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エジプトのニンジン・カブ類生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月時点の最新データによると、エジプトのニンジン・カブ類の生産量は、1960年代には年間3万〜5万トン程度で推移していましたが、その後、1970年代から1980年代初頭にかけて増加し、特に1979年以降は10万トンを超える安定的な成長をみせました。2000年代から2010年代にかけては再び大きな増加が見られ、ピークは2017年の約29万4千トン。その後2018年以降の一時的な減少を経て、2023年には26万7千トンと回復しました。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 266,979
24.88% ↑
2022年 213,790
9.52% ↑
2021年 195,210
-0.2% ↓
2020年 195,600
3.14% ↑
2019年 189,640
-21.73% ↓
2018年 242,304
-17.73% ↓
2017年 294,531
16.7% ↑
2016年 252,379
31.48% ↑
2015年 191,952
5.19% ↑
2014年 182,473
-30.07% ↓
2013年 260,945
45.54% ↑
2012年 179,291
19.26% ↑
2011年 150,339
8.16% ↑
2010年 138,996
-20.99% ↓
2009年 175,923
-5.33% ↓
2008年 185,830
9.6% ↑
2007年 169,550
26.87% ↑
2006年 133,640
-18.49% ↓
2005年 163,950
7.91% ↑
2004年 151,927
25.21% ↑
2003年 121,333
5.55% ↑
2002年 114,955
3.4% ↑
2001年 111,179
-13.29% ↓
2000年 128,214
5% ↑
1999年 122,113
-5.67% ↓
1998年 129,450
-5.94% ↓
1997年 137,627
26.54% ↑
1996年 108,760
-16.97% ↓
1995年 130,987
10.69% ↑
1994年 118,333
12.99% ↑
1993年 104,733
16.66% ↑
1992年 89,774
-3.6% ↓
1991年 93,127
0.8% ↑
1990年 92,387
-1.72% ↓
1989年 94,000 -
1988年 94,000
-18.97% ↓
1987年 116,000
-5.69% ↓
1986年 123,000
-7.52% ↓
1985年 133,000
24.3% ↑
1984年 107,000
2.88% ↑
1983年 104,000
-10.45% ↓
1982年 116,132
-18.07% ↓
1981年 141,747
16.19% ↑
1980年 122,000
-10.14% ↓
1979年 135,773
25.53% ↑
1978年 108,163
22.37% ↑
1977年 88,391
-6.92% ↓
1976年 94,962
5.99% ↑
1975年 89,594
-0.45% ↓
1974年 90,000
30.43% ↑
1973年 69,000
38% ↑
1972年 50,000
-5.66% ↓
1971年 53,000
12.77% ↑
1970年 47,000
-9.62% ↓
1969年 52,000 -
1968年 52,000
32.2% ↑
1967年 39,335
31.15% ↑
1966年 29,993
19.52% ↑
1965年 25,094
-7.06% ↓
1964年 27,000
-10% ↓
1963年 30,000
-9.09% ↓
1962年 33,000
10% ↑
1961年 30,000 -

エジプトのニンジン・カブ類生産量の推移を概観すると、時代ごとに生産量が異なる要因が背景として見えてきます。このデータは、エジプトが持つ農業の発展状況、気候条件、技術の進歩、さらには政情や貿易動向など、さまざまな要因が生産に影響を及ぼしていることを示唆しています。

まず、1960年代から1970年代前半までは、エジプトの農業技術がまだ十分に整っておらず、生産量が制約を受けていた時期だと分析できます。この背景には、インフラ整備や灌漑システムの発展が限定的であったことが挙げられます。しかし、1970年代後半以降は技術の向上と農業政策の影響により、生産量が飛躍的に増加しました。特に1978年から1981年の間で30%以上の増加が見られるなど、安定的な規模拡大が確認できます。

2000年代に入ると、エジプトの農業はさらに近代化が進み、生産量は15万トン以上を超える年が恒常的になりました。この背景には、農地の拡大、灌漑技術の近代化、そして輸出需要の高まりなどが挙げられます。同時に、人口増加による国内需要の上昇も、生産量拡大の一因となっています。特に2013年と2016年には、それぞれ26万トンと25万トンを超える大幅な増加が見られましたが、これにはエジプト政府の農業振興政策や、海外市場向け輸出の増加という要因が関連していると考えられます。

ただし、2018年以降のデータをみると、一時的な生産量の低下が確認されています。具体的には、2017年目標となる29万トンに対し2018年は6万トンほど減少して24万トンとなりました。これは、気候変動や資源制約が影響した可能性があります。乾燥地帯のエジプトでは水資源の利用が制限されることがしばしば課題となっており、これが生産効率の低下や計画的な生産調整につながった可能性があります。しかし、2022年以降は再び回復傾向を示しており、2023年には26万トン台を記録するに至っています。

エジプトの農業の現在の課題としては、気候変動による水資源不足が最大の問題として挙げられます。この地域ではナイル川の水量に依存した灌漑が行われていますが、近年の降水量減少や隣国間での水利権を巡る緊張により、水の利用に制約がかかるケースが増えています。また、化学肥料や農薬の過度依存が土壌劣化や環境負荷につながっているとの指摘もあります。

今後の対策として、水資源管理の効率化をさらに進める必要があります。たとえば、滴下灌漑技術(少量の水を効率的に利用する灌漑システム)の導入を拡大することが挙げられます。また、農作物の品種改良を進めて、乾燥や塩害に強い作物を導入することも重要です。さらに、地域間協力による水資源の共有や、国際的な支援を通じてインフラを整備し、持続可能な農業を推進する枠組みを構築することが求められます。

加えて、新型コロナウイルスやウクライナ紛争などの世界的な出来事が、肥料や農業機械の輸入といった物流に影響を与えている点も見逃せません。これを受け、エジプト国内での農業資材の自給率を向上させる取り組みは、今後さらに重要性を増すでしょう。

結論として、エジプトのニンジン・カブ類の生産量は、安定的な増加を続けながらも、気候変動や水資源の制約、国際的な物流問題といった課題に直面しています。これらの挑戦に対処するためには、技術革新と地域協力が鍵となるでしょう。エジプトだけでなく、国際社会も舞台にした協力のもとで、持続的な農業の発展を目指すべきです。