Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)のデータによれば、2011年度の世界の羊の毛生産量ランキングでは、中国が443,981トンで1位、オーストラリアが368,992トンで2位、新たな羊毛の需要国として注目されるニュージーランドが163,700トンで3位となりました。日本はこのランキングに現れていませんが、羊毛の消費市場として位置づけられています。トップ10のうちアジアやオセアニアの国々が中心を占めており、世界的な生産の分布に地理的な特徴が見られます。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
アジア | 443,981 |
| 2 |
|
オセアニア | 368,992 |
| 3 |
|
オセアニア | 163,700 |
| 4 |
|
ヨーロッパ | 67,500 |
| 5 |
|
アジア | 61,000 |
| 6 |
|
アフリカ | 55,500 |
| 7 |
|
ヨーロッパ | 52,575 |
| 8 |
|
南アメリカ | 48,000 |
| 9 |
|
アジア | 46,586 |
| 10 |
|
アジア | 44,700 |
| 11 |
|
アジア | 42,500 |
| 12 |
|
アフリカ | 41,365 |
| 13 |
|
アジア | 38,455 |
| 14 |
|
アジア | 38,000 |
| 15 |
|
南アメリカ | 34,700 |
| 16 |
|
アジア | 30,750 |
| 17 |
|
アフリカ | 29,270 |
| 18 |
|
アジア | 28,687 |
| 19 |
|
ヨーロッパ | 22,333 |
| 20 |
|
アジア | 21,069 |
| 21 |
|
ヨーロッパ | 19,026 |
| 22 |
|
アジア | 17,100 |
| 23 |
|
アジア | 17,000 |
| 24 |
|
アジア | 16,000 |
| 25 |
|
アジア | 15,951 |
| 26 |
|
アジア | 15,100 |
| 27 |
|
ヨーロッパ | 14,200 |
| 28 |
|
ヨーロッパ | 14,000 |
| 29 |
|
北アメリカ | 13,286 |
| 30 |
|
ヨーロッパ | 13,000 |
| 31 |
|
南アメリカ | 11,805 |
| 32 |
|
アジア | 11,095 |
| 33 |
|
アフリカ | 10,730 |
| 34 |
|
アフリカ | 10,600 |
| 35 |
|
南アメリカ | 10,292 |
| 36 |
|
アフリカ | 9,450 |
| 37 |
|
ヨーロッパ | 8,558 |
| 38 |
|
アフリカ | 8,000 |
| 39 |
|
アジア | 7,940 |
| 40 |
|
南アメリカ | 7,808 |
| 41 |
|
ヨーロッパ | 7,750 |
| 42 |
|
アフリカ | 6,750 |
| 43 |
|
アジア | 6,027 |
| 44 |
|
ヨーロッパ | 5,864 |
| 45 |
|
南アメリカ | 4,696 |
| 46 |
|
ヨーロッパ | 4,155 |
| 47 |
|
南アメリカ | 4,000 |
| 48 |
|
アフリカ | 4,000 |
| 49 |
|
アジア | 3,953 |
| 50 |
|
ヨーロッパ | 3,877 |
| 51 |
|
ヨーロッパ | 3,820 |
| 52 |
|
ヨーロッパ | 3,400 |
| 53 |
|
ヨーロッパ | 2,913 |
| 54 |
|
ヨーロッパ | 2,700 |
| 55 |
|
ヨーロッパ | 2,385 |
| 56 |
|
アジア | 2,251 |
| 57 |
|
アジア | 2,230 |
| 58 |
|
アフリカ | 2,200 |
| 59 |
|
ヨーロッパ | 2,043 |
| 60 |
|
アフリカ | 1,900 |
| 61 |
|
南アメリカ | 1,846 |
| 62 |
|
アジア | 1,700 |
| 63 |
|
ヨーロッパ | 1,600 |
| 64 |
|
南アメリカ | 1,400 |
| 65 |
|
アフリカ | 1,400 |
| 66 |
|
ヨーロッパ | 1,331 |
| 67 |
|
北アメリカ | 1,262 |
| 68 |
|
アジア | 1,230 |
| 69 |
|
アフリカ | 1,165 |
| 70 |
