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エジプトの牛飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、エジプトの牛飼養数は1961年には1,523,000頭から始まり、過去数十年間にわたり大きな変動を見せてきました。ピークは2016年の5,012,217頭で、その後は減少傾向を示しています。特に2019年以降の急激な減少は注目すべき現象であり、2022年時点での飼養数は3,051,017頭となっています。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 3,133,580
2.71% ↑
2022年 3,051,017
8.5% ↑
2021年 2,812,000
2.44% ↑
2020年 2,745,000
-2.28% ↓
2019年 2,809,000
-35.85% ↓
2018年 4,379,000
-0.19% ↓
2017年 4,387,289
-12.47% ↓
2016年 5,012,217
2.64% ↑
2015年 4,883,196
2.53% ↑
2014年 4,762,491
0.37% ↑
2013年 4,744,971
-4.07% ↓
2012年 4,946,410
3.49% ↑
2011年 4,779,743
1.08% ↑
2010年 4,728,721
4.5% ↑
2009年 4,524,950
-9.92% ↓
2008年 5,023,162
1.83% ↑
2007年 4,932,656
7% ↑
2006年 4,610,000
2.79% ↑
2005年 4,485,000
2.66% ↑
2004年 4,369,000
3.36% ↑
2003年 4,227,000
3.58% ↑
2002年 4,081,000
7.36% ↑
2001年 3,801,071
7.69% ↑
2000年 3,529,720
3.28% ↑
1999年 3,417,580
6.24% ↑
1998年 3,216,698
-2.32% ↓
1997年 3,293,000
0.95% ↑
1996年 3,262,000
20.64% ↑
1995年 2,704,000
-0.88% ↓
1994年 2,728,000
-26.03% ↓
1993年 3,688,000
2.1% ↑
1992年 3,612,000
2.12% ↑
1991年 3,537,100
35.12% ↑
1990年 2,617,835
-3.78% ↓
1989年 2,720,615
-2.14% ↓
1988年 2,780,000
20.87% ↑
1987年 2,300,000
23.99% ↑
1986年 1,855,000
8.54% ↑
1985年 1,709,000
-1.95% ↓
1984年 1,743,000
-1.64% ↓
1983年 1,772,000
-2.94% ↓
1982年 1,825,705
-1.44% ↓
1981年 1,852,407
-3.13% ↓
1980年 1,912,247
-2.14% ↓
1979年 1,954,000
-6.37% ↓
1978年 2,087,000
1.9% ↑
1977年 2,048,000
-1.49% ↓
1976年 2,079,000
-1.09% ↓
1975年 2,102,000
-0.8% ↓
1974年 2,119,000
-0.42% ↓
1973年 2,128,000
-0.05% ↓
1972年 2,129,000
0.33% ↑
1971年 2,122,000
0.33% ↑
1970年 2,115,000
1.34% ↑
1969年 2,087,000
1.41% ↑
1968年 2,058,000
24.65% ↑
1967年 1,651,000
1.29% ↑
1966年 1,630,000
1.37% ↑
1965年 1,608,000
1.34% ↑
1964年 1,586,800
1.36% ↑
1963年 1,565,500
1.39% ↑
1962年 1,544,000
1.38% ↑
1961年 1,523,000 -

エジプトの牛飼養数の推移を振り返ると、国全体の農業、経済、そして社会的要因が絡み合いながら、重要な変化を辿ってきたことが分かります。1961年から1970年にかけて牛飼養数は比較的緩やかに増加しましたが、1968年にはその数が急増したことから、当時の政策や農業改革が影響を及ぼしたと考えられます。この間、エジプト政府は農業の近代化と生産性の向上を目指した取り組みを進めており、牛の飼育体制にも恩恵を与えた可能性があります。

しかし1970年代中盤から1980年代にかけて、牛飼養数は減少傾向に転じる局面が見られました。この背景には、食料政策の転換や経済的な課題があったと考えられます。更に、この減少には家畜が疫病などで影響を受けた可能性も一因として挙げられます。特にエジプトでは、非常に過密な農村地帯で病気が蔓延しやすい環境下にあるため、家畜の健康管理が十分に行われなかったことが問題視されました。

1990年代に入ると徐々に回復傾向が見られ、2000年以降には大幅な増加が観測されました。2002年から2008年にかけての急増の要因としては、酪農業の成長と輸出を視野に入れた農業政策、国内市場での需要拡大が挙げられます。同時に、都市化の進展や人口増加が牛肉および乳製品需要を押し上げたため、農家が牛飼育の拡大に取り組む動機が高まったと推測されます。この国の牛飼育のピークは2016年の5,012,217頭であり、エジプト経済にも重要な役割を果たしました。

しかし2017年以降、牛飼養数は急激に減少しており、2019年には2,809,000頭まで落ち込んでいます。この要因には、経済危機や気候変動の影響、飼料価格の高騰、さらに新型コロナウイルス感染拡大なども関連していると考えられます。特にパンデミックに伴う物流の混乱や市場環境の変化は、農業部門に大きな負担を強いました。2022年時点では若干の持ち直しが見られるものの、未だ以前の水準には戻っていない状況です。

エジプトには、牛飼育数の減少という課題に直面しながらも、これを克服する多くの可能性と手段があります。まず必要なのは、家畜インフラの整備と、持続可能な畜産経営の実現です。飼料生産の効率化や品質の向上、特に気候変動への対応を強化することが求められます。国際協力を通じて技術移転を進めることも重要です。同時に、疫病の予防策を徹底し、国際標準に基づく衛生管理を進めることで、家畜への影響を抑える努力が必要です。

地政学的にみると、エジプトは中東および北アフリカ地域の重要な食糧供給拠点とされており、その安定性が周辺諸国にも影響を与えます。飼養頭数の減少が地域全体の食糧安全保障に及ぼす潜在的なリスクを軽減するためには、域内協力や貿易政策の強化が求められます。特に農業分野への投資を拡大し、多国間での連携を深めることは、長期的な解決策の一助となるでしょう。

最後に、再び牛飼養数を増加に転じさせるためには、経済的安定や環境条件の改善も欠かせません。持続可能な成長を実現するためには、農業や畜産業に対する包括的な支援策、そして社会的に弱い立場にある農家への援助が必要です。エジプト政府と国際組織が協力して、今後の畜産業の未来を切り拓く取り組みを進めていくことが期待されます。