Skip to main content

エジプトのバナナ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、エジプトのバナナ生産量は長期的に見て顕著な増加傾向にあります。1961年に65,708トンだった生産量は、一部の変動を挟みながらも継続して増加し、2020年にはピークとなる1,347,000トンに達しました。しかし、2021年以降は1,185,148トンまで減少しており、近年のトレンドとして減少が見られます。このような生産量の推移は、国内外の需要、気候条件、技術的な進歩、および政策の影響を受けたものと考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,194,379
-1.59% ↓
2022年 1,213,698
2.41% ↑
2021年 1,185,148
-12.02% ↓
2020年 1,347,000
1.26% ↑
2019年 1,330,280
2.9% ↑
2018年 1,292,812
-5.33% ↓
2017年 1,365,554
12.48% ↑
2016年 1,214,077
-7.62% ↓
2015年 1,314,177
2.38% ↑
2014年 1,283,644
10.83% ↑
2013年 1,158,224
2.52% ↑
2012年 1,129,777
7.16% ↑
2011年 1,054,243
2.46% ↑
2010年 1,028,946
-8.17% ↓
2009年 1,120,517
5.47% ↑
2008年 1,062,453
12.38% ↑
2007年 945,429
10.56% ↑
2006年 855,090
-7.32% ↓
2005年 922,600
5.43% ↑
2004年 875,123
0.49% ↑
2003年 870,886
-0.76% ↓
2002年 877,588
3.33% ↑
2001年 849,293
11.67% ↑
2000年 760,505
4.32% ↑
1999年 728,999
11.2% ↑
1998年 655,570
3.24% ↑
1997年 635,000
11.31% ↑
1996年 570,457
14.39% ↑
1995年 498,679
8.64% ↑
1994年 459,012
13.27% ↑
1993年 405,237
2.2% ↑
1992年 396,497
0.92% ↑
1991年 392,887
-5.44% ↓
1990年 415,495
7.09% ↑
1989年 388,000
9.3% ↑
1988年 355,000
27.7% ↑
1987年 278,000
17.3% ↑
1986年 237,000
16.75% ↑
1985年 203,000
10.33% ↑
1984年 184,000
8.88% ↑
1983年 169,000
2.42% ↑
1982年 165,000
20.86% ↑
1981年 136,525
2.42% ↑
1980年 133,295
18.43% ↑
1979年 112,552
-0.74% ↓
1978年 113,394
-10.66% ↓
1977年 126,927
13.54% ↑
1976年 111,786
-0.19% ↓
1975年 112,000
1.82% ↑
1974年 110,000
8.91% ↑
1973年 101,000
-6.48% ↓
1972年 108,000
13.68% ↑
1971年 95,000
15.85% ↑
1970年 82,000
-9.89% ↓
1969年 91,000
5.81% ↑
1968年 86,000
30.58% ↑
1967年 65,859
-22.89% ↓
1966年 85,413
33.45% ↑
1965年 64,005
28.83% ↑
1964年 49,682
-10.52% ↓
1963年 55,524
-3.17% ↓
1962年 57,342
-12.73% ↓
1961年 65,708 -

エジプトのバナナ生産は、1961年から2020年を通じて顕著な増加を見せました。このグラフ的な上昇は、農業技術の向上、灌漑技術の成功、需要の拡大、および政府支援の農業政策の効果を示しています。特に1970年代以降の持続的な増加は、農業インフラの整備が進み、バナナ栽培に適するナイル川流域の活用が拡大した結果と推定されます。

1990年代に入ると、エジプトは他のアフリカ諸国を追い越す勢いでバナナ生産量を増加させ、1995年には500,000トン、2000年には800,000トン、2008年にはついに1,000,000トンを突破する重要な転換点を迎えました。この上昇の背景には、世界的な消費需要の増加に加え、エジプト独自の温暖な気候とナイル川地域の肥沃な土地が生産性向上を可能にした点が挙げられます。さらに、気候適応型の新しいバナナ種の導入が、生産の効率性を大きく高めました。

2020年に記録された1,347,000トンは、この生産増加の歴史の中で最大の成果ですが、その後の2021年には1,185,148トンに減少し、2022年でも回復は限定的でした。この減少傾向は、多角的な原因によるものと考えられます。一つの要因として、地球温暖化や気候変動の影響が挙げられます。バナナ生産に重要な水資源は、不規則な降雨パターンやナイル川流域の利用競争により不足する場合があります。また、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大による労働力供給の乱れや供給網の制約も、農業生産全体に負の影響を与えています。

さらに、バナナ栽培に特有の病害の蔓延リスクも生産量減少に寄与している可能性があります。たとえば、「パナマ病」と呼ばれる代表的な真菌性の病害は、世界中のバナナ生産地に脅威をもたらしており、エジプトもその影響を逃れることはできません。また、輸出や国内需要の変化も、農家の生産意欲に影響を与えた要因と考えられます。

今後の課題として、まず第一に、気候変動に対応した持続可能な農業政策が求められます。水資源の安定的な供給を確保するため、効率的な灌漑システムや再生可能エネルギー活用に基づくポンプ技術の導入が推奨されます。また、病害の拡大を防ぐために、耐病性のある新しい品種の研究開発推進が必要です。これには国際的な協力も重要であり、特に同じ課題を抱えるアフリカ諸国との情報共有が有効でしょう。

地政学的には、エジプトにおけるナイル川の水利権問題が他国との関係に影響を与える可能性があります。エチオピア・スーダンなど上流域諸国との調整が失敗すれば、農業全体への致命的なダメージが懸念されます。この点では、国際連合やアフリカ連合などの調停と協力が鍵となるでしょう。

結論として、エジプトのバナナ生産は、長期的な成長を遂げる一方で、近年の減少傾向には十分な注意を払う必要があります。気候変動、水資源の利用競争、病害リスクへの対策を強化することで、再び生産量の増加と地域農業の安定性が期待できます。エジプトがこれらの課題に取り組む成功モデルを他国と共有することで、さらなる農業生産の安定がグローバルに達成される可能性があります。