|
アジア | 1,050 |
| 71 |
|
ヨーロッパ | 1,000 |
| 72 |
|
ヨーロッパ | 1,000 |
| 73 |
|
南アメリカ | 1,000 |
| 74 |
|
ヨーロッパ | 975 |
| 75 |
|
ヨーロッパ | 895 |
| 76 |
|
ヨーロッパ | 775 |
| 77 |
|
アジア | 650 |
| 78 |
|
アジア | 586 |
| 79 |
|
ヨーロッパ | 554 |
| 80 |
|
アジア | 521 |
| 81 |
|
アフリカ | 320 |
| 82 |
|
ヨーロッパ | 320 |
| 83 |
|
ヨーロッパ | 260 |
| 84 |
|
ヨーロッパ | 190 |
| 85 |
|
ヨーロッパ | 180 |
| 86 |
|
ヨーロッパ | 170 |
| 87 |
|
アジア | 161 |
| 88 |
|
アジア | 158 |
| 89 |
|
ヨーロッパ | 150 |
| 90 |
|
ヨーロッパ | 135 |
| 91 |
|
ヨーロッパ | 133 |
| 92 |
|
ヨーロッパ | 126 |
| 93 |
|
ヨーロッパ | 86 |
| 94 |
|
ヨーロッパ | 83 |
| 95 |
|
ヨーロッパ | 10 |
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羊の毛の主要な生産国ランキングで、中国が首位となっています。主にモンゴルやチベットなど寒冷地特有の気候条件が羊毛の生産に向いているため、中国は世界最大の羊毛生産国となっています。また、多数の羊群を擁し、多様な農業活動に力を入れている点も見逃せません。オーストラリアとニュージーランドもそれぞれ2位、3位を占めており、特にオーストラリアはメリノウール(高品質の羊毛)で世界市場をリードしています。ニュージーランドは地理的な孤立により病害リスクが低い点が強みで、輸出産業として発展を遂げています。
ヨーロッパの中ではイギリスが67,500トンで4位となり、特に伝統的な毛織物産業の基盤が生産量を支えています。一方、イラン、モロッコ、トルコなどの西アジアや北アフリカ地域は地域の伝統的な畜産文化が反映されており、生産量の安定に寄与しています。こうした地域は、羊毛市場においては量よりもその用途や加工技術が注目される傾向があります。
ランキング下位の一部には、ヨーロッパの小国やアフリカの国々も含まれていますが、生産規模が小さいため国際市場への影響は限定的です。しかし、こうした国々でも伝統工芸品やローカルな羊毛製品の生産が続いており、市場のニッチな需要に一定の役割を果たしています。
地政学的観点から見ると、羊毛生産は気候や水資源の問題に密接に関連しています。たとえばオーストラリアや中央アジア(カザフスタン、トルクメニスタンなど)では干ばつが羊の放牧に与える影響が懸念されています。また、シリアのような紛争地域では生産インフラの維持が難しく、ランキング内におけるその現状が羊毛生産量の停滞にも現れています。未来には、こういった地域での生産が復活するまでに国際機関の支援が必要になる可能性があります。
課題としては、いくつかの国で見られる環境負担の増加や品質の格差があります。例えば、羊毛生産が大規模に集中している中国やオーストラリアでは、放牧による土壌劣化や水資源管理が重要視されており、解決のために生態系保全型の農業技術が求められるでしょう。また、牧羊の自動化やデジタル化を進めることで、効率的で持続可能な生産方法を模索するのも一つの方向性です。
さらに、羊毛の需要動向や市場の発展に目を向けると、新興国の購買力向上が羊毛製品の消費を押し上げる可能性があります。その一方で合成繊維の台頭により、天然繊維の一つとしての羊毛の価値をどのように高めていけるかが課題です。既存のエコ意識やサステナブル商品への関心を背景に、羊毛の生分解性や再生可能な特性を強調するブランド戦略が望まれます。
国際機関や各国政府に求められるのは、これらの課題を共有し、情報を最新化した上で各地域に適した技術援助やガイドラインを策定することです。具体的には、気候変動に配慮した生産モデルや、国際市場における輸出促進のための協力体制を構築する必要があります。また、日本のような消費国は、高品質な製品需要を継続するだけでなく、二酸化炭素排出量削減を視野に入れた供給チェーンの構築にも寄与すべきでしょう。
データが示すように、羊毛産業には多様な課題と可能性があります。これらに対処するためには、生産国と消費国それぞれが持続可能性と革新性を重んじて連携を強化していくことが求められています。