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エジプトの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、エジプトにおける羊肉の生産量は1961年から2023年にかけて一貫した増減を繰り返してきました。1960年代から1980年代にかけては生産量が増加傾向にありましたが、1990年代以降は不安定な推移が目立っています。最近のデータでは、2023年の生産量は46,787トンまで減少しており、長期的な低下傾向が見られます。この減少には家畜管理、気候変動、経済や社会的要因が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 46,787
-2.6% ↓
2022年 48,036
-11.04% ↓
2021年 54,000 -
2020年 54,000
28.57% ↑
2019年 42,000
-16.94% ↓
2018年 50,564
-16.04% ↓
2017年 60,225
-20.36% ↓
2016年 75,625
1.78% ↑
2015年 74,305
-0.93% ↓
2014年 75,000
-1.23% ↓
2013年 75,936
1.89% ↑
2012年 74,529
1.21% ↑
2011年 73,637
-1.98% ↓
2010年 75,122
-11.62% ↓
2009年 85,000
-1.16% ↓
2008年 86,000 -
2007年 86,000
1.18% ↑
2006年 85,000
2.41% ↑
2005年 83,000
3.75% ↑
2004年 80,000
-3.26% ↓
2003年 82,700 -
2002年 82,700
10.27% ↑
2001年 75,000
2.74% ↑
2000年 73,000
2.82% ↑
1999年 71,000 -
1998年 71,000
2.9% ↑
1997年 69,000 -
1996年 69,000 -
1995年 69,000
6.15% ↑
1994年 65,000
-2.99% ↓
1993年 67,000
3.08% ↑
1992年 65,000
41.3% ↑
1991年 46,000
-15.6% ↓
1990年 54,500
-0.91% ↓
1989年 55,000
-11.29% ↓
1988年 62,000
5.08% ↑
1987年 59,000
3.51% ↑
1986年 57,000
5.56% ↑
1985年 54,000
3.85% ↑
1984年 52,000
10.64% ↑
1983年 47,000
27.03% ↑
1982年 37,000
27.59% ↑
1981年 29,000
31.82% ↑
1980年 22,000
-4.35% ↓
1979年 23,000
-4.17% ↓
1978年 24,000
-4% ↓
1977年 25,000
-7.41% ↓
1976年 27,000 -
1975年 27,000
-3.57% ↓
1974年 28,000 -
1973年 28,000
-3.45% ↓
1972年 29,000 -
1971年 29,000
-3.33% ↓
1970年 30,000
3.45% ↑
1969年 29,000
3.57% ↑
1968年 28,000
-6.67% ↓
1967年 30,000
7.14% ↑
1966年 28,000
7.69% ↑
1965年 26,000
4% ↑
1964年 25,000
4.17% ↑
1963年 24,000
9.09% ↑
1962年 22,000
1.85% ↑
1961年 21,600 -

エジプトの羊肉生産量は、1961年の21,600トンから始まり、1980年代には大幅な増加を記録しました。例えば、1983年の47,000トンや、1988年の62,000トンに達するなど、1960年代と比較して約2倍以上の伸びを見せました。この増加の背景には、農業技術の進展や家畜飼育方法の改善、国内消費需要の高まりなどが関連していると考えられます。しかし、1990年代以降、一部の年では減少傾向が顕著になり、2018年には50,564トン、2023年には46,787トンと、直近ではさらに低下しています。

羊肉生産量の変動にはいくつかの要因が影響していると考えられます。まず、エジプトの気候条件や自然環境の制約が重要です。中東・北アフリカ地域全般に共通する降雨量の少なさや、牧草の不足は、羊の飼育環境を悪化させる要因となります。また、近年の気候変動は、乾燥化や洪水リスクの増加をもたらし、家畜飼育に悪影響を及ぼしています。

さらに、経済的要因も無視できません。エジプトでは人口増加とともに食肉需要が増加していますが、家畜の飼育コストや輸入飼料への依存度が増大しており、羊肉の競争力を低下させています。特に2010年代以降のデータでは、様々な社会的・経済的混乱の影響が見受けられます。この時期はエジプトの政治的不安定や、輸送・供給網の混乱が、農業および畜産業に深刻な影響を及ぼしました。

エジプトの羊肉生産の現状は他国とも比較して見ることができます。例えば、同じ地域に位置するモロッコでは羊肉の生産が安定しており、アフリカ大陸内での供給力が目立ちます。一方で中国やインドといった食料生産量の多い国々では、人口増加に対応するための効率的な畜産管理と地域ごとの政策が成功を収めており、それぞれの年間生産量はエジプトを大きく上回る規模です。

エジプトにとってこれらを参考にした政策形成は、将来的な羊肉生産量の回復や増加に重要な鍵となります。国際協力による農業技術支援の推進や、降雨不足に対応した持続可能な牧草地管理の導入、気候変動への適応プランの展開などが必要です。また、家畜の健康管理システムやワクチンプログラムの強化、輸入飼料への過度な依存を緩和するための地元資源活用の促進も具体的な改善策として挙げられるでしょう。これら政策は、羊肉生産の回復に寄与するだけでなく、農村部の生計向上や食料安全保障の強化にもつながります。

また、地政学的背景も無視できません。中東地域全体での水資源の争奪や紛争がエジプトの農業セクターに間接的な影響を与える可能性は高く、このリスクに対処するために近隣諸国との協力体制を強化する必要があります。

結論として、エジプトの羊肉生産の長期的な下降傾向は、多岐にわたる内外要因によるものですが、政策的な介入や技術的な取り組みにより回復の余地があります。国や国際協力団体が積極的に地域資源に根ざした持続可能な対策を講じることで、安定した生産量を目指すことが期待されます。人口増加と都市化進展に対応するためにも、生産の底上げはエジプト全体の食料安全保障にとって欠かせない課題となっています。