Food and Agriculture Organization(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、エジプトのナシ生産量は2023年に80,993トンを記録し、これは過去10年間の推移において比較的高い水準です。エジプトのナシ生産量は、1960年代の約10,000トンから倍々的な増加をたどりながら波動的に推移し、2020年代には7-8万トン台で安定的な生産を維持しています。一方で、気候変動や農業資源管理の課題が依然としてエジプト農業に影響を与えている現状も浮き彫りとなっています。
エジプトのナシ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 80,993 |
4.31% ↑
|
2022年 | 77,643 |
-6.17% ↓
|
2021年 | 82,746 |
4.28% ↑
|
2020年 | 79,350 |
15.3% ↑
|
2019年 | 68,820 |
-1.94% ↓
|
2018年 | 70,181 |
-9.01% ↓
|
2017年 | 77,132 |
10.58% ↑
|
2016年 | 69,752 |
5.99% ↑
|
2015年 | 65,810 |
12.8% ↑
|
2014年 | 58,344 |
-0.86% ↓
|
2013年 | 58,852 |
-8.99% ↓
|
2012年 | 64,664 |
32.46% ↑
|
2011年 | 48,817 |
9.18% ↑
|
2010年 | 44,713 |
-17.55% ↓
|
2009年 | 54,229 |
10.88% ↑
|
2008年 | 48,908 |
-2.99% ↓
|
2007年 | 50,414 |
38.55% ↑
|
2006年 | 36,388 |
-5.49% ↓
|
2005年 | 38,500 |
0.81% ↑
|
2004年 | 38,192 |
7.76% ↑
|
2003年 | 35,441 |
2.16% ↑
|
2002年 | 34,692 |
-13.57% ↓
|
2001年 | 40,139 |
-14.99% ↓
|
2000年 | 47,217 |
23.17% ↑
|
1999年 | 38,336 |
-7.38% ↓
|
1998年 | 41,391 |
-26.91% ↓
|
1997年 | 56,630 |
-2.22% ↓
|
1996年 | 57,917 |
6.72% ↑
|
1995年 | 54,272 |
-16.5% ↓
|
1994年 | 65,000 |
-18.75% ↓
|
1993年 | 80,000 |
-13.91% ↓
|
1992年 | 92,925 |
111.06% ↑
|
1991年 | 44,028 |
-7.23% ↓
|
1990年 | 47,459 |
-34.99% ↓
|
1989年 | 73,000 |
40.38% ↑
|
1988年 | 52,000 |
-16.13% ↓
|
1987年 | 62,000 |
106.67% ↑
|
1986年 | 30,000 |
-34.78% ↓
|
1985年 | 46,000 |
-6.12% ↓
|
1984年 | 49,000 |
-20.97% ↓
|
1983年 | 62,000 |
58.97% ↑
|
1982年 | 39,000 |
-28.68% ↓
|
1981年 | 54,682 |
117.98% ↑
|
1980年 | 25,086 |
-50% ↓
|
1979年 | 50,173 |
56.74% ↑
|
1978年 | 32,011 |
5.57% ↑
|
1977年 | 30,322 |
14.39% ↑
|
1976年 | 26,508 |
26.23% ↑
|
1975年 | 21,000 |
5% ↑
|
1974年 | 20,000 |
-4.76% ↓
|
1973年 | 21,000 |
-8.7% ↓
|
1972年 | 23,000 |
53.33% ↑
|
1971年 | 15,000 |
-34.78% ↓
|
1970年 | 23,000 |
76.92% ↑
|
1969年 | 13,000 | - |
1968年 | 13,000 |
-28.24% ↓
|
1967年 | 18,117 |
59.4% ↑
|
1966年 | 11,366 |
-29.38% ↓
|
1965年 | 16,095 |
23.81% ↑
|
1964年 | 13,000 |
44.44% ↑
|
1963年 | 9,000 |
-18.18% ↓
|
1962年 | 11,000 |
22.22% ↑
|
1961年 | 9,000 | - |
エジプトのナシ生産は、1961年の生産量9,000トンから始まり、1970年代には23,000トンを突破し、1979年には50,000トン台と急増しました。その後、1980年代から1990年代にかけては60,000トン台から最大で92,925トン(1992年)へ上昇し、21世紀に入ると全体的な安定傾向とともに幾分の変動が観測されました。このデータは、エジプトがナイル川流域を利用した灌漑技術や農業政策の改善により、果実生産の多様化と向上を図ったことを示唆します。
2020年から2023年にかけての最新データでは、エジプトのナシ生産量は増加基調にあります。2020年には79,350トン、2021年には82,746トンと過去最高に近い水準となり、2023年には80,993トンと高い生産水準を維持しています。これにより、エジプトは地域的に果実生産の主要国としての役割を果たしていることが分かります。
しかしながら、数十年間のデータからは生産量の大きな変動が読み取れます。この背景には、エジプト特有の地政学的および気候的な課題が関係していると考えられます。ナシは比較的気温の安定した地域で生育しやすい果樹ですが、エジプトの気候変動の影響や水資源問題により、生育条件が年々変化してきました。特にナイル川の水利用をめぐる周辺国家との地政学的リスクが、農業用水の確保に影響を及ぼす可能性があります。これに加えて、気温上昇や砂漠化の拡大が、ナシ栽培を含む農業全般に課題をもたらしています。
さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、グローバルな農産物供給チェーンにも影響をもたらしました。エジプトにおいても、労働力不足や国際輸送の遅延が一時的に生産量・流通量の不安定化を招いた可能性があります。
エジプトのナシ生産をさらに拡大するためには、いくつかの具体的対策が必要です。まず、気候変動に対応した耐性の高いナシの品種改良を推し進めることが重要です。また、農地の効率的な利用や灌漑技術の向上により、限られた水資源を最大限活用することが期待されます。加えて、地域間協力を強化し、ナイル川流域の水利用を巡る紛争を回避するための協議が欠かせません。
また、エジプトの農業セクターに外国投資を呼び込むことで、新しい技術や知見を導入し、持続可能な生産体制を構築する取り組みも有効でしょう。地元農家への教育・トレーニングを充実させ、効率的な農業運営を促進することも課題を解決する効果的な方法です。
結論として、エジプトのナシ生産は増加の傾向を示していますが、この成長を持続可能なものとするためには、気候変動・水資源管理・地政学的リスクなどの複雑な課題に正面から取り組む必要があります。国際的な支援や技術協力を活用しながら、安定的かつ高度なナシ生産を目指す政策が強く求められると言えるでしょう。