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エジプトの大麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年に発表したデータによると、エジプトの大麦生産量は1961年から2023年までの期間で不安定な推移を見せ、1961年の132,910トンから2023年には90,000トンとなりました。この間、大幅な増加や減少が散見され、特に1995年には368,297トンと記録的な生産量を記録しましたが、その後の減少傾向も顕著です。近年では、生産量が10万トン以下にとどまることが増えており、安定的な大麦の供給確保が課題となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 90,000
-6.94% ↓
2022年 96,717
10.35% ↑
2021年 87,644
-19.62% ↓
2020年 109,041
1.93% ↑
2019年 106,981
29.82% ↑
2018年 82,406
-15.62% ↓
2017年 97,666
-2.09% ↓
2016年 99,751
-0.91% ↓
2015年 100,670
-1.54% ↓
2014年 102,244
-22.48% ↓
2013年 131,890
21.56% ↑
2012年 108,495
-11.28% ↓
2011年 122,294
4.42% ↑
2010年 117,113
-21.09% ↓
2009年 148,415
-0.55% ↓
2008年 149,238
-16.32% ↓
2007年 178,344
16.64% ↑
2006年 152,900
-8.45% ↓
2005年 167,020
2.42% ↑
2004年 163,080
15.29% ↑
2003年 141,447
40.33% ↑
2002年 100,797
7.34% ↑
2001年 93,905
-5.52% ↓
2000年 99,392
-13.09% ↓
1999年 114,359
-22.74% ↓
1998年 148,021
17.87% ↑
1997年 125,575
5.06% ↑
1996年 119,522
-67.55% ↓
1995年 368,297
184.53% ↑
1994年 129,441
-2.58% ↓
1993年 132,867
-43.22% ↓
1992年 234,000
93.39% ↑
1991年 121,000
-14.79% ↓
1990年 142,000
2.9% ↑
1989年 138,000
15% ↑
1988年 120,000
-18.92% ↓
1987年 148,000
-11.38% ↓
1986年 167,000
15.17% ↑
1985年 145,000
0.31% ↑
1984年 144,552
9.78% ↑
1983年 131,679
9.01% ↑
1982年 120,796
16.91% ↑
1981年 103,320
-3.4% ↓
1980年 106,961
-12.6% ↓
1979年 122,386
-8.12% ↓
1978年 133,201
19.03% ↑
1977年 111,905
-9.17% ↓
1976年 123,197
4.25% ↑
1975年 118,169
33.14% ↑
1974年 88,753
-8.26% ↓
1973年 96,746
-11.24% ↓
1972年 109,000
41.56% ↑
1971年 77,000
-8.33% ↓
1970年 84,000
-28.21% ↓
1969年 117,000
-7.14% ↓
1968年 126,000
10.53% ↑
1967年 114,000
11.69% ↑
1966年 102,070
-21.25% ↓
1965年 129,606
-8.84% ↓
1964年 142,174
5.81% ↑
1963年 134,362
-8.16% ↓
1962年 146,296
10.07% ↑
1961年 132,910 -

エジプトの大麦生産量の推移を観察すると、1960年代から1970年代にかけては概ね10万トン前後で推移し、1970年には84,000トンと一時的な落ち込みが見られました。その後、1980年代には持ち直したものの、1990年代には生産量に大きな変動が生じ、1992年の234,000トンや1995年の368,297トンといった大幅な増加を記録しました。この増加は、おそらく新たな農業政策の導入や大規模な灌漑設備の整備が寄与したものと考えられます。しかしながら、その後の減少が顕著であり、特に2018年以降は再び10万トンを下回る状況に陥っています。

この数値の背景には、複数の地政学的および環境的要因があります。エジプトはナイル川を中心とした農業国ですが、急激な人口増加、都市化、気候変動などが農業生産に影響を与えています。加えて、農地の不足と水資源利用の競争が、農作物の生産量に大きな制約をもたらしています。また、大麦はエジプトでは主要穀物である小麦に比べて栽培優先度が低いことも、生産量の停滞を助長している可能性があります。

さらに、世界的な食糧市場の変動や輸入依存が生産計画に影響を及ぼしていることにも注意が必要です。例えば、新型コロナウイルス感染症の影響で国際的な物流が混乱した際には、輸入に頼ることのリスクが注目されました。このことから、エジプト国内での大麦製品の生産は、食料自給率向上の観点からも重要な課題として浮かび上がっています。

地域的な課題としては、干ばつや異常気象が頻発する気候変動の影響が顕著です。特に近年、エジプトを含む中東・北アフリカ地域では降水量の減少が農業生産にも影響を与えています。このため、気候変動への適応として、耐乾性の高い大麦種子の導入や、持続可能な水資源管理を進めることが重要です。たとえば、ドリップ式灌漑システムの普及や、気象データを活用した作付け計画の改良などが具体的な対策として挙げられます。

地政学的に見ても、エジプトの農業動態は近隣諸国や紅海沿岸地域との協力体制の強化が必要とされています。特にナイル川の水資源をめぐる紛争は、エジプト国内だけでなく周辺諸国にとっても重大な問題となっています。この問題を解決するためには、国際的な協調を通じた持続可能な水資源の利用ルールの確立が求められます。

未来への示唆としては、大麦の栽培面積拡大を推進することが考えられますが、それと並行して生産性の向上を目指すべきです。例えば、栽培技術の改良や、より高収量の品種の開発が有益です。また、農業従事者への技術指導や金融支援を充実させることで、持続可能な農業の基盤が整備されます。

結論として、エジプトにおける大麦生産量の推移は、短期的な変動のみならず、長期的な生産体制の持続可能性に関する課題を浮き彫りにしています。農業政策の強化や国際協調の枠組みの整備を通じて、大麦生産を安定させるとともに、食料安全保障の面からも戦略的な対応が求められています。