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ポルトガルのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、ポルトガルにおけるヤギ肉生産量は、1961年の1,900トンから1970年代後半には3,600トンを越え、その後1990年代まで比較的高い水準を維持しました。しかし、2000年代以降は急速な減少傾向を示し、2014年には最低の711トンを記録しました。最近では、2022年に1,310トンに持ち直す一方、2023年には再び1,100トンと減少しています。このデータはポルトガルの畜産業や農村経済の動向を示す重要な指標です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,100
-16.03% ↓
2022年 1,310
4.8% ↑
2021年 1,250
14.68% ↑
2020年 1,090
-7.63% ↓
2019年 1,180
0.85% ↑
2018年 1,170
1.83% ↑
2017年 1,149
-0.69% ↓
2016年 1,157
-5.24% ↓
2015年 1,221
71.73% ↑
2014年 711
-45.97% ↓
2013年 1,316
-14.66% ↓
2012年 1,542
5.62% ↑
2011年 1,460
-3.76% ↓
2010年 1,517
-2.19% ↓
2009年 1,551
3.75% ↑
2008年 1,495
-13.73% ↓
2007年 1,733
10.88% ↑
2006年 1,563
14.59% ↑
2005年 1,364
-13.4% ↓
2004年 1,575
-9.01% ↓
2003年 1,731
-13.67% ↓
2002年 2,005
11.76% ↑
2001年 1,794
-14.77% ↓
2000年 2,105
-17.35% ↓
1999年 2,547
-11.04% ↓
1998年 2,863
-11.22% ↓
1997年 3,225
3.5% ↑
1996年 3,116
4.81% ↑
1995年 2,973
-7.73% ↓
1994年 3,222
4.47% ↑
1993年 3,084
-6% ↓
1992年 3,281
-3.9% ↓
1991年 3,414
17.28% ↑
1990年 2,911
-1.85% ↓
1989年 2,966
-12.46% ↓
1988年 3,388
-1.08% ↓
1987年 3,425
10.48% ↑
1986年 3,100
-6.23% ↓
1985年 3,306
-4.01% ↓
1984年 3,444
-2.16% ↓
1983年 3,520
-7.05% ↓
1982年 3,787
5.28% ↑
1981年 3,597
-6.43% ↓
1980年 3,844
14.07% ↑
1979年 3,370
-6.7% ↓
1978年 3,612
14.78% ↑
1977年 3,147
-11.63% ↓
1976年 3,561
-2.6% ↓
1975年 3,656
10.15% ↑
1974年 3,319
1.5% ↑
1973年 3,270
13.15% ↑
1972年 2,890
-2.89% ↓
1971年 2,976
-2.59% ↓
1970年 3,055
2.86% ↑
1969年 2,970
7.61% ↑
1968年 2,760
9.74% ↑
1967年 2,515
3.58% ↑
1966年 2,428
5.61% ↑
1965年 2,299
-0.22% ↓
1964年 2,304
25.29% ↑
1963年 1,839
-1.08% ↓
1962年 1,859
-2.16% ↓
1961年 1,900 -

ポルトガルのヤギ肉生産量の推移は、同国の農業および食糧需給の歴史を反映しており、幾つかの重要なトレンドを示しています。1960年代から1990年代にかけては、ヤギ肉生産量は拡大基調で推移し、1970年代後半には年平均約3,500トンを記録しました。この時期、ポルトガルでは農村部の人口が豊富で、ヤギなどの放牧が盛んに行われていたため、地元市場向けの供給が安定していました。この生産量の増加は、当時の国内消費需要の増加だけでなく、農業技術が進歩したことも影響したと考えられます。

しかし1990年代末から2000年代初頭にかけて、ヤギ肉生産は著しく低下しました。2001年には1,794トンまで減少し、2010年代初頭には更に減少が続き、2014年には過去最低の711トンを記録しました。これにはいくつかの要因が影響しています。第一に、農村地域から都市部への人口流出が進むことで、伝統的な牧畜が縮小しました。第二に、EU加盟後、包括的な農業政策の変化によって国内の小規模農家への補助金が減少したことで、ヤギの飼育が難しくなったことが挙げられます。さらに、都市化の進展と国際的な食品供給網の拡大によって、安価な輸入肉が市場に流入し、地元での生産競争力が低下しました。

最近のデータでは、2015年以降、ヤギ肉生産量がやや回復する兆しが見られています。たとえば2022年には1,310トンと増加を記録しました。ただし2023年の1,100トンという数値から考えると、この回復は依然として不安定です。これは近年の異常気象や農村地域の経済的停滞、ヤギ飼育に必要な資源コストの上昇などが影響している可能性があります。

地政学的な視点から見ると、ポルトガルは国の規模や位置から輸入に依存する部分が大きいですが、ローカルな自給自足型食文化を維持することが観光資源としても強みになるため、ヤギ肉生産の復活・強化は戦略的に重要です。しかしこれは農家だけの努力で解決できる問題ではなく、国や国際機関が関与し、具体的な支援策を講じる必要があります。一例として、農村振興政策を通じた若手農業従事者の育成や、小規模牧畜のための設備投資への補助金拡充が効果的です。また、特定の品種や地元産品をブランド化することで価値を高め、国内外の市場での競争力を確保するアプローチも考えられます。

将来的にポルトガルが直面する課題の一つは、気候変動の影響です。異常気象が頻発する中、水資源の確保や、適切な飼料供給の確立がますます重要になるでしょう。これに対する解決策として、乾燥に強い作物の栽培や家畜の飼料一体型の耕作システムの採用が考えられます。また、地域共同体による協同組合活動を強化し、個々の小規模農家でもリスクを分散できる仕組みを作るべきです。

結論として、ポルトガルのヤギ肉生産量の推移は、歴史的背景と政策、さらに経済構造の変化を反映しています。現在の低迷状態から持続可能な成長路線に転じるためには、国際的な支援とローカルなイノベーションの両方を組み合わせた総合的なアプローチが求められます。例えば、EUの輸出補助金を活用しながら、地域特産品としてブランド化を進めることで、収益性を向上させる新たな価値連鎖の構築が可能となるでしょう。