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エジプトの大豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が提供した2024年7月更新の最新データによると、エジプトの大豆生産量は、1970年代の数百トン台から1980年代には最大17万8,000トンに達し、その後長期的な下降傾向を見せています。2021年には再び6万トンを超えましたが、2022年には3万8,000トンに落ち込みました。規模の増減が激しい推移が特徴であり、全体として安定的な成長とはいえない状況です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 60,000
57.89% ↑
2022年 38,000
-39.28% ↓
2021年 62,586
71.85% ↑
2020年 36,420
0.44% ↑
2019年 36,260
-22.85% ↓
2018年 46,997
29.16% ↑
2017年 36,388
-19.43% ↓
2016年 45,165
-3.58% ↓
2015年 46,843
17.48% ↑
2014年 39,872
21.72% ↑
2013年 32,757
25.99% ↑
2012年 26,000
-12.71% ↓
2011年 29,785
-31.28% ↓
2010年 43,342
93.18% ↑
2009年 22,436
-23.08% ↓
2008年 29,169
13.91% ↑
2007年 25,607
11.24% ↑
2006年 23,020
-54.86% ↓
2005年 51,000
17.44% ↑
2004年 43,425
51.41% ↑
2003年 28,681
62.12% ↑
2002年 17,691
18.85% ↑
2001年 14,885
41.52% ↑
2000年 10,518
-44.33% ↓
1999年 18,892
-60.44% ↓
1998年 47,752
37.51% ↑
1997年 34,727
-12.57% ↓
1996年 39,718
-37.38% ↓
1995年 63,427
-5.68% ↓
1994年 67,245
33.22% ↑
1993年 50,475
-14.37% ↓
1992年 58,943
-50.9% ↓
1991年 120,038
12.51% ↑
1990年 106,690
16.71% ↑
1989年 91,415
-29.14% ↓
1988年 129,011
-3.72% ↓
1987年 134,000
0.45% ↑
1986年 133,400
-4.71% ↓
1985年 140,000
-2.1% ↓
1984年 143,000
-11.73% ↓
1983年 162,000
-8.99% ↓
1982年 178,000
36.54% ↑
1981年 130,360
41.12% ↑
1980年 92,377
-12.88% ↓
1979年 106,033
34.39% ↑
1978年 78,897
197.75% ↑
1977年 26,498
132.3% ↑
1976年 11,407
137.25% ↑
1975年 4,808
133.06% ↑
1974年 2,063
-17.41% ↓
1973年 2,498
84.35% ↑
1972年 1,355 -

エジプトの大豆生産量は1970年代初頭にはわずか1,355トン(1972年)と非常に小規模でしたが、その後急激に増加を見せ、1979年には10万トンを突破しました。この成長は、政府の農業政策や農地開拓の進展、さらにはエジプトの気候条件を考慮した大豆栽培の緩やかな普及によるものと考えられます。その最盛期は1980年代であり、1982年には17万8,000トンという最も高い生産量を記録しました。

しかしながら、1983年以降は減少傾向に入り、1990年代には安定した供給が失われるようになります。1992年の生産量はわずか約5万8,000トンと、かつてのピーク時と比べ大幅に低下しました。この要因としては、エジプトの農業用水資源の不足、土壌の塩害問題、そして国内の農業政策の変化が影響したと考えられます。また、大豆がエジプト国内市場では主要作物とみなされていないため、輸入品での需要補填が進んだことも背景にあります。

2000年代には生産量がさらに劇的に減少し、2000年には約1万トン台にまで低下しました。その後、部分的な回復が見られたものの、年間5万トン規模を超える生産が持続的に達成されることはありませんでした。2021年には再び6万トンを超える一時的な回復を見せましたが、2022年には再び約3万8,000トンに減少しています。このような不安定な推移は、気候変動の影響やエジプト国内外の経済的状況の変化と密接に関係していると言えるでしょう。

また、地域の地政学的背景も見逃せません。エジプトはナイル川の水利用をめぐる国際的な緊張の影響を受けやすく、これが農業全体に影響を与えています。例えば、上流のエチオピアで建設が進むグランド・エチオピア・ルネッサンス・ダム(GERD)の完成により、ナイル川の水資源配分が脅かされる可能性があります。これにより大豆栽培を含む灌漑農業がさらに厳しい状況に置かれる恐れがあります。

未来を見据えた場合、エジプトの大豆生産を再び持続的に安定化させるためにはいくつかの具体的な対策が必要です。まず、先進的な灌漑技術の導入や、効率的な水資源管理を進めることで、限られた水資源の中でも作物の収量を最大化する努力が求められます。また、大豆の栽培可能な土地の最適な選定や、土壌改良技術を活用することも重要です。さらには国際的な技術協力の枠組みを活用し、高性能な種子や適切な農薬を普及させることも、エジプト農業の近代化に寄与するでしょう。

エジプトが今後、大豆生産を向上させることで食糧自給率を改善し、海外輸入への依存を減らすことができれば、経済の安定にも寄与する可能性があります。地政学的リスクや気候変動という課題を踏まえながら、科学技術の導入と政策的な支援を組み合わせたアプローチが求められます。加えて、大豆を飼料や食料供給の一部として国内市場の魅力を高める努力も必要です。エジプトにおいて安定的な大豆生産が実現すれば、地域内外での影響力を高める契機にもなり得るでしょう。