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エジプトの羊飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公開した最新データによると、エジプトの羊飼養数は1961年の約155万匹から2022年の約208万匹となり、全体的に大きな変動を見せています。特に1980年代後半から1990年代にかけては顕著な増加を記録しましたが、2010年代後半以降は急激な減少が観察されます。この変動は、経済状況、地政学的問題、自然環境の変化など、多様な要因が影響を及ぼしたものと見られます。

年度 飼養数(匹) 増減率
2023年 1,991,545
-4.42% ↓
2022年 2,083,708
7.52% ↑
2021年 1,938,000
0.1% ↑
2020年 1,936,000
-7.01% ↓
2019年 2,082,000
-56.89% ↓
2018年 4,830,000
-8.96% ↓
2017年 5,305,337
-4.52% ↓
2016年 5,556,337
1.71% ↑
2015年 5,463,169
-0.72% ↓
2014年 5,502,637
-1.1% ↓
2013年 5,564,117
2.48% ↑
2012年 5,429,524
1.2% ↑
2011年 5,365,065
-2.97% ↓
2010年 5,529,529
-1.11% ↓
2009年 5,591,580
1.7% ↑
2008年 5,498,026
0.56% ↑
2007年 5,467,469
1.53% ↑
2006年 5,385,000
2.92% ↑
2005年 5,232,000
3.75% ↑
2004年 5,043,000
2.11% ↑
2003年 4,939,000
-3.25% ↓
2002年 5,105,000
9.29% ↑
2001年 4,671,243
4.52% ↑
2000年 4,469,131
1.79% ↑
1999年 4,390,727
0.89% ↑
1998年 4,351,834
2.15% ↑
1997年 4,260,138
0.47% ↑
1996年 4,240,320
0.48% ↑
1995年 4,220,270
-14.76% ↓
1994年 4,951,000
26.17% ↑
1993年 3,924,000
-10.78% ↓
1992年 4,398,000
3% ↑
1991年 4,270,000
26.95% ↑
1990年 3,363,635
-3.38% ↓
1989年 3,481,173
-10.92% ↓
1988年 3,908,000
3.03% ↑
1987年 3,793,000
2.99% ↑
1986年 3,683,000
2.99% ↑
1985年 3,576,000
3% ↑
1984年 3,472,000
10.12% ↑
1983年 3,153,000
18.98% ↑
1982年 2,650,000
26.19% ↑
1981年 2,100,000
31.82% ↑
1980年 1,593,108
-5.09% ↓
1979年 1,678,520
-4.33% ↓
1978年 1,754,532
-3.65% ↓
1977年 1,821,000
-3.06% ↓
1976年 1,878,400
-2.47% ↓
1975年 1,926,000
-1.98% ↓
1974年 1,965,000
-1.45% ↓
1973年 1,994,000
-0.94% ↓
1972年 2,013,000
-0.49% ↓
1971年 2,023,000
-2.08% ↓
1970年 2,066,000
3.25% ↑
1969年 2,001,000
3.41% ↑
1968年 1,935,000
-5.33% ↓
1967年 2,044,000
4.98% ↑
1966年 1,947,000
4.96% ↑
1965年 1,855,000
4.8% ↑
1964年 1,770,000
4.67% ↑
1963年 1,691,000
4.45% ↑
1962年 1,619,000
4.32% ↑
1961年 1,552,000 -

エジプトにおける羊飼養数は、過去60年以上にわたり、増減を繰り返しながら興味深い変動を示してきました。1961年には約155万匹だった羊の飼養数は、1980年代に大きく増加し、1994年には約495万匹とピークを迎えました。しかし、その後は減少と増加を繰り返し、2018年以降は再び大幅な減少傾向が見られ、2022年には約208万匹という数値が記録されています。この背景にはいくつかの重要な要因があります。

まず、経済的な要因が挙げられます。エジプトを含む中東地域では、農業や畜産業が重要な産業として位置付けられていますが、経済改革や通貨問題といった課題がこれらの分野に影響を与えてきました。特に1990年代には経済政策の見直しが行われたことで、一時的に羊飼養が増加しましたが、その後の減少にはコストの増大や市場の流動性の低下が影響を与えたと考えられます。また、2018年以降の急激な減少については、羊肉の需要低下や輸入の増加が国内生産に与えた圧力が関係していると考えられます。

次に、地政学的リスクも無視できない要因として挙げられます。中東における紛争や社会的不安定性は、畜産業の持続可能性に大きな影響を与えています。例えば、物流の混乱や安全上の理由から牧草地へのアクセスが制限され、羊の飼養環境が悪化しました。また、貧困層や農村地帯の小規模な羊農家が、経済的な困難や環境の変化の直撃を受ける形で飼養を減少させる結果となりました。

さらに、気候変動や環境問題も深刻な影響をもたらしています。エジプトは乾燥地帯でありながら、気温の上昇や降水量の減少といった気候変動による影響を受けています。これにより、牧草地の減少や水資源の不足が進み、飼養可能な羊の頭数が制約を受けています。また、これらの問題に対する適切な支援や戦略が欠如していたことも、畜産業全体の減退に繋がりました。

未来を見据えた具体的な課題としては、まず羊肉市場の需要と供給のバランスを取るための革新的な政策が必要です。たとえば、国内市場への補助金や価格安定化政策を取り入れるとともに、輸入羊肉に依存しすぎない農業戦略を作ることが求められます。また、小規模農家や牧場への技術支援を行い、効率的な生産体制を確立することで、生産性の向上と所得の安定化が期待されます。

同時に、災害や気候変動に対する適応策も重要です。たとえば、耐乾燥性のある牧草の導入や水資源の管理効率を高める技術の活用が挙げられます。また、エジプト政府は国際機関と連携し、気候変動の影響を軽減するための農業支援プログラムを強化するべきです。

これらの対策を講じない場合、エジプトの畜産業はさらに困難な局面を迎える可能性があります。羊飼養の減少は、食糧安全保障の悪化や農村部の経済圏縮小といった形で、国全体の安定性にも影響を及ぼすリスクがあるからです。FAOをはじめとする国際機関は、エジプトにおける持続可能な畜産業の復興を支援することで、地域全体の安定につなげる重要な役割を果たすでしょう。