,323 |
12.82% ↑
|
2002年 | 1,172 |
7.65% ↑
|
2001年 | 1,089 |
2.61% ↑
|
2000年 | 1,061 |
-26.09% ↓
|
1999年 | 1,436 |
-2.57% ↓
|
1998年 | 1,474 |
-4.55% ↓
|
1997年 | 1,544 |
-5.17% ↓
|
1996年 | 1,628 |
-5.19% ↓
|
1995年 | 1,717 |
-4.76% ↓
|
1994年 | 1,803 |
-3.91% ↓
|
1993年 | 1,876 |
-2.58% ↓
|
1992年 | 1,926 |
-3.69% ↓
|
1991年 | 2,000 | - |
1990年 | 2,000 |
-33.33% ↓
|
1989年 | 3,000 |
50% ↑
|
1988年 | 2,000 | - |
1987年 | 2,000 | - |
1986年 | 2,000 | - |
1985年 | 2,000 | - |
1984年 | 2,000 | - |
1983年 | 2,000 | - |
1982年 | 2,000 |
-4.76% ↓
|
1981年 | 2,100 |
5% ↑
|
1980年 | 2,000 |
-4.76% ↓
|
1979年 | 2,100 |
5% ↑
|
1978年 | 2,000 |
5.26% ↑
|
1977年 | 1,900 |
-9.52% ↓
|
1976年 | 2,100 |
5% ↑
|
1975年 | 2,000 | - |
1974年 | 2,000 |
-6.1% ↓
|
1973年 | 2,130 |
19.66% ↑
|
1972年 | 1,780 |
-10.1% ↓
|
1971年 | 1,980 |
-7.04% ↓
|
1970年 | 2,130 |
13.9% ↑
|
1969年 | 1,870 |
0.54% ↑
|
1968年 | 1,860 |
3.33% ↑
|
1967年 | 1,800 |
2.86% ↑
|
1966年 | 1,750 | - |
1965年 | 1,750 |
2.94% ↑
|
1964年 | 1,700 | - |
1963年 | 1,700 |
3.03% ↑
|
1962年 | 1,650 | - |
1961年 | 1,650 | - |
ポルトガルのスイカ生産量は、1960年代から徐々に増加し、1980年代に安定期を迎えました。この時期、生産量はおおむね2,000トン程度で推移し、増減は比較的少なかったといえます。しかし、1990年代に入ると再び減少に転じ、2000年には1,061トンと、それまでのプロセスの中で最も低い水準を記録しました。この下降の背景については、農業従事者の減少や競争力の低下、気候変動の影響、さらには農地転用による生産体制の縮小などが考えられます。
2000年以降の回復は顕著で、特に2006年から2009年にかけて生産量は2,500トンから4,250トンと着実な伸びを見せました。2010年には12,807トンと急増し、2011年には22,585トンとさらに倍近く拡大しました。この爆発的な伸びの要因として考えられるのは、農業技術の改善や灌漑設備の充実、またEUからの支援や補助金の影響です。ポルトガルの農業はEUの共通農業政策(CAP)による恩恵を受けており、これが生産向上の後押しをした可能性があります。
2010年代半ば以降も生産量は拡大を続け、2015年には29,099トン、2016年には31,727トンに達するなど、30,000トン前後の高水準で推移しました。ただし、2018年以降には再び変動が見られ、2019年には22,670トンへと減少、2021年には31,120トンまで回復するも、その後は徐々に減少し2023年には27,670トンとなっています。この変動は、天候不順や市場の需要変化、さらには新型コロナウイルス感染症の流行による輸送や労働力の不足も一因と考えられます。
気候変動の影響についても考えるべき深刻な課題です。ポルトガルは地中海性気候を持つ国として、気温上昇や降雨パターンの変化が農業に与える影響が非常に大きい地域です。とりわけスイカ生産に関しては灌漑の信頼性が重要であり、天候による不安定要素が今後さらに課題として浮上してくる可能性があります。
対策としては、持続可能な農業手法の導入や、環境に配慮した灌漑技術のさらなる普及が挙げられます。また、政府や地域レベルでの生産支援策が引き続き必要です。特に市場の安定化や輸出の拡大を目指すために、EU加盟国間の協力を強化し、競争力を引き出す必要があります。また、気候変動への対応として適応型農業技術を採用し、気象リスクを最小限に抑制する政策も重要です。
さらに、地域社会を巻き込んだ新しい農業モデルの構築も未来に向けた解決策の一つと言えます。幅広い協力の枠組みを活用し、新たな作物の導入や経済活動の多様化を図ることで、ポルトガルの農業全体を持続可能な方向へとシフトさせることが期待されます。
まとめると、ポルトガルのスイカ生産量推移は、過去数十年で劇的な変化を遂げていますが、現代における課題も多く存在しています。気候変動や市場変動への対策を早急に進めることで、今後も持続的な成長を実現できるでしょう。国と地域、そして国際的な協力が鍵となる中、ポルトガルはその豊かな自然環境を活かし、さらに力強い農業国としての位置づけを確立することができます。