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エジプトの小麦生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したエジプトの小麦生産量データによると、エジプトの小麦生産量は長期的に顕著な増加傾向を示しています。最も古い記録である1961年の生産量1,435,926トンから2022年には9,700,000トンに増加しており、特に1980年代後半から1990年代にかけて急激な成長が観察されました。ただし、近年は安定傾向にあり、大幅な増減は減少しています。

年度 生産量(トン)
2022年 9,700,000
2021年 9,842,411
2020年 9,101,785
2019年 8,558,807
2018年 8,348,629
2017年 8,421,071
2016年 9,342,538
2015年 9,607,736
2014年 8,800,000
2013年 9,460,200
2012年 8,795,483
2011年 8,407,126
2010年 7,177,399
2009年 8,522,995
2008年 7,977,051
2007年 7,379,000
2006年 8,274,230
2005年 8,140,960
2004年 7,177,855
2003年 6,844,692
2002年 6,624,868
2001年 6,254,583
2000年 6,564,053
1999年 6,346,642
1998年 6,093,151
1997年 5,849,134
1996年 5,735,367
1995年 5,722,441
1994年 4,437,055
1993年 4,832,598
1992年 4,617,997
1991年 4,482,523
1990年 4,268,049
1989年 3,182,000
1988年 2,838,000
1987年 2,721,000
1986年 1,928,000
1985年 1,872,000
1984年 1,815,176
1983年 1,996,000
1982年 2,016,992
1981年 1,938,327
1980年 1,736,440
1979年 1,856,000
1978年 1,933,000
1977年 1,697,000
1976年 1,960,000
1975年 2,033,265
1974年 1,886,000
1973年 1,938,112
1972年 1,618,000
1971年 1,732,000
1970年 1,519,000
1969年 1,277,000
1968年 1,526,000
1967年 1,299,000
1966年 1,465,000
1965年 1,272,000
1964年 1,499,881
1963年 1,493,000
1962年 1,593,098
1961年 1,435,926

エジプトの小麦生産量は、1960年代では年間約100~200万トン程度にとどまっていましたが、1980年代後半以降の技術革新や農業政策の改善が奏功し、生産量が急増しました。例えば、1990年から2000年の間には、4,268,049トンから6,564,053トンへと約1.5倍の成長を見せています。また、2005年以降では8,000,000トン以上を維持し、農業生産の基盤が強化されていることがわかります。

特に1995年から2010年までの間では、小麦価格の国際的な高騰や、国内需要への対応を目的とした政策的投資が背景にあり、持続的な成長が観察されました。ただし、2010年代後半から2020年にかけてのデータを見ると、生産量が8,000,000トン前後に停滞する期間が見られるなど、生産拡大に一部頭打ち感が見られます。

このような伸び悩みは、気候変動、灌漑水資源の枯渇、そして農業技術革新のペースが需要の増加に追いついていないことが原因と考えられます。特にエジプトは、地中海性気候と砂漠性気候が交錯しており、農業はナイル川の水系に強く依存しています。そのため、水資源の争奪や地域的な衝突(例:ナイル川流域をめぐるエチオピアとの開発競争)も、穀物生産にとってのリスクファクターとなっています。

世界と比較すると、エジプトの生産量は他の農業大国と比較して依然として中程度です。例えば、2022年時点での最大生産国である中国やインドでは1億トンを超える生産量を保持しており、日本の国内生産量(ほぼ年間100万トン以下)と比較すれば圧倒的に多い数字ですが、いわゆる農業輸出国(アメリカなど)の規模には及んでいません。一方で、エジプト国内の小麦需要は非常に高く、主食としての消費を支えるべく、大量の輸入を行わざるを得ない状態が続いています。

エジプトの食糧自給率を上げるためには、小麦生産のさらなる効率化と土地利用の最適化が必要不可欠です。具体的には、省水技術を応用した現代的な灌漑手法の普及、耐干ばつ品種の導入、そして農家への技術支援が効果的でしょう。また、増大する国内人口に応じた農業生産の拡大には、国際協力を活かした技術導入や潤滑な資金調達、さらには種子品種改良のための研究開発体制の構築も求められるでしょう。

地政学的リスクの解消も課題です。ナイル川流域を共有する各国、とりわけエチオピアとの協調関係を維持し、適切な水資源管理体制を整える必要があります。将来的な対策としては、地域的な水管理機関の設立や、国際的な仲介機関を基軸とした枠組みの構築が提案されます。

さらに、新型コロナの影響で国際的な輸送や供給チェーンが乱れたことは、エジプトが外部に過度に依存せず国内農業の自立性を高める重要性を再確認させました。この教訓を生かし、備蓄施設の充実や輸入代替の推進も政策の柱となるべきです。

結論として、エジプトの小麦生産はここ数十年で大きく成長し、食糧安全保障に一定の影響を与える地位を確立してきました。ただし、現状の課題を解決しなければ、将来的な人口増加や気候危機への対応は難しくなるでしょう。エジプト国内のみならず、国際的な協力体制の強化が持続可能な農業基盤を支える鍵となります。